社会からはみ出て独り暮らす男と、母親に置き去りにされた見ず知らずの子どもとの交流を描いた人間ドラマ。 主人公を2008年に37歳の若さで他界したギョーム・ドパルデューが演じる。

 

 

 

 

 

 

              -  VERSAILLES  - 監督 脚本 ピエール・ショレール

 

  出演 ギョーム・ドパルデュー、マックス・ベセット・ドゥ・マルグレーヴ、他

 

こちらは2008年制作の フランス映画 フランス です(113分)

 

 

 

 

  絢爛豪華な建築物ベルサイユ宮殿  しかし、それを取り囲む森には、現在多くのホームレスたちが棲んでいました。 世間から離れ、掘っ立て小屋でひっそりと暮らす男ダミアンもそんなホームレスの一人。 ある日、幼い子エンゾを連れた若い母親ニーナが森で道に迷い、そのダミアンと出会います。 結局母子はそこで一夜を明かすことに なりますが、翌朝ニーナはエンゾを残したまま姿を消してしまいます。 赤の他人の子どもを押しつけられた格好のダミアンはニーナに対する怒りを覚えながらも、罪のないエンゾを見捨てるわけにも行かず、渋々ながらも彼の面倒を見始めますが、、。

 

 

 

 

何気なく予告を見て レンタルしてみたのですが、もしや 「お涙ちょうだい映画」 なのでは ?という一抹の不安がよぎりましたが、見事にその不安は裏切られる映画でした。 

フランスの象徴 ベルサイユ宮殿 その近隣の森には多数の ホームレスが小屋を作って暮らしておりました (とても 皮肉な対比 ですが、現実にあるようです)5歳の息子 エンゾ の手を引いてねぐらを探す シングルマザーの ニーナ は道に迷い、薄暗い森へと入ってしまう そこで自ら社会生活を ドロップアウト した ダミアン という森の住人と知り合い一夜を共にしますが、 翌朝 ダミアンが目を覚ますとニーナはにエンゾを残して姿を消してしまいます。  ダミアンは仕方なくエンゾの面倒を嫌々ながら見るハメになってしまうという、ホームレスと少年の交流の物語です。

 

 

 

 

ダミアンはエンゾと森での暮らしを続けながら ニーナの帰りを待ちますが彼女は戻って来ません。 ニーナはエンゾと暮らす手段として、独り 別の街へ仕事を見付ける為に旅立ったのでした。 ダミアンとエンゾの森での暮らしは続き、次第に心を通わせるようになっていました。

ある日ダミアンが重い病にかかってしまいます。 エンゾに助けを呼びに走らせるダミアン。 エンゾが向かったのは、以前ダミアンから聞いたベルサイユ宮殿の中に居る、王の侍従の姿をした警備員のもとでした。 エンゾは警備員の手を引きダミアンを救います​​​。

 

 

 

 

退院したダミアンを待っていたのはエンゾでした。 その姿を見て、ダミアンは世間とのかかわりを取り戻そうと決意します。 フォークを使えず手づかみで食事をするようなエンゾの将来を心配したのでしょう。 母のニーナは介護の仕事に就き、やっと二人で生活出来る目途が立ったある日、あの森へと向かうのですが、そこにはもう二人の姿はありませんでした 途方に暮れる ニーナ、、、

 

 

 

 

ダミアンは疎遠だった父の元にエンゾと共に住み、解体現場で働き始めます。 彼は養父になってまでエンゾに教育を受けさせようと奔走します。 そこには血のつながりはなくても確かな親子の絆が存在していました。 何とかエンゾを学校に入れる事が出来、こらからという時、ダミアンはエンゾの目の前で突然、家を出て行ってしまいます それを見つめるエンゾの瞳。 母に置き去りにされ、ダミアンにも去られたエンゾの小さな胸のうちは、、、信じていた大人に裏切られ、もう誰も愛さなくなってしまったのか、、、

 

 

 

 

そこから物語は7年という時間が過ぎます。 育ててくれたダミアンの父にも反抗的に当たるエンゾ 思春期 真っ只中のエンゾ宛てに、一通の手紙が届けられます 差出人は母親の ニーナからでした。 7年間探し回ったのでしょう、手紙を叔母に渡し読んでもらうエンゾ 。 聞き終えたエンゾはその後、、、というストーリーです、とにかく エンゾを演じる子供がとにかく自然で驚きます。 その上「え~んえ~ん」 と泣く場面はほんのワンシーン というか、涙をこぼす程度で、鳴き声なんて一切出しません。  母親が居なくなっても、ツライ事があっても泣いたりしません。

 

 

 

 

唯一涙する場面は、ダミアンの父の家に入り、 エンゾの為に仕事で遅く帰ったダミアンに向かって 「森の生活に戻りたい」 と言う場面です。 食事もままならない森の暮らしであってもずっとダミアンと一緒に居たいというエンゾの気持ちが現われた瞬間だけでした過剰な演出を極力避けた事で、余計エンゾとダミアンの心情をこちらに考えさせるものになっています。最後ダミアンが家を去っていった理由や、意味は観客には知らされませんし、ニーナの空白の7年間の生活も描かれる事なく 深い余韻を残して幕を閉じます。

 

 

 

 

幼いエンゾに過去の自分をみるダミアン。 自分とは違う人生を歩ませたいと願う彼の贖罪と、そんなダミアンに父親の影をみるエンゾの渇愛の物語。ダミアンを演じた ギョーム・ドパルデュー は 名優  ジェラール・ドパルデュ― の息子さんでありますが、この次作撮影中 急性肺炎 にかかり、37歳の若さでこの世を去り 今作が遺作となってしまいました。 残念です。

一緒にいると重荷に感じ、離れていると寂しくてたまらない人間関係の距離感を描いた作品であり、母性や父性とは何か? を考えさせられる作品です。 機会がありましたらご覧になってみてください。

 

では、また次回ですよ~! パー