長い失業の末、映画ポスター貼りの職を得たアントニオは、シーツを質に入れ、代わりに仕事に必要な自転車を請け出し、6歳の息子ブルーノを乗せ町を回るが、ふとした隙に自転車が盗まれてしまう。 それなしでは職を失う彼は、無駄と承知で警察に行くが相手にされず、自力で探すことにするが、、。

 

 

 

 

 

 

こちらは1948年制作の イタリア映画 イタリア です。 (85分)

 

以前こちらでご紹介した 「靴磨き」 や 「ひまわり」 の ヴィットリオ・デ・シーカ 

 

監督作品で、第二次世界大戦後の イタリアネオレアリズモ映画の代表作​​の一本です。

 

 

 

 

  第二次世界大戦後のイタリア  戦争の影響で失業者があふれるローマ。 2年間

 

職に就けなかったアントニオは、職業安定所の紹介で役所のポスター貼りの仕事にや

 

っとありつきます。​​​​ 

 

 

 

 

仕事の条件は自転車を所有している事でした。 生活の為に自転車を質屋に入れていた

 

為、妻は新たにシーツを質に入れ、そのお金で自転車を取り戻します。 

 

 

 

 

翌日、自転車に息子のブルーノを乗せて学校へ送り届け、仕事場へと出勤するアント

 

ニオ。 しかし、仕事の初日にも関わらず作業中に自転車を盗まれてしまいます。

 

後を追いかけますが、逃げられてしまい途方に暮れます。 

 

 

 

 

警察に届けますが、当てにならず、自分で探すしかない状況になってしまうアントニ

 

オ。新しい自転車を買うお金もなく、自転車がなければ職を失​​​​​​ってしまう事に、、。 

 

アントニオは幼いブルーノと共に盗まれた自転車を探し始めるのでした。

 

 

 

 

戦後の貧困にあえぐ小市民を描いた本作は、主人公アントニオを始め、全て素人が演

 

じています。撮影も実際の町で撮影されている事もあって、記録映画のような一面も

 

うかがえるリアリティのある作品です。

 

 

 

 

あくまで仕事の条件だった自転車は、ただの道具からアントニオの家族にとって、希

 

望と未来の象徴のような存在になります。 主人として家族を養う責任を強く感じて

 

いるアントニオは必死になって探す訳ですが、そのプレッシャーからか付いてきた息

 

子にも時折冷たくあたってしまいます。 

 

 

 

 

探す道中で犯人らしき男を見つけ、尾行した先の教会へ入りますが、行き過ぎた行動

 

により追い出されてしまう無念さ。 犯人の男の家へとたどり着きますが、その家族

 

と近隣住人達から非難され、警察までも助けてはくれない非情さ。

 

 

 

 

そんな自分の姿を幼い息子に見られている父親としての不甲斐なさ。 主人としての

 

尊厳と、親としての威厳をことごとく打ちのめされるアントニオの姿は、戦後の市民

 

を象徴しているようでもあります。

 

 

 

 

教会という神様に締めだされ、警察という国家にも相手にされず、同じ市民にも罵倒

 

されたアントニオは指針である正義と良心を失ってしまいます。そして、ただの道具

 

であったはずの自転車がいつしか目的にすり替わってしまい、盲目になった彼は禁断

 

の果実の誘惑に負けてしまいます。 りんご   

 

 

 

 

しかし、罪を犯したアントニオを救ったのは、そんな父親の姿を見て泣きじゃくる息

 

子のブルーノと、アントニオが失いかけた他人の良心でした。アントニオは息子の手

 

をとり群衆に消えていきます。 

 

 

 

 

世間的な罪からは解放されたアントニオですが、大きな十字架を背負って生きていく

 

事になります。貧しさの連鎖が惹き起こした悲劇ですが、同時に、忘れてはいけない

 

 家族の愛と良心という存在を強く訴えているように思えてなりません。

 

 

 

 

劇中二人がレストランに入って食事するシーンが忘れられません。「生きていればな

 

んとかなるさ!」 と自分を奮い立たせますが、すぐに現実に戻ってお金の計算を始め

 

る辺りの小市民ぶりに自分を投影してしまいました。 パスタ  コインたち

 

 

 

 

主人公アントニオの奥ばった目と佇まいの哀愁、彼のそばに付いたり離れたり、子犬

 

のようなブルーノの幼気な姿と表情にはうるうるさせられます。

 

 

 

 

貧しさという病いによって、親という威厳をことごとくへし折られ、恥に苛まれる居

 

心地の悪さに、これでもかとムチ打たれるリアリティがあり、この家族の明日がどう

 

なるのかを考えると胸を締め付けられるような気持ちになり、「これが現実だよ」 と

 

言われているようです。  ドクロ

 

 

 

 

観終わった後、タイトルに二つの意味を感じて切なくなった私でした、、。

 

映像も物語も、ズシンと響く作品ですので、機会があればご覧になってみて下さい。

 

では、また次回ですよ~!  パー