第65回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門にてグランプリを受賞。 妻の死から立ち直れない父と学校で凄惨ないじめを受ける娘の心のすれ違いが引き起こす悲劇を描いた珠玉の物語。

 

 

 

 

 

  

   -  DESPUES DE LUCIA/AFTER LUCIA  - 監督 脚本 ミシェル・フランコ 

 

 出演 テッサ・イア、エルナン・メンドーサ、ゴンサロ・ヴェガ、

                                                                             フランシスコ・ルエダ 他

 

こちらは2012年の メキシコ 映画 国旗 です。(103分)

 

 

 

 

  愛する母ルシアを交通事故で失い、悲しみに暮れる娘のアレハンドラと父のロベルト。 2人は新天地でやり直そうとメキシコ・シティに移り住む。しかしロベルトは深い喪失感を抱えたまま、一向に立ち直れずにいた。 一方アレハンドラは新しい学校でクラスメイトと打ち解けていくが、ひとつの事件をきっかけに激しいイジメの対象になってしまう。どんどんとエスカレートしていくイジメにも、たった一人で耐え忍ぶアレハンドラ。 だが、心にぽっかりと穴の開いてしまったロベルトは、そんな娘の異変に気づくことができなかった、、。

 

 

 

 

以前ご紹介した 「或る終焉」 の ミチェル フランコ 監督の、一つ前の作品になりまして脚本、編集、製作も兼任した映画でございます。 この年の カンヌ国際映画祭の ある視点 部門で 監督二作目にして、グランプリを受賞した作品です。驚く事に、この後作られた 「或る終焉」 と同じアングルのショットから映画は始まります 車の後部座席から捉えたショット、どうやらこの車は自動車修理工場で修理され終えたようで、説明を聞き終わった父親である ロベルト が乗り込んできます。

 

 


 

そして工場を出発し、公道を走り始めますが、いきなり車を止めて 鍵も置いたまま何処かへ歩いて行ってしまいます。  ここまでをワンカットで撮られていて、やはりこの監督さんは既にこの作品からもセリフでの説明を省き、画面に映されている物と、登場人物の言葉の断片を観ているこちらが、ひも解いていく必要がある語り口の作風です。  そして当然のように状況や心情を表現する音楽もやはり存在しないリアリティの徹底ぶりです。

 

 

 

 

妻を交通事故で亡くし、再出発の為 高校生の娘と新天地に越して来ます。 がらんとした新たらしい家の中は、まるで二人の心を象徴しているようです。 親子仲は良いのですが、互いに母親の死という深い痛みを気遣い、心の奥に蓋をして過ごすような生活。 父親はシェフとして仕事を始めますが、まだ心の傷が癒えないのか、すぐに辞めてしまいます。 

 

 

 

 

娘の アレハンドラ は何とか学校に馴染み、親しい友達グループも出来ます。しかし、あるパーティーでグループの人気者 ホセ と関係をもちますが、それをこっそりスマホで撮っていたホセ。 その動画が誰かから漏れ、学校中に知れ渡ってしまいます。その日から いじめ を受ける日々が始まってしまいます。 

 

 

 

 

ここでの イジメ の行為がとても陰湿で、男子からはトイレで襲われそうになるは、ホセ を好きだった女子には、仲間と思わせておいて部屋に呼び出し、殴るは、髪をハサミで切られるはと、酷い仕打ちにあいます。 学校でも アレハンドラ の誕生日と知ると、仲の良かった男女グループが 泥で作ったケーキを無理矢理食べさせられてしまいます。しかし アレハンドラ は父親に心配かけまいと黙って耐え忍びます。 急に髪が短くなった娘を見た父親は 「髪を切ったのか?」と聞くだけでした。 

 

 

 

 

そんなある日、臨海学校があり いじめられると分っていても、父親の手前か、覚悟を決めたのか アレハンドラ は参加しますが、やはり いじめられトイレに閉じ込められます。扉の外ではバカ騒ぎのパーティーが繰り広げられていて、そのどさくさでトイレに入って来た男に彼女はレ〇プまでされてしまいます。  

 

 

 

 

パーティーは海岸に移り、そろそろお開きとなります。 焚火をおしっこで消すついで、とばかりに アレハンドラ に浴びせ始め、汚いからと海へと連れて行きます。 気付くと海に入ったはずの アレハンドラ の姿が見えません。 慌てる仲間達、、。 

 

 

 

 

翌日、警察を巻き込んでの捜索が始まりますが彼女を見つけられません。 アレハンドラ は別の海岸に泳ぎ着き、母親と暮らしていた家に辿り着いていたのですが、父親に真相と心配をかけるのをためらってか、連絡もせず 一人ひっそりと潜んでいるのでした

 

 

 

 

そんな中、ロベルトに誰かからDVDが届けられ、初めて事の真相を知る事になります。ロベルト は警察に生徒を尋問するよう求めますが、未成年相手では出来ないと言われ断られてしまいます。 妻を失い、その上、娘までも消えてしまった。 男として、父親として守ってあげられなかったと思い込んでしまったロベルトは父親としてある行動を起こすのでありました、、、

 

 

 

 

バイオレンスやグロ等、 映画では見慣れているのですが、この作品中の いじめは妙に生々しい痛みを感じるもので、映画と分かっていながらも、かなり心が痛むシーンになっています。 決して映画的にグロイというものでは無い分、とても冷ややかなカメラで見せられる為に、こちらまでまるで イジメ に加担しているような、嫌~な気分にさせられてしまいます。 

 

 

 

 

ある意味、観客をイジメの共犯者側として体感させる事で、その行為がいかに残酷で愚かなものなのかを訴えているようにも思え、大抵のグロ映画が、如何にファンタジーであるのかを感じさせてくれるリアリティがある作品です。


 

 

 

ラストは観る方によって様々でしょうが、私は感心してしまいました ここもエンディングまでワンカットで撮影されております その上、力む事なく ひょうひょうとしていて、淡々と進む時間、そしてカット! 私は好きでした ロベルト の気持ち、私もそうしたいです。 互いに親子であれ、相手を気遣う余り、心配させまいとする行動が、時に相手を盲目にさせてしまうという皮肉が切なく、心に痛い映画でありました。 

 

 

 

 

今作もエンドロールに音楽は流れず、波の音が 静かに引いては寄せて消えてゆきました。 そう言った意味では 「或る終焉」 と構成は似ています。 というか、あえて でしょうね。 そんな余韻の残る作品でありました もし、機会があれば一度ご覧になってみて下さいませ、です。

 

では、また次回ですよ~! パー