捜査中のトラブルにより現場を外された警察官のアスガー。今は緊急通報指令室のオペレーター勤務で、元の職場への復帰を目前にしていた。そんな彼がある夜受けた通報は、今まさに誘拐されているという女性からのものだった。彼女の名はイーベン。走行中の車の中から、携帯電話で掛けていた。その電話から聞こえる声と音だけを手掛かりに、犯人の特定とイーベンの救出に全力を尽くすアスガーだったが、、。

 

 

 

 

 

 

こちらは2018年制作の デンマーク映画  です。(88分)

 

緊急通報指令室という密室だけで展開される、低予算のサスペンススリラーの本作で

 

すが、第91回アカデミー賞外国語映画賞でデンマーク代表作として出品されており

 

ます。残念ながら最終ノミネートには至りませんでしたが、それだけの見応えがある

 

作品です

 

 

 

 

  前述したように、物語の舞台となるのは、警察署の緊急通報指令室と隣の部屋の

 

2カ所だけというシンプルなワンシチュエーション作品です。

 

 

 

 

市民からの通報を受けるオペレーターの中に、主人公アスガーがいます。 しかしどう

 

にもやる気のない彼の対応に疑問を感じます。 どうやらアスガーは警察としての捜査

 

中のトラブルで現場を外され、一時的にこの部署へと配属されていました。 明日には

 

現場復帰に関わる大事な審議があり、この部署の仕事も後数分で終了という所でした

 

 

 

 

そこへ通報があり、いつも通りその電話へ出た事によってアスガーの人生を大きく動

 

かす事になります。その電話は女性からのもので、ただの酔っ払いだと受け答えして

 

いたアスガーでしたが、様子がおかしい事に気付いた彼は、イエス、ノーで答えるよ

 

う指示します。 すると彼女は、夫に拉致され、家に残してきた子供にかけるふりをし

 

て通報している事が分かります。 

 

 

 

 

それを知ったアスガーは捜査しようとしますが、オペレーターの管轄外とされ、案件

 

を他へと回されてしまいます。 危機感を感じたアスガーは、そのまま部屋を移り、独

 

断で女性とおの身辺へと電話をかけて捜査をつづけるのでしたが、といったお話です

 

前科持ちの暴力的な夫による誘拐、そう思われた事件が二転三転していき、最後には

 

意外な結末を迎える事になります。  滝汗

 

 

 

 

本作の面白い所は、本編中ほぼアスガーと、オペレーター室の数人しか登場する人物

 

がおらず、電話の相手すら映像に映る事はありません。 電話の声と、そこから漏れ聞

 

こえる周囲のノイズしか情報が与えられない徹底ぶりです。 その上、映画の中の事件

 

と鑑賞時間がリアルタイムで進行するので、こちらに与えられる情報も主人公と全く

 

同じ条件となり、観客側もアスガーが得る限られた情報から推理や判断を強いられ、

 

完全に映画の世界を同時体験する面白味事があります。 

 

 

 

 

 同時に観客自身が電話相手の顔や状況や情景をイメージしなければならない事で、そ

 

れぞれ個人のイマジネーションによって映画の風景が変化するという楽しみもありま

 

す。 そう考えるとちょっと落語に似ているかも知れませんね。

 

 

 

 

そこで起こっている事件を放っておけなくなったアスガーが、独断で捜査を進めて行

 

く事に賛同し、共感しながら成り行きを見ていた観客は、ある時点でそのアスガーの

 

独断による正義感を嘆く羽目となります。 そして彼の側に立っていた自分にも嫌悪感

 

を覚えるような構造になていて、一方的な見解で判断してしまう怖さは現在のネット

 

の世界にも通じる恐ろしさを痛感させられるものです。  

 

 

 

 

この事件と同時に、アスガーが抱えていた問題も浮き彫りになり、ついには贖罪へと

 

昇華させる脚本の巧みさは正にお見事です。 最後のアスガーの佇まいは何を意味す

 

るのでしょうか? 私の好きな ジェイク・ジレホールでハリウッドリメイクの予定も

 

あるとか。

 

 

 

 

ワンシチュエーションを逆手に取り、見せない事で観客のイマジネーションを刺激さ

 

せてくれる作品で、サスペンススリラーの枠にとどまらず、普段の常識や思い込みの

 

危うさが描かれている本作。88分という時間の密度の濃い映画で、娯楽作品として

 

も十分楽しめる作品ですので、機会があればご覧になってみて下さいです。 目

 

では、また次回ですよ~!  パー