能をテーマにした取材の為、吉野の天河神社を訪れた紀行ライターの浅見光彦は、変死体で発見された能の宗家・水上流長老の殺人容疑で逮捕される。 すぐに容疑が晴れ釈放された光彦はその後、水上流後継者をめぐる殺人事件に関わってゆく、、。
こちらは1991年制作の 日本映画 です。 (109分)
内田 康夫 原作の推理小説 浅見光彦シリーズの映画化作品で、角川春樹が製作し、
監督は 市川崑 という 言わずもがなの 金田一耕助シリーズコンビの作品です。
シリーズ化する前提だったようですが、角川書店のゴタゴタで本作のみとなりました
新宿高層ビル群の人混みの中、サラリーマン川島が急死。手には天河神社の御
守り「五十鈴」が握られていました。 一方、能楽の水上流では跡目相続問題が起こ
っていました。
宗家の孫である和鷹と秀美の兄妹。 秀美は兄の和鷹が継ぐべきだと考えていましたが
母親の奈津美は和鷹が腹違いの子だと秀美に打ち明け、跡目を継がさない約束で籍を
入れたのだと言います。
同じ頃、フリーのルポライター浅見光彦は取材で天川村を訪れていました。 そこで旅
館天河館の女将・敏子と知り合います。 東京へ帰った浅見は先輩の依頼で能につい
ての旅情ルポを手掛けることになり、再び天川村へ向かう事に。
ところが、偶然 林道で水上家の分家である高崎義則と偶然出会いますが、その後、高
崎は死体で発見されます。 能を取材していた浅見はこの事件に巻き込まれるのであ
2時間ドラマ等の 浅見光彦シリーズ は全く見た事がない私でして、この設定が原作の
ままなのかも分からない事はご了承下さい。
とにかく金田一耕助シリーズが大好きな私として、市川崑作品の推理小説物にある程
度の期待を抱くのは当然でありましたが映画を観終えて、ここまで過去の金田一作品
にここまで寄せて作られている事に正直驚きました。
ファンとして肯定的な感想としては、撮影はそのまま、あの おどろおどろしい陰影の
効いた画と構図。 なんと、のっけからのナレーションが石坂浩二であります。 と、こ
こまではクスっとしていた私でしたが、ここからが怒涛の金田一ワールドに突入する
のでした。
新宿での事件を担当し、天河へと訪れる警部が名前こそ違えど 加藤武!あの等々力警
部じゃありませんか その上、伝家の宝刀 「よし、わかった!」 と 胃薬吹き出し芸
まで披露するとは、、。
それだけにとどまらず、訳あり風の旅館の女将に 岸惠子。原お婆ちゃんの手毬唄が聞
こえてきそうです。 そして同じような役割で 大滝秀治、常田富士男、小林昭二 とい
うお馴染みの面々。
今回、岸田今日子さんにはそこそこの役が振り分けられていましたが、、。 他にも
旅館の女中がほぼ同じキャラ設定で、真相説明の解説に 白石加代子がやりそうな人物
を奈良岡朋子 が演じています。
多くの事柄の舞台になる水上流宗家の屋敷は 犬神佐兵衛 さん家そっくりですし、旅館
も 亀の湯と見紛う程です。 能の面は 蔵の中ですし、ある殺人などは 獄門島を思わ
せる 釣鐘 だったりと、ただただ金田一臭が充満しているのであります。
ここまで来ると確信犯で、嬉しいのか悲しいのか自分でも分からなくなってしまうの
でありました。
そのくせ本作品にインパクトがないのは、これまでの金田一作品に多く登場した、お
ぞましい血のりましましの殺人方法と、その描写が全く登場しないからでしょうか?
そして最も大きく、致命的な要因は、主人公 浅見光彦に全く魅力を感じなかった所で
す。キャラクターとしての人間味や、感情移入する要素が私には皆無でした。
原作設定がそうなのかもしれませんが、乗ってる車がジャガーって、儲けてそうにも
ないのに、、。せめてコロンボみたいなボロボロのプジョーとかだったら面白かった
かも、残念です。
唐突な財前直見の恋愛爆発と、ラストの不可解な二人の関係。 好きだった感情はいず
こへ 女心と秋の空?
ルポライターがあそこまで推理?と思いますが、
ラストの洒落た演出のおかげでちょっと納得してしまった私がいました。 お兄さん
が、、、ね~!
今回 絵面でやたら気になった事が、登場人物達の顔色です。白塗りしているんじゃな
いかと思う程に青白く映っていて、それが妙に気になってしまいました。 能が舞台
だからか?とも思いましたが、それにしても白すぎてちょっと恐怖すら感じます。
と、なにか文句ばかり言ってるように思われるかもしれませんが、金田一好きな方は
違った楽しみも出来る作品です。
結構早い段階でざっくりとした犯人と動機は分かってしまいますが、その時は 「よ
し、わかった!」 と呟きつつ、それもまた良しとして映画自体を 能 (約束の芸術)
として楽むのもありかと思いますので、機会があればご覧になってみて下さい
では、また次回ですよ~!
こちらは中森明菜バージョンの「二人静」でございます!