「さらば冬のかもめ」などで知られるハル・アシュビー監督の初期の傑作。 アメリカン・フィルム・インスティチュート(AFI)が選出する「アメリカ喜劇映画ベスト100」で45位にランクインしている作品。

 


 

 

 

 

 

           -  HAROLD AND MAUDE  -  監督 ハル・アシュビー

 

 出演 ルース・ゴードン 、バッド・コート、ビビアン・ピックレス、

                                                                           シリル・キューザック 他

 

こちらは1971年制作の アメリカ映画 アメリカ です (92分)

 

 

 

 

  裕福な家庭に生まれた19歳のハロルドは、母親の前で様々なバリエーションの狂言自殺を演じるという悪戯を趣味にしていました。 過保護な母親から高級車のジャガーをプレゼントされたハロルドは、それをわざわざ霊柩車に改造し、見知らぬ他人の葬儀に参列するのが日課でもありました。 いつものように他人の葬式を傍観していたハロルドは、隣席の老婦人に声をかけられます。 それは彼にとって運命的な出会いでした。 その老婦人、モードは79歳で、ハロルドと同じように他人の葬式に忍び込むのが趣味だという天衣無縫なモードに、ハロルドはいつしか恋心を抱くようになりますが、、

 

 

 

 

アメリカ公開当時は、大したヒットにもならなかった作品ですが、公開後一部のマニアからジワジワと人気が広まり、カルト映画となっている作品でございます。裕福で広大な邸宅に母親と二人で住む ハロルド は19歳。 彼は過去の経験から母親の気を引こうと、度々 狂言自殺 をしてみせます。 冒頭では素人とは思えない程のクオリティの高い 首つり自殺 を演じてみせます。 そこへ母親が通りかかり、息子を一目見ます。 しかし母親は無言のノーリアクションで電話をかけ始めます。 警察に電話? と思って見ていると、なんと母親の電話相手は知人でした。 そして何気ないお喋りを始めるのです。 天井からぶら下がっている息子の目の前で、 母親はそのまま電話を切ると、 「あ、ハロルド、ディナーは8時からよ」 と告げて、さっさと立ち去ってしまいます。

 

 

 

 

リアクションの無さに溜息をつくハロルドでした、、、どうやら度々彼がやっているイタズラなのでした。 他にもハロルドには趣味?があって、それは他人のお葬式に参列する事。 そこで何度か目にした79歳の モード という女性と知り合う事になります。 79歳とは思えないほどアナーキーなモードは、他人の車やバイクを盗み (拝借) 無免許で危険運転をしていたり、知り合いの作家のヌードモデルをしたりと破天荒なお婆さんでした。ガラクタに囲まれた不思議な家で暮らすモードに、ハロルドは興味を抱きます。 

 

 

 

 

今まで狭い世界に閉じこもっていた自分とは真逆の、自由な生き方を実行しているモード。  部屋でピアノを弾くモードに 「何か楽器は出来ない?」 と聞かれ、「何も、、」 と答えるハロルドに彼女はバンジョーを与えます 。 彼女のバイタリティー溢れる人間性に強く惹かれ、モードと一緒に様々な体験をする事で、ハロルドの世界はどんどん広がって行きます。 

 

 

 

 

個人的に印象深い場面が二人でマーガレットの咲き乱れる丘での会話です。 ハロルドが花を見て言います 「皆同じ形をしてる」。モードが言います 「でも実際は違う、小さいのもあれば 太いのも、伸びる方向も左右まちまち、 花びらがないものだって、よく観察すると 全部違うよ、いいこと、世の中の不幸は この花のような人がもたらす 他人と同様に扱われても 何とも思わない人々が、、、」 どこかの歌詞で引用?されているようなその言葉。 

 

 

 

 

カメラは二人の引きの画になります そこには花と同じように緑の芝生の上に真っ白く立った、無数の戦死者のお墓が、、、二人の居た場所は、戦没者の墓地だったのでした。(当時はまだベトナム戦争中でした) モードは欧州からの移民のようで、悲しい過去があり、個人レベルで体制や、規則というものに反抗して生きている女性でした。

 

 

 

 

家でのハロルドしか知らない母親は、度々ハロルドの彼女候補を家に連れて来ますが、いつものパフォーマンスを披露して、それを拒みます。 なんと、ハロルドの心はもうモードに夢中だったのです。 ある日のデート、海辺でモードと語っている時、彼女の腕に謎の数字が彫られているのを見つけます。  ほんの一瞬のカットで、それについての会話はありませんし、映画でも語られません。 その刻まれた数字の意味は一目瞭然でしたそう、モードは 地獄 からの サバイバー だったのです。 ハーケンクロイツ

 

 

 

 

その辛い過去の呪縛から脱却しようと自由に振る舞う現在のモードの行動を、こちらも自然と共感して理解する事になります。 そしてある日、遂に母親に 「モードという女性と結婚したい」 と打ち明けますが、写真を見た母親からは、「あなた 本気で言ってるの?」 という言葉が返って来るだけでした。 まぁ今回は当然のリアクションでしたね。

 

 


 

 

ハロルドは賛成されようが、反対されようが、気にも留めていないように部屋を出ます モードが80歳の誕生日の日、ハロルドはモードの部屋を飾り付け、お祝いをする事に、あの日に咲いていたマーガレットを一輪渡し、次に大事なプレゼントを渡そうとした時、それをわざと遮るように、モードが一言 ハロルドに告白します。  ここから特に好きな映画的演出だったのですが、セリフは全くなくなり 巧みな編集と、美しい映像 キャット・スティーヴンス の音楽と、車のエンジン音だけが使われ、そのままエンディングまでセリフなし状態で終わります、、、 ラストのカットは、ハロルドの世界が無限に広がり、大人への階段を登り始め、彼自身の人生の音楽を奏で始めたという事なのでしょうね   音譜

 

 

 

 

基本コメディ映画という事で、ぶっ飛んだ部分もありますが、純粋な恋愛映画でもあります。(ただ、一点だけ、、、という所もありますが) 見方によっては色々と考える事も出来る奥深い作品でした。この映画の監督 ハル・アシュビー には 「さらば冬のかもめ」 や 「チャンス」 等、大好きな作品もあります。カルト映画 と言われると一部のマニアだけに好まれるクセが強い 作品だと思われがちですが、シンプルに楽しめる映画だと思いますので、見かけたら是非ご覧になってみて下さいませ、です。

 

では、また次回ですよ~! パー

 

 

 

 

 

 

 

キャット・スティーヴンス の曲に乗せた、ハロルドとモード のデートシーンです