高層マンションの谷間にポツンと取り残されたように建つ古びた平屋の一軒家。 そこに治と妻・信代、息子・祥太、信代の妹・亜紀、そして家の持ち主である母・初枝の5人が暮らしていた。 治は怠け者で甲斐性なし。彼の日雇いの稼ぎは当てにならず、一家の生活は初枝の年金に支えられていた。 そして足りない分は家族ぐるみで万引きなどの軽犯罪を重ねて補っていた。 そんなある日、治は団地の廊下で寒さに震えている女の子を見つけ、彼女を家に連れ帰る。 ゆりと名乗るその女の子は、両親のともに戻ることなく、そのまま治たちと暮らし始めるのだったが、、。

 

 

 

 

 

 

こちらは2018年制作の 日本映画 日本 です。 (120分)

 

第71回カンヌ国際映画祭で最高賞である パルム・ドール を獲得した事で話題となり

 

ました 是枝裕和 監督による、お馴染み 「 ある日本の家族 」 の物語であります 

 

 

 

 

ナゾの人  こちらのブログでもご紹介した 「ワンダフルライフ」 「歩いても 歩いても」 

 

他、是枝監督の作品を数本観ている私ですが、「そして父になる」 「海街diary」 の

 

有名作二本には何故か?未だに触手が動かない偏食家の私なのでしたが、樹木希林、

 

安藤サクラ 目当てで レンタルしてみました。

 

 

 

 

タイトルのまんま、万引きして生計を立てる家族のお話。 かと思いきや 映画を観た後

 

では深い、様々な意味を含んだタイトルになっている事に気付かされました。 ウインク

 

母親 初枝の家と、年金が目当てで同居している息子の 治 と妻の 信代。 他に 亜紀

 

という年頃の娘と、祥太 という小学生位の少年、繋がりが不明な5人が、初枝の昭和

 

レトロな家で暮らしていましたが、ある冬の日、治は近所の団地の1階にあるバルコニ

 

ー状の外廊下で、ひとりの幼い女の子 ゆり が震えているのを見つけ、見かねて連れて

 

来てしまいます。

 

 

 

 

ゆりの身体に虐待を疑う傷を見つけた信代は 「誘拐になる」 という言葉に 「脅迫も

 

身代金の要求もしていないからこれは誘拐ではなく保護だ」 と主張し、りん という新

 

しい名前を付けて家族の一員としてひっそりと暮らす事になります。 徐々に家族に慣

 

れ、みんなでワイワイご飯を食べ、みんなで花火の音を聞き、みんなで海へ行ったり

 

して、血は繋がっていなくても、その姿は正に 「家族」 そのものでした。しかし、そ

 

んな幸せな 偽家族 にはやはり終りが訪れるのでした、、。  打ち上げ花火

 

 

 

 

これまで是枝監督が描いてきた家族の繋がりと、社会の底辺の問題を集約したような

 

作品でありました。 偽家族それぞれの個人の問題や、視点が多層的に語られる事で

 

内容的にも深みが出て、生きる事、生活するという事、そして家族という共同体の真

 

の意味や必要性を考えさせられる映画になっていました。  

 

 

 

 

治と信代の夫婦がとった行動をとがめられる場面で、信代が 「誰かが捨てたものを

 

拾った、捨てた人は他にいるんじゃないんですか?」 「捨てたんじゃないんです。

 

捨ててあったのを拾ったんです。親は選べないんです。幸せだったんです」 という言

 

葉には不思議な説得力があり、胸を打つものがありました。 演じる 安藤サクラの演

 

技も見事でした。  ベル

 

 

 

 

是枝監督作の中では 「誰も知らない」 に最も近い作品だと思いましたが、是枝作品に

 

時折みられる、というか特徴というか、「不自然な自然さ」 を感じる演出も多少感じ

 

る部分もあり、現実的なリアリティと、映画的なリアリティの 境目 の難しさを感じる

 

所でもありますね。

 

 

 

 

個人的に どうでもいい 所で気になったのが、祥太がりんをかばう目的で、目をひく

 

万引きをして逃げる場面。 スーパーの店員、あそこまで追いかけて来る~はてなマーク。 ランニング 

 

それも挟みうちって、、。滝汗 本当どうでもいい気になる部分のご紹介でした。ガーン

 

安藤サクラ、樹木希林を始め、皆さん素晴らしく、祥太、りん も見事な存在感があり

 

ました。

 

 

 

 

そうそう、細野晴臣さんが音楽を担当している事も鑑賞する重要な要素ですぞ~   音譜

 

ただ、本作は確かに素敵な映画でありますが、本当は これ位 の作品が多数製作され

 

てもおかしくないのでは? とも思ってしまう貪欲な私。  こういったミニマムな世界

 

で人間を描くのは、実は日本映画の得意とする所。  溝口、小津、黒澤 と世界的に誇

 

れる映像作家が居た国なのですから。 こういった作品を若い世代が製作出来る環境

 

と、それを 見る目 を持った観客が増える事を切に願うばかりです。

 

 

 

 

劇中で、信代の言う経済的に貧しくても 「おつりがくる」 生活を過ごしたい私でした

 

そんな訳で、小津とは真逆の家族の物語。 しかし、これこそ現在の価値観と環境を

 

踏まえた家族を描いた物語である事は間違いない作品で、現在観るべき日本映画です

 

機会があれば、CMの入るTV放送ではない形で、ご覧になってみて下さいです。

 

では、また次回ですよ~!  パー