アルコール依存症の母親と2人きりで暮らす9歳の少年ズッキーニ。ある日、ズッキーニの過失によって母親が死んでしまう。親切な警察官に保護されて孤児院で暮らすことになった彼は、新たな環境の中で自分の居場所を見つけるべく悪戦苦闘する、、

 

 

 

 

 

 

こちらは2016年制作の スイス フランスフランス の合作映画です。(65分)

 

2002年に刊行されたジル・パリス による同名小説を原作にした、ストップモーシ

 

ョンアニメで、第89回アカデミー賞長編アニメ映画賞にノミネートされています。 

 

 

 

 

  カラフルでポップなジャケットに惹かれ、子供達の冒険ものくらいに思って観は

 

じめた私ですが、序盤のビールの空き缶だらけの部屋と、主人公ズッキーニを育児放

 

棄気味の母親の態度によって、「ありゃ?」と気付かされました。 本作は冒険もので

 

も、ファンタジーでもない、かなりシビアで現実的な内容だったのです、、。 滝汗

 

 

 

 

ズッキーニの過失によって亡くなってしまった母親。 父親は若い女性と出て行ったま

 

ま行方知れず。 その為、9歳のズッキーニは事件を担当した優しい警察官に伴われて

 

孤児院へ入る事になります。 そこには既に5人の子供達が暮らしていました。

 

 

 

 

ズッキ-二同様それぞれの家庭環境に問題のある子供で、薬物中毒の両親を持つ息

 

子、強制退去させられた難民の娘、精神を病んだ親、強盗の子供、性被害を受けてい

 

た子とかなりヘビーなものです。 その環境で暮らしていたせいか、子供達にも様々な

 

精神的障害が残りながらもそれを受け止め、度々訪れてくれる警察官のおじさんとの

 

交流を楽しみにズッキーニは生活に馴染んでいきます。

 

 

 

 

そこへ新しく カミーユ という少女がやって来ます。彼女も同じような境遇の持ち主で

 

した。ズッキーニは彼女に興味を示し二人は意気投合します。 カミーユには不思議な

 

魅力があり、彼女の存在によって孤児院は以前にも増して明るくなり楽しい生活をお

 

くっていましが、ある日カミーユの叔母が「姪を引き取る」 と孤児院に乗り込んで来

 

ます。​​​​​​

 

 

 

 

 しかし叔母の目的は扶養手当のお金だけだと知っているカミーユは 「同居するなら死

 

ぬ方がまし」 と語り、そんな彼女をみたズッキーニは 「叔母さんの所へ絶対行かせな

 

いよ」 と約束するのですが、というお話です。

 

 
 
 
それぞれの家庭環境や親の身勝手によって選択出来ない生活を強いられる子供達、
 
DVなどの被害を受けながらも、それでも親の愛を欲する彼等のピュアな姿。父親の
 
せいでアルコール依存症になってしまった育児放棄の母親にすら、「会いたい」と語
 
るズッキーニの言葉に心を打たれます。 
 
 
 
 
派手な演出や、ドラマティックな出来事はここでは起きませんし、かなり生々しい現
 
実の世界が描かれています。 ドクロ この繊細な物語を、かなりデフォルメされたクレ
 
イアニメーションで描く事によって、より子供達の心の揺らぎや、感情が、かすかな
 
目の動きや所作で強調され、人が演じる以上の感受性を観客に呼び覚ませてくれます
 
 
 
 
大人の現実世界を知らないようでいて、理解しているその絶妙なバランス感覚を子供
 
は持ち合わせているのでした。 それはシビアな身の上の話だけでなく、かなりキワ
 
ドイセッ〇スのお話もかなり具体的に語られています。 
 
 
 
 
ある意味子供らしいと言えば子供らしいのですが、「先生のオ〇ン〇ン爆発した?」 
 
と皆の前で疑問を投げかける場面などは笑っていいのか、正に大人になってしまった
 
自身を感じる瞬間でした。
 
 
 
 
自身の、傍から見たら不幸な境遇でありながらも、ズッキーニの持つ凧に象徴される
 
誰かとの一つの繋がりだけでも生きる糧になる事を痛感させられる作品で、その世界
 
が小さい子供であるからこそ、大人は子供だった自身の経験と責任を忘れてはいけな
 
いのだと考えさせられました。
 
 
 
 
キワドイ内容ではありますが、そうだからと言ってこれが大人が鑑賞する作品だとは
 
限りません。 大人が思っている以上に子供は理解しているものです。 それはご自身の
 
子供時代を思い出せば自ずと分かるかと思います。
 
 
 
 
日本語版に 銀杏BOYZの峯田和伸、麻生久美子、リリー・フランキーが吹き替えをし
 
ています。 元の声とかなりイメージが違い、聞き比べてみるのも面白いかも知れませ
 
ん。
 
 
 
 
重いテーマながら、逆に子供の無邪気さや純粋さが描かれている作品でもあり、すべ
 
ては紙一重でもあります。 観終わった時には、何の涙か分からないようなものがこ
 
み上がる不思議な映画ですので、機会があればご覧になってみて下さいませ、です。 
 
では、また次回ですよ~!  パー
 
 
 
 

 

 

エンディング曲ですが、字幕と一緒にご覧になるとまた味わい深い曲です。 音譜