昭和22年、信州諏訪・犬神財閥の当主佐兵衛が逝去。犬神家の顧問弁護士である若林はその遺言書を巡って家族内で問題が起きることを予期し、東京から探偵の金田一耕助を諏訪へ呼び寄せる。だが、金田一が諏訪に着いた日に若林が殺害される、、。

 

 

 

 

 

 

こちらは2006年制作の 日本映画 日本 です。 (134分)

 

言わずもがなの角川映画の記念すべき第1作目。 1976年の名作 「犬神家の

 

一族」 をリメイクした本作は、角川映画30周年の記念作として企画されたものを、

 

同じ市川崑監督、石坂浩二 主演 そのままでリメイクしたチャレンジ作でございます。

 

 

 

 

  横溝正史の小説で有名な、私立探偵 金田一耕助を映像化した作品の中でも、市

 

川崑 X 石坂浩二のコンビ作品が大好きな私としては、このリメイクが信じられられ

 

ず、以前この作品を鑑賞した時も否定的な感想しか持てず、二度と観ないだろうと思

 

っていたのですが、何故か急に観たくなってレンタルしてみました。 

 

 

 

 

今さらなので、ストーリーは省略いたしますが、、本

 

かなりの時間が経ち、私もそれだけ歳を取ったせいなのか? 前回の鑑賞よりは好感を

 

持ちました。 まぁ、前作は私にとって絶対的な作品という事が前提でありますが、

 

 

 

 

オープニングから旅館、珠世救出 辺りまでの件は、ほぼほぼ前作の脚本通りのセリフ

 

構図、カット割りという大胆なもので、逆に再演感を楽しみました。

 

 

 

 

が、その後も多少の変更がありつつも、概ね前作の脚本通りのアングルやカット、印

 

象深い場面 (遺言状をめぐって弁護士と三姉妹の言葉の攻防戦、展望台のモノクロ効

 

果、菊乃の家を急襲する際の歌舞伎化、血しぶきショット) は、そのまま引き継いで

 

いて、ある意味で監督の 「潔さ?」 を感じる程です。

 

 

 

 

前作よりも12分短縮された本作は、犬神佐兵衛のラブストーリーといった場面が

 

説明セリフ等で省略されていて、ややコンパクトになった印象になっています。

 

 

 

 

最も作品の相違を感じたのは、監督含めお歳を召した為か、セリフを喋るスピードが

 

ややなってスローになっております。 

 

 

 

 

特にお気に入りのキャラ、等々力署長を演じる加藤武は年齢もあるでしょうが、かみ

 

砕くようなスローテンポです。 その為、金田一との絶妙な掛け合いに微妙な「間」が

 

出来て、面白味が半減しているように感じました。

 

 

 

 

その反面、セリフを理解し易くなり、横溝正史の入り組んだ物語を把握するのには助

 

けになり、落ち着いてストーリーを楽しむには、こちらの方が分かり易いかも知れま

 

せん。

 

 

 

 

映像面では、本作がデジタルで撮られている為か、画面の陰影が弱く、見えない闇の

 

怖さも半減しています。 菊人形の首や遺体の「あえて」作り物を感じさせていたもの

 

が、本作ではそれがより露骨に表れています。 

 

 

 

 

それもあってか、血のドロドロした感じや得体の知れない恐ろしさはかなり抑えら

 

れ、横溝ワールド特有のオドロオドロしさはかなりマイルドになっていて、これまた

 

観やすくはなっています、、。 

 

 

 

 

そんな現代的考慮もあってか、ヒロインとなる珠世も前作より意志の強さを感じます

 

し、年齢が上がった金田一の視点も自ずと変化しているのが見られます。

 

 

 

 

その金田一の宿となる那須ホテルの女中 はる とのやり取りも本作の良いアクセントと

 

癒しになっていて、本作では深田恭子が演じております。 ほわ~とした雰囲気は良い

 

のですが、いかんせんお顔立ちやメイクが田舎の女中には見えず、珠代を美人だと紹

 

介する場面では、「あんたもね!」とツッコミたくなります。 

 

 

 

 

はる絡みでは印象深いシーンが多く、彼女の料理を金田一が食べる お芋パクッ の繰り

 

返し映像や、美味しかった料理を聞かれた金田一が「生卵」と答える場面   襖に

 

挟まった裾をシュ!の絶妙感。つかいのお礼のうどんを「食べなさい、食べなさい」

 

と勧める金田一 ラーメン この二人のシーンだけは平和でございます。 

 

 

 

 

他にもこの映画には細かいながらも印象に残る場面が多く、署長の胃薬等は勿論です

 

が、お米持参の金田一や、旅館のオヤジの二度見、猿蔵の新聞配達、回復力の早い

 

竹子と梅子、ギャー!からの気絶とカエル カエル 等々。

 

 

 

 

本作の珠代と小夜子の会話場面では二人の尋常でない身長差に笑ってしまいました。

 

と、いつも通り脱線する私。 結局の所、なんだかんだ言いながらもリメイクならでは

 

の楽しみが出来た作品でした。

 

 

 

 

松子を演じる富士純子と、佐清を演じる尾上菊之助は実の親子だったのを後で知った

 

のですが、それを知って最後の場面を観るとより感動的であります。  

 

 

 

 

常連 草笛光子のあの役での登場や、「女王蜂」からの仲代達矢、時間経過を感じさせ

 

ない大滝秀治シリーズ好きの心もくすぐられます。 

 

 

 

 

本作で今さらですが、改めて理解出来た事柄もあり、前作のホラー的要素は控えめな

 

がら、人間ドラマ、親子、恋愛、愛憎、情緒、といった内面的な描写では本作の方が

 

丁寧に描かれているように思えます。

 

 

 

 

石坂浩二が演じる金田一耕助に説得力を感じるのは、あの声にあるように改めて感じ

 

ました。 ラストの古館弁護士によるセリフは微妙でしたが、その後ラストで金田一

 

が振り返り、こちらに向かって会釈する場面は、本作が市川崑の遺作であり、石坂浩

 

二が演じる 金田一耕助が最後だと思って観ると、感銘深いものを感じるエンディング

 

になっています。

 

 

 

 

同じ監督、演者が新たに作っても、時間経過によって微妙にニュアンスや質感が変わ

 

るという事を感じさせられた作品でした。 そんな訳で、前作を観ている方も新たな

 

発見がこの作品にはあると思いますので、機会があればご覧になってみて下さいま

 

せ、です。

 

 

 

 

そうそう、湖から出ている足が印象的な本作ですが、「斧、琴、菊」になぞらえた犯

 

罪であれは 彼を逆さまにして ヨキ (斧)を表している事になっているとか? 原作を

 

読まない私あるあるでした、、。 なんちゃって。  目

 

では、またですよ~!。  パー

 

 

 

 

 

 

 

大野雄二による日本映画の名曲。ネタバレ動画になってしまっています。 注意 音譜