寛永十五年、徳川幕府のキリスト教弾圧に端を発した島原の乱は、天草四郎時貞を中心に、二万人近い信者が惨殺された。その夜、四郎の首は雷鳴とともに甦った。怨みをはらそうとする四郎は、やはり、生前に裏切られたり夢を果たせなかった人々を集めて、幕府に復讐を企てた。細川ガラシャ夫人、宮本武蔵、宝蔵院胤舜、伊賀の霧丸、柳生但馬守宗矩たちが集まった。頻繁に起る不思議な事件を、柳生十兵衛は魔界から甦った化者たちの仕業とつきとめるのだったが、、。

 

 

 

 

 

 

こちらは1981年制作の角川映画です。 日本 (122分)

 

1967年に刊行された 山田風太郎の 「おぼろ忍法帖」(後に現在のタイトルに変

 

更)を原作に、角川春樹が製作 深作欣二監督により映画化されたものが本作になりま

 

す。劇場公開後のテレビ放送等で観てはおりましたが、DVDでちゃんと観なおしたの

 

は、うん十年ぶり。 なかなか面白い体験となりました。

 

 

 

 

  「エロエムエッサイム我は求め訴えたり」 のセリフが有名な本作。 原作小説を

 

映画化するに際し、かなりアレンジが加わっているようですが、いつもながら小説は

 

未読の為、この作品だけの感想となってしまいます。 

 

 

 

 

寛永15年のキリシタン弾圧で、島原の乱で二万人近い信者が殺されます。しかし、悪

 

魔ベルゼブブの力によって魔界転生して蘇った天草四郎が、宮本武蔵や細川ガラシャ

 

など、実在する歴史的偉人や剣豪で無念の死を遂げた人間たちを転生させ、江戸幕府

 

に復讐しようと画策します。それに気づき、立ち向かうのが​​​​​柳生十兵衛でありました

 

といったお話で、歴史に疎い私でも楽しめる 「怪奇アクション巨編」 です。

 

 

 

 

オープニング 島原の乱で斬殺された人々の生首が転がる不気味なセットのケレン味

 

たっぷりな雰囲気がたまらない世界観を醸し出し、ドライアイスのスモークの中、

 

(夜ヒット感) 派手な能の衣装を着たジュリーが登場 ビックリマーク もう、ここである種オール

 

オッケーな作品であります。 このジュリーが演じるのが 天草四郎。 この世に蘇った

 

彼は幕府転覆を図る為、同志を募るリクルート活動を開始し、細川ガラシャ、宮本武

 

蔵といったこの世に未練を残した人達を蘇えらせていきます。 この「七人の侍」ばり

 

のリクルート活動に、かなりの時間が割かれていますが、ここが意外と面白かったり

 

します。

 

 

 

 

で、この魔界アベンジャーズが力を合わせて作戦を実行していくかと思いきや、個々

 

の事情と欲望を果たす為に行動するので、てんでばらばらでまとまりが無いという始

 

末。天草四郎さん、カリスマ性はあるのに統率力に欠けてしまっておられるのでした

 

 

 

 

柳生十兵衛を演じるのが千葉真一。 華やかで妖艶なジュリーとは真逆の野生的で男臭

 

いいで立ちが素敵であります。 緒形拳の宮本武蔵に対決を申し込まれ、名刀を作る

 

村正に魔物を斬る刀を特注。 あえて舞台を海岸というロケーションで戦わせるサービ

 

ス精神。  波   その後、魔界に落ちた師匠、柳生但馬守宗矩 (彼とのけいこで目を負

 

傷させられた十兵衛) と、燃え盛る江戸城内での一騎打ちというクライマックス場

 

面。 メラメラ

 

 

 

 

本物のセットを燃やして撮影したというこの場面の迫力は満点ですが、それでもどう

 

やって撮影したんだという程の映像に仕上がっています。  しかし、この映像以上に

 

驚くのが、柳生但馬守宗矩演じる若山富三郎の動きのキレの凄さ。 殺陣の動きの速さ

 

は年齢を感じさせません。 この場面で前述した、精魂込めて作った名刀村正が、あっ

 

けなく折れるというハプニングに、「折れんのか~い!」 と叫びそうになりました。

 

 

 

 

それと残念だったのが、カツラがテレビの時代劇でよく見る襟足にもんまりとした短

 

い毛のあるタイプのカツラ。 ちょっとこういう所で冷める私でありました。 真顔

 

この戦いでも、武蔵との戦いでも、剣豪といわれる十兵衛が相手が嫌う笛を吹かせた

 

り、梵字を 耳なし芳一 ばりに身体に書いたりと、なんだかんだで保険をかけてる十兵

 

衛の必死な姿に唖然とします。

 

 

 

 

男性的な時代劇を、細川ガラシャ演じる佳那晃子の惜しみないヌードによって艶やか

 

さが加わり、昭和の映画的サービスも相まって、より作品に妖艶さと怪奇さが増す効

 

果となっています。 ジュリーに代表される豪華な衣装を人形作家の辻村ジュサブロ

 

ーがデザインされている所も見所の一つです。 

 

 

 

 

ただせっかくの衣装や美術でありながら、カメラがそれを最大限に生かせていない残

 

念な画角やショットが多数見られ、本作でも監督の美意識とちょっと合いませんでし

 

た。音のセンスも同様、天草四郎の妖術で放たれる髪の効果音の ドヴィン という間抜

 

けな電子音や、せっかく和楽器を取り入れているくせにこれまた微妙なBGMの安っぽ

 

さは、娯楽作品ながらも気になり、深作欣二&角川映画の粗さを感じてしまいます。

 

 

 

 

そうは言いながらも、良い意味である種の時代感を体験できる貴重な作品ですし、天

 

草四郎役に沢田研二をキャスティングした段階で、ある程度成功していると言って良

 

い位ジュリーが強烈に印象に残る作品です。

 

 

 

 

最後のクライマックスといえる柳生十兵衛と天草四郎との対決で、首を切られながら

 

も生きている天草四郎が、「人間がこの世にある限り、私は必ず戻ってくる、必ず戻

 

ってくるぞ!ハハハ」 と言った後のラストに 「え~!」 と、驚きの声を上げる事請

 

け合いです。潔くというのか、深作イズムなのか、とにかくびっくりした私でした。 

 

映画化当初は 五社英雄 が監督の予定だったようで、よりエロティックな 「魔界転

 

生」 も見てみたかったですね、、。

 

まんま「里見八犬伝」 と同じ真田広之も御出演されておりますし、見どころ満載の妖

 

気的娯楽時代劇の本作、機会があればご覧になってみて下さいませ、です。  目

 

では、また次回ですよ~!  パー