凶悪犯罪が絶えなかった1990年代、人気ニュースキャスター、ハン・ギョンベの9歳の一人息子サンウが誘拐される。誘拐犯は、ぞっとするほど冷静な声の脅迫電話で、身代金1億ウォンを要求してくる。警察は秘密捜査本部を設置するが、犯人は緻密な手法により正体をつかませず、捜査網をくぐり抜けていく。唯一の手掛かりは、脅迫電話の声だけ。44日間にもわたる悪夢のような日々により、夫婦の絆は崩壊し、やがて追い詰められていく、、。

 

 

 

 

 

 

こちらは2007年制作の 韓国映画 韓国 です。(122分)

 

1991に韓国で実際に起きた誘拐事件を題材にした映画で、いわゆる 韓国3大未解

 

決事件 と言われる 華城連続殺人事件を「殺人の追憶」として映画化。 カエル少年事

 

件を「カエル少年失踪殺人事件」として映画化。そして本作はイ・ヒョンホ君誘拐事

 

件を映画化したものになります。 

 

 

 

 

実際の事件の概要ですが、1991年1月29日、ソウル市の高級住宅エリア江南区

 

に住んでいたイ・ヒョンオ君(9歳)が夜の公園でブランコに乗っている姿を目撃さ

 

れたのを最後に行方不明になります。 その夜自宅に男の声で電話があり、その後44

 

日間、60回あまりにわたって身代金要求の電話がつづきました。 この間、警察は身

 

代金の引き渡し現場で犯人を捕まえようと試みたがその度に失敗。 

 

 

 

 

交渉虚しく1カ月後に漢江公園近くの排水路でイ・ヒョンオ君の遺体が発見される事

 

になります。 司法解剖の結果、イ・ヒョンオ君が死亡したのは胃に残った内容物から

 

誘拐直後と推定され、窒息死によるものと断定。 犯人は殺害後に身代金要求をしてい

 

たことが明らかになりました。 捜査は継続されましたが、本件は2006年に時効

 

となり迷宮入りとなりました。

 

 

 

 

  映画はこの事件の大まかな事実を網羅しながらも、映画作品としてかなりの改変

 

と脚色がなされた、ほぼ90%フィクションのエンターテインメント作品に姿を変え

 

ています。 主人公となる父親は、国民的人気のニュースキャスターという設定に変

 

更。 TVで国民の代表のような立場に置く事で、誘拐犯の特定や目的がより不明瞭にな

 

る効果とメディア側にいる特権的権力や、富の象徴という立場が社会的な構造を集約

 

したキャラとして物語をシンプルに理解しやすくさせています。

 

 

 

 

彼と妻は誘拐犯の要求もあり、自分達で事件解決を試みますが、上手く運ばない事か

 

ら妻が警察に通報し、警察と連携して息子を取り戻す為に協力しますが、ここでの警

 

察側のあまりの無神経さと無能さには呆れます。 その上、この緊張と不安の中で疲労

 

と憔悴した夫婦のドラマの合間で、かなり間抜けで笑いを誘うコメディリリーフのよ

 

うな行動をとる警察は、実際の事件でかなりの失態によって犯人を取り逃がした事も

 

あり、映画の中でも批判される対象として、意図的な批判として、警察を馬鹿にする

 

描写が多くあるのは分かりますが、サスペンス的ストーリーに間抜けなエピソードが

 

入る事で映画の緊張感が損なわれる結果となり、違う意味でも嫌われる存在でありま

 

した。  パトカー

 

 

 

 

途中から科学捜査が導入され、声紋判定が行われます。 犯人との会話で度々登場し

 

た「ドッキング」というクセのある言葉が気になっていた私が、おっ!ここで何かの

 

展開があるのか?と期待しましたが、これといって起こらず、「ドッキング」という

 

言葉すら、何のヒントにも繋がらない始末。 実際の犯人が使い、捜査上でも手掛か

 

りにならなかったのでしょうが、個人的にこの特異な言葉に引っ掛った私でありまし

 

た。 

 

 

 

 

それと、本作で犠牲者になる少年は、劇中肥満の為に度々母親から運動をさせられる

 

場面があります。 裕福な少年という設定を分かり易くした映画上のものだと勝手に思

 

っていましたが、最後に実際の少年の写真が映画の中に映った瞬間、何故か画面に謝

 

ってしまいました。 そうかそうか、、。 

 

 

 

 

度々父親が大杉連、母親が木村佳乃に見えてしまった私でありました。 すいません。

 

実際の事件を事前に知っている観客は、この映画のエンディングを知った上で鑑賞し

 

ている為、サスペンス映画の醍醐味である意外なエンディングは期待出来ないという

 

デメリットは致し方ありませんが、メリーゴーランドを使った場面等の含みを持った

 

映画的演出にも見所は多くあります。  

 

 

 

 

そして、エンディングでは映画オリジナルのニュースキャスターという設定を活か

 

し、ニュース番組の生放送中のカメラに向かい、子供を殺した誘拐犯に語り掛けると

 

いう場面が登場します。 父親としての感情が爆発する場面ですが、この場面の為に

 

ニュースキャスターという設定にした事を察してしまう程、エモーショナルなシーン

 

です。

 

 

 

 

エンドクレジットでは実際の犯人との電話での会話が流されます。 劇中で聞いてい

 

た会話を再び実際の音声で聞く事になりますが、やはり本物のインパクトはやけに強

 

烈に聞こえてしまいます。  カラオケ  やたら不気味で冷静なその声は嫌でも耳に残

 

り、本作の意図でもある、「時効になってもお前の声は残り、この罪は償わせる」 と

 

いう製作者の強い意志が伝わるもので、「殺人の追憶」同様、作品を観ているであろ

 

う犯人に向けたメッセージを感じるものでした。 実際の事件の方が謎に満ちていま

 

すが、、。

 

 

 

 

エンターテインメント映画として観れば、まぁまぁな作品になるかも知れませんが、

 

この事件を風化させず、忘れさせないものとした意図の作品としては成功した映画だ

 

と思います。 そして度々登場するキリスト教は、この無慈悲な犯人の心理を揶揄し

 

たものでしょうか? 

 

 

 

 

子供が犠牲になる作品を観るのは、なかなかしんどいものもありますが、夫婦にとっ

 

てわが子とはどれ程の存在かという事を見せられ、感じさせてくれる映画ですので、

 

機会があればご覧になってみて下さいませ、です。  目

 

では、また次回ですよ~!  パー