結婚するために南米から帰った貴族トニーが、バレットという召使いを雇った。完璧な執事ぶりを示すバレットに、トニーは次第にすべてを任すようになる。しかし婚約者のスーザンは、バレットに不信感を抱くのだったが、、。
こちらは1963年制作の イギリス映画 です。(112分)
「ベニスに死す」 や 「地獄に堕ちた勇者ども」 の ダーク・ボガード主演によるサス
ペンス映画の秀作で、英国の階級社会を痛烈に批判した作品でもあります。 日常生活
で何もできない主人が、室内装飾から料理、洗濯、掃除と何でもできる召使に家も人
生も乗っ取られてしまうという話です。
貴族出身の裕福な青年トニーのもとに紹介所からの斡旋で、バレット という男
が、召使いとして訪れます。 バレットは、その仕事ぶりが、すべて巧みで水際立って
いて、トニーには申し分のない召使いでしたが、トニーのフィアンセの スーザンは、
その彼に不信感を抱き、ことごとく注文をつけます。 バレットは、そんなスーザンの
意見を完全に無視し、トニーとスーザンが不和になるよう仕向けます。
トニーと家を支配するためにスーザンとバレットは、なにかと争い、スーザンはバレ
ットを首にすべきだとトニーに主張しますが、バレットに満足しているトニーは聞き
入れません。 トニーの性格をいちはやくみぬいたバレットは、巧みに トニーをあや
つり、彼にとってバレットはなくてはならない存在になっていました。 さらにバレッ
トは自分の恋人ベラを妹と偽り家政婦として住みこませ、彼女にトニーを誘惑させま
す。 最初の罠に落ちるトニー しかしバレットの思惑はその先にあったのでした、。
裕福な青年トニーが、身分の下であるバレットに徐々に支配され、罠にハマって行く
過程は、正にサスペンスの醍醐味で、脚本の巧みさを感じます。 それを演じる
ボガードの立ち居振る舞いのカッコ良さ。 くわえ煙草は男のダンディズムなのであり
ます。 (嫌煙家の皆様に怒られるでしょうな~) そしてトニーを演じる ジェーム
ズ・フォックス との画面上での相性はバッチリでございます。
そのトニーの恋人役の女優さんが、個人的に微妙なルックスで、トニーには不釣り合
いに感じておりましたら、やはりそうなりますよね~。 もう少し可憐な見た目の
女性だったら応援したのに、、、ってすいません。 (これまた、、)
ほぼトニーの邸宅内でお話が進むのですが、映像上飽きさせないように見事な撮影で
魅せてくれます。 明暗を最大限に活用したコントラスト、人物の影すらも出演者の
ように写す見せ方や、階段、鏡、花 といったアイテムで心理を描写する画作り。 中で
もトニーがバレットの女に誘惑される場面でのソファーの映し方には、ため息すら出
ます。
劇中で掛けるレコードや、バーで聞こえる音楽は様々なジャンルが流れますが、どれ
も素敵なチョイスで映像に見事にマッチしているのでありました。
映画中盤、男同士の生活になる瞬間。 ボーイズラブ展開もあるのか?と思いました
が、その辺の描写は無かったのは少々残念でしたが ラストでの混沌と、デカ
ダン的な雰囲気は、後のボガードの 「地獄に堕ちた勇者ども」 をも連想させるもので
した
最終的な バレットの目的すらも 謎 という所が、よりこの作品を魅力的にしておりま
す。この映画を 英国の階級社会を批判した作品 と見る事も出来ますが、一人の男の
アイデンティティが乗っ取られていくサマを見る 心理劇であり、サスペンス作品とし
ても十分楽しめる作品になっています。
個人的にはかなりの傑作だと思いましたです。 とにかく撮影は綺麗ですし、当時のイ
ギリスの街並み、車、インテリア等他にも見る所がいっぱいの映画です。
そんな訳で、機会があれば是非ご覧になってみて下さいませです。
では、また次回ですよ~!
劇中で流れる音楽の中の一曲です。 甘い歌声をどうぞです この艶っぽさ