第一次世界大戦真っ只中の1917年。西部戦線ではドイツ軍の後退が始まり、イギリス軍はこれを好機と、追撃に乗り出そうとしていた。しかし、それはドイツ軍の罠だった。そのことを一刻も早く最前線の部隊に伝えなければならなかったが、あいにく通信手段は途絶えてしまっていた。そこで若い兵士スコフィールドとブレイクが呼び出され、翌朝までに作戦中止の命令を届けるよう指令が下る、、。

 

 

 

 

 

 

こちらは2019年制作の アメリカ アメリカ イギリス イギリス の合作映画です。(119分)

 

監督は 「アメリカン・ビューティー」 「スカイフォール」 の サム・メンデス、撮影

 

は「ショーシャンクの空に」「ブレードランナー 2049」の ロジャー・ディーキンス

 

です。アカデミー賞の余韻が残る中、公開初日に「重低音体感上映版」で観てまいり

 

ました。今まで経験した事のないような映像体験をして数時間経ちますが、未だに心

 

が劇場の中に居るような、ポカ~ンとした抜け殻のような状態でございます。

 

 

 

 

  お話を復習までに、

 

1917年4月6日、ヨーロッパは第一次世界大戦の真っ只中。その頃、西部戦線 

 

(ベルギー南部からフランス北東部) にいたドイツ軍は後退。 しかし、その後退は戦

 

略的な作戦で、連合軍をヒンデンブルク線にまで誘引し、総攻撃しようとするもので

 

した。 イギリス軍はその事実を航空偵察によって把握。 エリンモア将軍は2人の若い

 

将兵 (トムとウィリアム) を呼び出し、「このままでは進撃中のデヴォンシャー連隊

 

が壊滅的な被害を受ける。

 

 

 

 

 しかし彼らに情報を伝えるための電話線は切れてしまった

 

そこで君たち2人は現地へ向かい、翌朝までに連隊の指揮官マッケンジー大佐へ進撃

 

中止命令の伝令の手紙を届けるよう」 命じます。 デヴォンシャー連隊には1600名の

 

将兵が所属しており、その中にはトムの兄ジョセフもいました。 トムとウィルは味方

 

を救うため、決死の覚悟で無人地帯へと飛び込むのでした、、。 爆弾

 

 

 

 

ストーリー自体はいたってシンプル。 味方の居る前線に翌朝までに伝令を届けるとい

 

うものです。 しかし、その道程には敵や罠が多く潜んでいる、正に命がけの任務です

 

この任務をまかされたのが地図に詳しいというだけのトムと、彼と行動を共にしてい

 

たウィル。 特別優秀という訳ではない普通の兵士が、急に大任を言い渡されます。

 

その為、観客はより2人と同じ意識と視点で、それからの任務をまるで3人目の同行

 

者のように、否が応にも 同時体験にさせられてしまうのでありました。

 

 

 

 

宣伝等でご存知の通り、映画はまるでワンカットで撮影されているかように、上へ下

 

へ右へ左へと、主人公の行動に密着し、これでもかという位ピタッリとついてまわり

 

ます。ただワンカットという意識は序盤だけで、次第に映画の世界へ没頭する事にな

 

ります。私達が画面で初めて目にするものは、彼等も初めて目にするもので、それに

 

よってこれから何が起きるのか?という予想が出来ない緊張感も共有する事になりま

 

す。 

 

 

 

 

靴音、服のこすれる音、鳥のさえずりにも敏感になって、正直これがなかなかしんど

 

く、音響効果も相まって、3回程 身体がビクッハッとなる場面があったりしました。

 

ただ、その体験こそがこの映画の神髄であり、その体験をさせる為のシンプルなスト

 

ーリーでもあります。 その反面、映し出される映像と風景は多岐に渡ります。 

 

 

 

 

花の咲く草原に始まり、うねうねとつづく塹壕の中、遺体が転がる湿地帯、桜の咲く

 

丘、崩れ落ちた建物、映画「レヴェナント」を思わせる濁流下り、爆撃の荒野と、こ

 

れでもか!という位にめまぐるしく変化していき、全く飽きさせません。

 

 

 

 

これらの屋外のディテールがかなり綿密に作られていると同時に、衣装等も細かいス

 

レやほつれの細工がなされ、アップになっても違和感や衣装感が全く見られず、映像

 

で伝えようとする作り手の意気込みがひしひしと感じられます。緑の草原からの荒廃

 

した戦場、美しい水面に浮かぶ花びらからの遺体の山と、強烈な落差の対比で、戦争

 

というものの 不毛さと残酷さ も映像で語られます。 

 

 

 

 

これまでも 「プライベート・ライアン」「ダンケルク」 とリアルな戦場を描いた映画

 

がありましたが、本作はそれを超える緊張感と臨場感が味わえます。 

 

 

 

 

このほぼ出ずっぱりな主人公ウィルを演じる ジョージ・マッケイ (こちらでは 「パ

 

レードへようこそ」 「はじまりへの旅」 「マローボーン家の掟」 と、結構紹介して

 

ました。)彼のおぼつかない雰囲気がとても良いのであります。 特に お顔、まるで画

 

家のモディリアーニが描いたひょろっとしたルックスは、戦場に放り出された恐怖感

 

を見事に伝えてくれます。 他にも コリン・ファース、ベネディクト・カンバーバッ

 

チ、マーク・ストロングと、私の好きなイギリス俳優さんが、要所々で登場して得し

 

た気分になりました。 キラキラ

 

 

 

 

2人の兵士が伝令を持ち、ただただ前線へと向かうという、非常にミニマムな個人の

 

ストーリーですが、その小さな視点だからこそ見える戦場の恐怖と、その虚しさが、

 

より等身大でリアルに伝わる作品です。 その為のワンカットという映像表現が見事に

 

結実しています。 テクニカルなチャレンジではなく、伝えたいものを表現する為の

 

方法がこの手法だったという事が良く理解出来る作りです。 そしてただ圧巻の一言の

 

映像美。下手なホラー映画より、よほど恐ろしい緊張感を味わえますよ。 ドクロ

 

 

 

 

映画をDVDで鑑賞する事が多い私ですが、本作こそ劇場という環境で鑑賞すべき作

 

品だと実感しました。 多分、これをDVD等で鑑賞しても製作者の意図の半分も伝わ

 

らないのではないでしょうか?  映画にもストーリーを紡ぐものや美しい映像を楽しむ

 

作品と、多様な作品がありますが、これほど体験、体感する事が目的な映画は今後も

 

そう無いと思いますので、サービスデー等を利用してこの作品の臨場感を是非劇場で

 

体験して頂ければと思います。 戦争映画というジャンルにとどまらない 体感映画 で

 

すので、この機会にでもご覧になってみて下さいませ、です。  目 

 

では、また次回ですよ~!  パー

 

 

 

 

 

 

 

ほんの一部ですが、撮影の苦労と実写の凄さが見れる、正に映画な本作です。 流れ星