中流家庭の住む閑静なマンション。 うだつの上がらない大学の非常勤講師ユンジュは、出産間近の妻ウンシルに養われながら教授を目指している。 だが最近、飼うことを禁止されているはずの犬の鳴き声がマンション内に響き渡り、なかなか出世できない彼をイラつかせていた。 ある時、彼はたまたま犬を見つけると地下室に閉じこめてしまう。 一方、マンションの管理事務所で働くヒョンナムは、平凡で退屈な毎日を送っていた。 そんな時、団地に住む少女の愛犬ピンドリがいなくなったと知り、正義感を燃やしてビラ貼りを手伝い始めるのだった、、。
こちらは2000年制作の 韓国映画 です。 (110分)
「パラサイト」 「殺人の記憶」 の ポン・ジュノ 監督の長編デビュー作という事で気
舞台は中流階級が多く住むマンモスマンション。 そこに暮らす大学の非常勤講師
ユンジュは、出産間近の妻ウンシルに養われながら教授を目指していました。マンシ
ョンに響く犬の鳴き声にイライラを募らせたユンジュは地下にあったタンスに犬を閉
じ込めてしまいます。
その後、女の子が団地の管理事務所に勤めるヒョンナムの所に迷い犬の貼り紙を持っ
てやって来ます。同情したヒョンナムは女の子の代わりに町へ出て貼り紙を貼ってま
わる事に、、。 と、犬をキーワードにした二人のおかしな物語が展開していく事にな
るのであります。
但し、一筋縄ではいかないのがポン・ジュノ作品、時にマンガのようなコメディにな
ったりホラーテイストになったり、サスペンス、ヒューマンドラマと常に変化して、
掴み所のないドラマが繰り広げられます。
その中に格差社会、妊婦のリストラ、賄賂、といった問題が巧みに散りばめられてか
なりボリューミー。観終えた今でも何を見せられたのか考えてしまう程ですが、不思
議とやさしい余韻が残る作品なのでございます。
ポン・ジュノ 監督脚本によるこの作品、これまた独特の韓国文化が満載ですが、日本
人の私達にはかなりショッキングな食文化 「犬鍋」 が登場します。タイトルからワン
ちゃんのハートフルものだと勝手に思っていたら、、。
「本映画に登場する犬は医療専門家の立ち合いのもと安全に管理されています」 と、
映画の始めに表記されたのはこの為だったのでした。 動物好きな方、特にシーズ
ー、プードル をお飼いの方は鑑賞注意です。
同時にこの 犬 という存在はいったい何を象徴しているのか?と、考察せずにはいられ
なくなるポン・ジュノ 作品なのでした。
非常勤講師でくすぶるユンジュ、そんな彼を養う妊娠中の妻、テレビ出演に憧れる管
理事務所のヒョンナム、犬を飼うお婆さん、食事にこだわる管理人、地下に住む浮浪
者マンションという小宇宙で繰り広げられるおかしな人間模様でございます。
意味ありげな切り干し大根、浮浪者の出生と、パズルが余ったままの部分もありまし
た。が、トイレットペーパーの新たな使い方は勉強になりました。
この作品で最も印象に残るのが黄色のパーカー姿のヒョンナムちゃん。 どこかで見た
ことあるな~と思っていたら、なんと!是枝監督の 「空気人形」 で主人公を演じてい
たペ・ドゥナでありました。 イメージが全然違ったので気付きませんでした。
いやはやラストのうつろなユンジュの視線、バックミラーの光と、片想いLGBT
感、、「パラサイト」 と対で観ると楽しめるかも、と思いますので興味がありました
らこの機会にご覧になってみて下さい。です。
「韓国は規則を守らない国だ」 が印象深いセリフでした。
では、また次回ですよ~!