コマンチ族に弟一家を殺され、二人の姪をさらわれた男イーサン。以来、彼はコマンチ族に対して憎悪を燃やす復讐鬼となった。そして、さらわれた姪たちを求めて、彼は何年も捜索を続けていたのだった。だがやっと探し当てた姪のデビーは、インディアンの言葉を操り、イーサンから逃れようとする。完全なコマンチ族となってしまったデビーに、イーサンは銃を向けるが、、。

 

 

 

 

こちらは1956年制作の アメリカ映画 アメリカ です。 (119分)

 

「駅馬車」 「怒りの葡萄」 「荒野の決闘」 の名匠 ジョン・フォード による西部劇

 

でございます。 アメリカ国立フィルム登録簿に登録された作品で、2008年にアメ

 

リカ映画協会によって「最も偉大な西部劇映画第1位」に選出された作品でもありま

 

す。スピルバーグやスコセッシといった多大な映画監督に愛されている本作を、かな

 

りぶりに再鑑賞してみました。  目

 

 

 

 

ナゾの人  映画は 南北戦争が終わって3年後の1868年のテキサス。 南軍として戦争に

 

参加していた イーサンが数年ぶりに故郷の兄の家を訪れる場面から始まります。 兄夫

 

婦と子供の姉妹、そして以前イーサンが成り行きで助けた インディアンと白人の混血

 

の マーティンが出迎えます。 ある日、他の牧場でインディアンのコマンチ族による牛

 

の略奪が起こり、イーサンとマーティンが行方を追いに出ますが、それはコマンチ族

 

の罠でした。 気付いたイーサン達は兄の家に戻りますが、時既に遅し。 家は焼かれ、

 

夫婦は殺害。 姉妹はさらわれていました。  イーサンは復讐と姉妹の奪還の為、マー

 

ティンと共に旅立つのでありました、、。

 

 

 

 

大筋のプロットは非常にシンプルでありますが、その中に家族愛、責任、マイノリテ

 

ィや差別といった問題が描かれていきます。

 

ジョン・ウェイン 演じるイーサンは、現代に通じるアンチヒーローの原型のように執

 

拗にインディアンという民族に対して、純粋な差別意識をもっていて、旅に同行する

 

マーティンですら快く思っておらず、時に 「お前は家族ではない」 といった言葉まで

 

発します。 

 

 

 

 

時に狂気を感じる程のイーサンは、5年もの間 コマンチ族を追い続けます。 「ノー・

 

カントリー」 のシガーばりの恐ろしさですな、、。 

 

ある種バディムービーの形をとり進んで行きますが、イーサンとマーティンの距離は

 

最後まで微妙な距離感があるように感じました。 ラストにおけるイーサンの行動も、

 

他民族に対しての理解というよりも、家族としての責任と愛情からの行動であって、

 

インディアンに対しての理解や融和では無いように思えてなりませんでした。 真顔

 

 

 

 

雄大な西部のロケーションの見事さは、正に素晴らしいの一言です。 ただ、時代でし

 

ょうが、ロケーションと屋外設定のスタジオ撮影が素人目にも明らかな所が、少々残念に

 

感じました。

 

 

 

 

そして インディアン という先住民の扱いが、かなり白人目線の 「悪」 という描き方

 

に、観ているこちらに居心地の悪さを感じさせてしまいます。 ただ、それも時代でエ

 

ンターテインメント として割り切って観るのが正解なのかも知れません。 本作を観

 

ると、銃社会アメリカという国の根深さも感じます。 身内の死は大きく、他民族の死

 

は書き割り のような扱いなのでございます、、。  ドンッ 銃

 

 

 

 

それでもユーモラスな場面や、人間的な描写。 「男らしさとは」、といった要素も含

 

まれた堂々とした映画でございます。  

 

個人的に印象深かったのが、オープニングの暗い部屋の扉が開き、雄大なモニュメン

 

トバレーが映り、遥か遠くからイーサンが家に向かって来る場面と、エンディングで

 

同じ構図でイーサン達が戻ってくる場面。 

 

 

 

 

家族は家に入って行きますが、イーサンだけが明るい外に残ったまま、その風の吹く

 

中 孤独な後ろ姿で西部の荒野へ歩いて行くイーサン。 そして家の扉が静かに閉じると

 

いうリンクされた場面。 ここでイーサンという人物の孤独感や疎外感が染みて強調

 

されます。 

 

 

 

 

結局イーサンは 家族にすら属せなかった孤独な男 でした。 かなり悲しみの哀愁が残

 

るエンディングとなっています。 笑い泣き  南北戦争に負け、彷徨ったであろうイーサ

 

ンの姿は、嫌でも後の 「タクシー・ドライバー」 の トラヴィスの原型にも見えます

 

 

 

 

あえて嫌な西部男の側面を代弁したような ジョン・ウェインの演技も見所であります

 

時間経過や人物の細かな描写等は、ザックリと大まかに省かれていてちょっと戸惑い

 

ますが、ジョン・フォードの ダイナミックな西部の叙事詩 の代表作に位置付けされて

 

いる本作。

 

 

 

 

雄大な西部の原風景をバックに、時代に取り残された男の哀愁の漂う物語です。

 

興味が湧きましたら一度ご覧になってみて下さいませ、です。  馬

 

では、また次回ですよ~!  パー