良は毎日ゴンドラに乗って東京のビルを掃除していた。 小学校5年生のかがりは学校のプールの時間に初潮を迎え、同級生からからかわれる。 マンションに帰ったかがりは、飼っていた文鳥が傷ついていることに気づいた 。ちょうどマンションの窓を掃除していた良は、かがりと動物病院へ行き治療費を払う。 しかし文鳥は死に、死骸を母親に捨てられたかがりは家を出た。 文鳥の死骸を探し出したかがりと再会した良は、彼女を自分の故郷である下北半島へ連れて行くことにする、、。

 

 

 

 

 

                      - 「ゴンドラ Gondola」 - 監督・脚本 伊藤智生

 

出演 上村佳子、界健太、木内みどり、長谷川初範、出門英、佐々木すみ江 他

 

こちらは1986年制作の 日本映画 日本 です。(112分)

 

 

自主制作映画として製作された本作ですが、諸事情により1988年にやっと正式公

 

開された作品です。公開から30年記念としてデジタルリマスターされ2019年に

 

復刻レーベルDIGからリリースされたDVDを鑑賞しました。

 

 

 

 

  高層ビル街の上空で、ゴンドラに乗って黙々と窓を拭く青年 良。 窓ガラスに隔

 

てられた向こう側は彼にとって音のない別世界です。 眼下にはミニチュアのような都

 

会の光景が広がり、街のノイズが波の音に聴こえてきて、彼の目に故郷の海が重なり

 

ます。11歳のかがりは、母・れい子とふたりでマンション暮らし。 母は音楽家の夫と

 

離婚し、夜の仕事で忙しく、かがりの晩ご飯はいつも一人。 そんな彼女の遊び相手

 

は、二羽の白い文鳥、そして音叉の響きに耳を澄ますことでした。
 

ある日、鳥かごの文鳥が激しく争い、1羽が傷つきます。 瀕死のチーコを両掌に抱き

 

とり、茫然自失として立ち尽すかがりを、窓の外を降りてきた窓掃除の良が目撃した

 

事から二人の交流が始まります。 

 

 

 

 

二人でチーコを医者に連れて行きますが、その甲斐もなく翌日に死んでしまったその

 

亡骸を埋めようとしますが、かがりはためらいます。 そこで、以前良が話した彼の故

 

郷の風習を思い出した二人は、良の故郷でチーコを弔うために列車に乗り込むのでし

 

た。一羽の小鳥の死によって引き合わされた少女と青年の物語。

 

 

 

 

 

幻想的でありながら、妙にリアルを感じさせる映像と空気感が癖になる作品です。

 

11歳のかがりが、グラスの底から世の中を覗いたように歪んで見える世界。 良がゴン

 

ドラから見下ろす非日常の世界。 日常の現実からはぐれてしまったように、浮遊した

 

孤独な二人が出会い、自分の居場所と信じるもの見つけようとするロードムービーで

 

す。セリフは最小限に抑えられている為、かがりの佇まいと情景で物語っている事

 

で、より観ているこちらに、ありのままを訴えて来るような没入感があります。

 

 

 

 

特に後半の良の両親とのふれあいや、長すぎとも思える海岸の道程場面は叙情的な感

 

動を覚えました。そしてとにかくこの作品の大きな魅力は主人公の二人なのですが、

 

特にかがりを演じている少女の存在感に驚きます。 しばらく無言がつづき、初めて声

 

を聞いた時のインパクトの強さ。 母親にチーコの行方を問いただす場面では、金八

 

先生の三原じゅん子を思い起こさせる程で、子供らしさを良しとする多くの大人に一

 

石を投じています。 グーハッ

 

 

 

 

隔離され、地上からも、日常からも浮遊した象徴の 「ゴンドラ」 というタイトルの

 

妙が素敵な本作。 これ程ありふれて、繊細で、旅情的で、孤独なアート作品も滅多

 

に観れない映画だと思いますので、機会があれば一度ご覧になってみて下さいませ。 

 

では、また次回ですよ~! パー