シアトルの自殺防止協会にインガ・ダイソンという女性から電話がかかってくる。 インガは大量の睡眠薬を服用し、朦朧とした状態で電話してきたのである。 電話を受けたのはアルバイト学生のアラン・ニューウェル。 電話の向こうのインガに呼びかけ続け、なんとか居場所を聞き出そうと奮闘する、、。

 

 

 

 

 

こちらは1965年制作の アメリカ映画 アメリカ です。

 

「追憶」 「トッツィー」 等の監督 シドニー・ポラック の記念すべき初監督作品で、

 

名優シドニー・ポワチエ、アン・バンクロフト、テリー・サバラス が共演するモノク

 

ロ撮影のヒューマンドラマです。

 

 

 

 

  大学のレポートのために自殺防止の電話窓口 「いのちのダイヤル」 でボランティ

 

アをしているアラン。 今日もいつものように事務所へ訪れますが、責任者の博士は

 

私用で外出する事になり、電話窓口をアラン一人に任されます。 デスクへ向かうア

 

ランの元へ、早速一本の電話が掛かってきます。 電話の相手はインガという女性で、

 

とりとめの無い会話を始めますが、会話の途中で大量の睡眠薬を服用した事を告げま

 

す。 薬

 

 

 

 

危険を察知したアランはインガを救う為に電話での会話をつづけながら、逆探知の指

 

示を出します。 インガの意識をとどめておく為に、アランは今日彼女に何があった

 

のかを訪ねます。 そこからインガは今に至ったこれまでの経緯をアランに話し始め

 

るのでした。電話の向こうの命が絶たれるまで残された時間はあと数十分、果してイ

 

ンガの居場所を突き止め自殺を食い止める事が出来るのでしょうか、、。というお話

 

で、実話が基になっています。 本

 

 

 

 

映画はアランとインガの電話でのやり取りと、インガの回想、その裏で警察等が電話

 

の逆探知に奔走する姿の3つが同時に進行していく形で描かれています。 その中で

 

も最も時間を割いているのがインガの回想で、自殺という行為に至った彼女の生活が

 

断片的に描写されます。 

 

 

 

 

大きくは長男の出生の秘密に端を発していますが、日常の些細な出来事、上司が出社

 

しない事を知らされていなかったり、ランチに誘った友人に先約があったり、息子の

 

親離れや、夫婦のすれ違いという細かな不穏の積み重ねによって妻、女性、一人の人

 

間として、自身の存在意義を見失っていく姿が痛々しく描かれ、女性目線の漠然とし

 

た孤独と虚無感を描いたものとしては時代の先を行っています。

 

 

 

 

その裏で電話の交換手と警察が電話回線を追ってインガの所在を突き止めていく過程

 

が緊迫して描かれ、スリリングなサスペンス映画の一面も覗かせます。 それを盛り

 

上げる音楽を クインシー・ジョーンズが奏でております。 音譜

 

 

 

 

アランを演じるシドニー・ポワチエの電話相手の演技が見事なのですが、インガと警

 

察の動き等が絡み合う為に、やや散漫になってしまい、二人の電話越しのやりとりを

 

メインとして観たかった私としては少し残念でありました。 とはいっても必死に彼

 

女の命を救おうと語りつづけるアランの誠実さにはやはり心打たれるのでした。

 

 

 


一人の女性の命を救う為に大勢の人間が必死に駆け回っている姿を映す事で、代えが

 

たい人間の命という重さを実感させられます。徐々に不安定になっていくインガが、

 

海岸で弱った鳥に集まる子供と出会うシュールな場面が妙に印象に残りました。 あ

 

の孤独感、置いて行かれた感、あの辺からインガがホラーのヒロインに見えた私であ

 

ります。 ドクロ

 

 

 

 

誰にも気を留められず 「話し相手が欲しいだけ」 というインガが、「いのちのダイヤ

 

ル」 に電話したのは最後の希望として、自分の話を聞いてくれる誰かに救いを求めた

 

のかも知れません。 電話でしか繋がりをもてない孤独は、今、よりリアルに感じて

 

しまいます。

 

 

 

 

ただ話し相手が欲しかった、ただ自分の話を聞いて欲しかった、本当はそれだけで救

 

われる事って意外に多くあったりする気がしてしまいます。日々の些細なコミュニケ

 

ーションの大切さを痛感させてくれるようなそんな映画になっていますので、機会が

 

あればご覧になってみて下さいませ、です。  目

 

では、また次回ですよ~!  パー