遠い南の国から運ばれてきたオレンジの木箱に入っていた不思議な生き物。すぐ倒れてしまうところから、ばったり倒れるという意味の“チェブラーシカ”と名付けられる。最初はひとりぼっちだったチェブラーシカだったが、すぐにワニのゲーナと友だちになる。
1966年にロシアの児童文学者 エドゥアルド・ウスペンスキー により発表されたシ
リーズ、「ワニのゲーナ」 に登場するキャラクター 「チェブラーシカ」。
この時点では現在の姿ではなく、クマのような、サルのような、、。 といった文章で
の抽象的な表現にとどまっていましたが、このお話を気に入った人形アニメーション
作家のロマン・カチャーノフ 監督が、アニメ化を決定。
カチャーノフ 監督と、美術監督のレオニード・シュワルツマン によって具体的に創造
されたデザインが、現在多くの人に親しまれている チェブラーシカ の形になりました
今回鑑賞したのは 制作年度がそれぞれ違う作品をまとめて収録したDVDで
4つのお話が収められています。
果物屋さんが開けたオレンジの木箱に紛れ込んで来てしまった不思議な生き物。 果物
屋さんは、寝ぼけてすぐばったりと倒れるその生き物にちなんで 「チェブラーシカ」
(ばったりたおれやさん) と名付けます。 困った果物屋さんは チェブラーシカを動
物園に連れて行きますが正体不明で入れる所が無いと言って引き取ってもらえません
一方動物園でワニとして動物園に勤めているゲーナは家に帰っても一人で淋しく
暮らしていました。 そこで 「友達募集」 の張り紙をします。 それを見たチェブラー
シカはゲーナの家を訪ね 犬を連れた女の子、クマネズミを連れた シャパクリャク、
ライオンのレフ・チャンドル達と友達になります。 この街には友達がいない人が沢
山いる事に気付いたゲーナは、チェブラーシカ達と「友達のいない人のための家」 を
ゲーナとチェブラーシカは ピオネール (少年団) に入れてもらおうとしますが断ら
れてしまいます。 なんとか入れてもらおうと鳥小屋を作りますが上手くいきません。
その時、遊び場のない子供達と知り合い、ゲーナはチェブラーシカと、子供達の広場
を作る事にします。
ゲーナとチェブラーシカは列車で旅に出ましたが、シャパクリャクのイタズラで切符
を取られ下車する羽目に。歩いて帰る二人の前に、汚れた川で遊ぶ子供達が現われま
す。 川を汚している原因が工場だと知ったゲーナは、チェブラーシカ と工場へ向か
ゲーナはチェブラーシカの家へ訪れる際に電報を送りましたが、空港にチェブラーシ
カの姿がありません。 タクシーで家へ訪れたゲーナに、チェブラーシカは、「電報
をゲーナに読んでもらおうとしたの」 と言います。 チェブラーシカが字を読めない
事を知ったゲーナは、学校に入学させようとします。
それを聞いていたシャパクリャクも学校に行こうと制服をあつらえますが、学校は修
理中で入れません。 そこで修理を急がせる為にシャパクリャクはクマネズミを連れ
修理工に喝を入れ、明日からの新学期に間に合わせるのでした。
まとめて作品を観るのは今回が初めてでしたが、改めてチェブラーシカが大好きにな
りました。 ハンドメイドの温かみと、洗練された美術。 優しい音楽と色彩。
ロマン・カチャーノフ 監督が作る パペットアニメーションの繊細な動きや物腰、洞察
力には圧倒されるばかりです。 内容も監督の人間性が大きく影響しているのでしょ
う。
ゲーナは常に温かく、他人の為になる事を無償で実行します。 ( 白シャツに 蝶ネク
タイ、赤いジャケット。帽子とパイプというお洒落さん。アコーディオンを弾き、歌
も上手。)
シャパクリャクはいたずら好きですが、好奇心がそうさせていて、劇中
「チェブラーシカをいじめるとは!」 と怒ったりする場面もあって、根はやさしい
おばあさんです。 ( こちらも黒の帽子とコンサバ風な黒の上下。しかし中のブラウス
は大きなレース付きでエレガントなお洒落上級者でございます。 )
チェブラーシカは無垢な象徴のような存在で、彼?が動き回る事で周囲に 善 の波紋が
広がって行く事になります。 反面、何処にも属せないという事で、チェブラーシカ
はいつもどことなく淋しそうで、孤独感が漂っています。 その孤独が仲間を引き寄
せる魅力でもあるのですがね。
メインの3人以外のキャラクターの全てに、目が行き届いた動きが施されていて、少
し首が傾くだけで、キャラクターの気持ちが伝わってくるような仕上がりで、やさしい空気に
包まれているような時間を体験出来る作品です。
ゲーナが昼間 ワニ として動物園に勤め、閉園すると服を着て自宅へ帰るという設定
を、何処かで見たな~と思っていたら、そう あの 高畑 勲 と 宮﨑 駿 の 「パンダコパ
ンダ」 がその設定でしたね。 きっとこちらの作品のオマージュだったのでしょう。
ファンタジーの作家 日本では 宮﨑 駿。 アメリカでは ウォルト・ディズニー。 そ
してロシアでは、この ロマン・カチャーノフ 監督となるのでしょうね。
いまだに親しまれているこのロシア生まれの チェブラーシカ。 まだ動いているチェブ
ラーシカを観ていらしゃらない、ご覧になった事がない、という方は、この機会にで
もご覧になってみて下さいませ、です。
本作で最も多く登場する言葉でお別れしたいと思います スパシーバ(ありがとう)
では、また次回ですよ~!
DVDの中には登場しなかったチェブラーシカの歌。ちょっと残念でした。