1989年12月6日、モントリオール理工科大学に通う女子学生バレリーと友人の男子学生ジャン=フランソワは、いつも通りの1日を送っていた。しかし突然、1人の男子学生がライフル銃を携えて構内に乱入し、女子学生だけを狙って次々と発砲を開始 犯人は14人もの女子学生を殺害し、自らも命を断つ バレリーは重傷を負ったものの何とか生還し、ジャン=フランソワは負傷した女子学生を救う。

 

 

 

 

 

 

こちらは2009年の カナダ映画 です カナダ (77分)

 

1989年 カナダケベック州の モントリオール理工科大学 で実際に起きた虐殺事件

 

を基に脚色された作品です (ですが、被害者の人数、校内での行動、動機とされるも

 

のは事実に基づいたものになっています) それを ドゥニ・ヴィルヌーヴ 監督が共同

 

脚本も兼ねて製作され 全編モノクロで撮影されています スタッズ

 

 

 

 

映画 映画は大学校内で、学生達がコピーを慌ただしく取る場面から始まります そこ

 

へ一発の銃声が響き  弾丸  辺りは一瞬で騒然となります

 

カットが変わり、一人の男子大学生が自室で、決意書とも遺書ともいえる手紙を書き

 

出します メモ その内容は フェミニストや女性達への批判で綴られたものでした 何故

 

このような過激で、偏った 思想に彼がなったのかは説明されませんが、彼の部屋の雰

 

囲気や行動で他とは異なる わずかな違和感を観客に感じさせるセンスは流石でありま

 

す(実際の人物は、子供時代に父親から虐待を受け、徹底した女性蔑視の思想を植え

 

付けられたようです)

 

 

 

 

その事件の起きる前、女子大生の バレリーは 航空関係の面接を受けていました しか

 

し面接官からは女性であるがゆえの懸念を言われ、男性社会である世界を実感します

 

男から見る世界と、女性から見た世界の違いを対比させた上手い場面です 男子トイレ 女子トイレ

 

再び事件当日に戻ります 普段通りに学生で賑わう校内、ライフルを忍ばせた青年が

 

教室に入って来ます そこで行われていた授業は エントロピー についての講義でした 

 

 

 

 

このエントロピー は映画とシンクロしていると思うので、少し書きますが よく例えら

 

れるのが、コーヒーにミルク (エントロピー) を垂らします coffee 垂らした直後は目

 

で見て分かるぐらい くっきりと分かれています しかし時間が経つにつれ混ざってい

 

き、やがては区別が付かなくなります これがエントロピーの増大です ( と言っても

 

私自身もよく理解出来てませんが)

 

 

 

 

事件を起こす青年の中にある憎悪と、反フェミニズムの増大 校内に入って来た青年

 

によって、パニックと被害者がこれまた増大して行くさまを、この講義場面で印象付

 

けています。教室に入って来た青年は、男女を分け 男子のみを外に出し、残った女子

 

をライフルで射殺します その中にはバレリーも居ましたが、傷を負いながらも生き

 

ていました 僕の血。 青年は教室を出て、校内を彷徨い 女性のみを狙ってライフルを乱射

 

して回り、校内は撃たれ倒れる生徒と、逃げまどう生徒達で混乱してゆくのでした

 

 

 

 

私が大変好きな作品 「エレファント」 と同じ、実話ベースの銃乱射事件の映画化作品

 

ですが、両作共かなり印象の違う作品になっています 両作共セリフの少ない作品で

 

はありますが、今作の特徴的なモノクロ画面によって、何故かリアリティを増して主

 

人公の狂気と孤独が画面から伝わって来るのです そして音の効果です 無音の室内

 

に突然響く 銃声の怖さ追い詰められ、隠れる学生達の心音まで聞こえて来そうな張り

 

つめた空気感 氷山

 

 

 

 

それでいて、大変に美しい撮影と構図 映画の内容に反した美しさです 事件前に映

 

される絵画 「ゲルニカ」 がこれまた印象的に脳裏に焼き付きます。最後の犠牲者とな

 

る女生徒を撃ち、その傍らで自分も頭を撃ち 自決します この映画で最も印象深いシ

 

ーンになりますが、先程自分が殺した女生徒の横に倒れる青年 二人の身体から流れ

 

出た 血 が一つに混じりあいます したたる血はぁと血 皮肉で、深い意味を持った彼の最後になりま

 

した 映画のラストショットは、被害者が担架から見た光景でしょうか? 天地が反

 

転した照明が延々と続く廊下のショットで終わります 

 

 

 

 

そしてエンドロール前に、この事件で亡くなった犠牲者の名前が一人一人映されます 

 

全て女性で、亡くなった方が14人  負傷者も14人 という悲劇的な事件でありまし

 

た 天使の羽黄色(左)ホーリークロス天使の羽黄色(右) 以前、ご紹介した 「プライマー」 と、偶然同じ上映時間でしたが、作品

 

によって 体感時間が違う事ってあるものだと、今更ながら実感する私でありました

 

レンタル店で見かけたら、是非手にとってみて下さいませです。

 

では、また次回ですよ~! パー