14歳の時、虐待を繰り返す母親を殺害したヘンリーは、相棒のオーティスとその妹ベッキーとの奇妙な共同生活を始める。 しかし、ヘンリーは次第に本能的ともいえる殺人衝動が抑えられなくなっていく。 一方ヘンリーに惹かれるベッキーの様子にオーティスは嫉妬し、そのことから3人の共同生活は思わぬ惨劇へと発展していく、、。

 

 

 

 

 

 

こちらは1986年制作の アメリカ映画 アメリカ です。 (86分)

 

1960年から1983年に逮捕されるまで、全米17州に渡り 300人以上を殺害し

 

たとされる実在の人物 ヘンリー・リー・ルーカス (2001年没)。あの ハンニバ

 

ル・レクター のモデルの一人にもなった人物の1979年頃の短い期間を映画化した

 

作品です。

 

 

 

 

ナゾの人  連続殺人鬼の伝記映画を期待して観ると、かなりがっかりする内容です。理由と

 

しては映画が始まった時点で、ヘンリーはもう既に多くの女性を殺すような状況にあ

 

り、多数の観客が興味あるであろう、何故そのような人間に形成されていったのか?

 

という過程は、劇中のヘンリーのセリフによって物語られているにとどまっているか

 

らです。

 

 

 

 

かと言ってこの作品に見所が無いかというと、そうではありません。 映画は淡々と

 

したヘンリーの日常を描いていきます。 獄中で知り合ったオーティスのアパートで

 

暮していた二人の前に、オーティスの妹 ベッキーが転がり込んで来ます。 女性を殺す

 

生活をつづけながらも、何故か彼女には紳士的に振る舞うヘンリー。 

 

 

 

 

彼女の幼い頃の父親からのDV体験を聞き、彼も自分の幼少期の体験を語ります。 

 

「母親は娼婦で、父親が居ても客を家に招き入れた。 時にはヘンリーに女装をさせ、

 

客と行為をしているのを見る事を強要し肉体的、性的虐待をくりかえしていた。 珍し

 

く彼の為にペットを飼い、ヘンリーは喜び、ペットも懐いていたが、彼が気に入って

 

いる事を母親に告げると、そのペットを射殺した。 銃  

 

 

 

 

あんたは悪魔から生まれた生き物なのだから、当然あんたは悪魔だ。お前は死ぬまで

 

私の奴隷だ!と言って育てられた。」 ( 23歳の時にヘンリーは母親の喉を刺して殺

 

害しています) このような体験から、彼は女性に対して、汚く恐ろしい存在という 

 

歪んだ感情を植え込まれたのかも知れません。

 

 

 

 

それでも ヘンリーはベッキーに、何かしらのシンパシーを感じていたのかも知れませ

 

ん。しかし映画での微妙な演出を見逃しませんでした。 兄のオーティスにけしかけら

 

れ、二人でダンスを踊る場面です。

 

 

 

 

良い感じになったベッキーは何度かヘンリーにキスをします。  しかしヘンリーは、ベ

 

ッキーに気付かれないようにキスされた口や頬をこっそりと手で拭うのでした。細か

 

い仕草ですが、心許したはずのベッキーのキスすら汚いもののように感じるヘンリー

 

幼少期の女性に対するトラウマとは、拭えない恐ろしいものなのですね、、。 滝汗

 

 

 

 

ヘンリーが殺人を犯す事の動機が一切描かれない事も、この映画の恐ろしい所です。

 

つまり、それ程彼にとっては普通の生活の延長でしかなく、食事や睡眠と同程度な行

 

動だったという事でしょう。

 

 

 

 

映画はある転機を迎えます。 部屋へ帰ると、兄のオーティスがベッキーをレイプして

 

いる現場に出くわし、とっさにオーティスを殺害してしまいます。 二人は州を出る

 

為、車に乗りモーテルへ泊る事にするのですが、翌朝、、。          DASH!  

 

 

 

 

本作ではヘンリーが逮捕されるまでは描かれてはいません。 これ以前に母親を殺害

 

した罪で逮捕された際に語った供述で、ヘンリーはこう述べています。

 

「 セッ〇スの際に相手を殺さなければ絶頂に達することができない 」 彼のした事に

 

同情は出来ませんが、彼をこういう人間に至らしめてしまった環境というものには、

 

少なからず同情してしまう部分もある気がしてなりません。

 

 

 

 

本作に出演されている俳優陣は、皆 好演されています。 特にヘンリーを演じ、本作

 

が映画デビューとなった マイケル・ルーカー の彼自身からにじみ出る狂気的な空気

 

が、この作品を支配しているのは見事です。 

 

 

 

 

グロいシーンは少なめながらも、変な緊張感が漂った作品です。 多少の 映画的脚色 

 

もありますが、実在した殺人鬼 ヘンリー・リー・ルーカスの断片をご覧になるには良

 

いかと思いますので、興味がありましたらご覧になってみて下さいませ、です。  目

 

では、また次回ですよ~!  パー