1940年代アメリカに実在した殺人鬼カップル、マーサ・ベックとレイモンド・フェルナンデスを題材にしたクライムドラマ。

 

 

 

 

 

 

         -  THE HONEYMOON KILLERS  - 監督 脚本 レナード・カッスル

 

 出演 シャーリー・ストーラー、トニー・ロビアンコ、ドーサ・ダックワース 他

 

こちらは1970年に制作された アメリカ アメリカ 映画です。(115分)

 

 

 

 

  年老いた母親と暮らす巨漢の看護師マーサは、新聞広告の恋人募集欄「ロンリー・ハート」で知り合った男性レイに惹かれます。 しかし彼の正体は、寂しい独身女性を狙う結婚詐欺師だったのです。 全てを捨ててレイと生きることを選んだマーサは、彼の共犯者として結婚詐欺に加担するようになります。 しかし次第に相手女性たちへの嫉妬心を抑えきれなくなり、殺人まで犯すようになっていく、、。

 

 

 

 

1940年代後半、ロンリー・ハーツ・クラブ という 恋人仲介クラブ で出会った男女、レイモンド フェルナンデス と マーサ ベック が3年間の間に独身女性や未亡人 20数名を殺し、逃亡を続けたカップルの実話に基づいた映画化作品です。当初は、まだブレイクする前の マーティン スコセッシ が監督する予定でしたが、製作者との意見の違いで降板 急遽、脚本を担当していた レナード カッスル が初監督する事になったという映画であります (スコセッシ版も見て観たかったですね)映画はテロップの字幕から始まります、 「全ては新聞報道と法廷記録に基づく これは実話である」 と表記され物語は始まって行きます。 アメリカ映画というよりは、フランス映画のような香りが漂う画面です。

 

 

 

 

まず看護婦長として働く マーサ の日常が描かれていきますが、看護師の衣装の時はまだ良いのですが、普段着になった時の マーサ の存在感がなかなか強烈です。アラサーで肥満、性格的にもやや問題がありそうで、彼氏が居た事も無いという マーサ を一瞬見ただけで納得させてしまいます。 このキャスティングの見事さ。そんな彼女を心配して恋人仲介の ロンリー・ハーツ・クラブ を勧める友人、試しに出してみると一人の男から返信が来ます。これが レイモンド だったのですが、マーサは レイモンドと一夜を共にした事で、世界の全てがレイモンド一色になってしまいます。

 

 

 

 

そして二人の時間を共有した事で盲目になった彼女は、彼が 結婚詐欺師であるという事まで受け止めてしまいます。 レイモンドはお金も無い彼女を疎ましく思うのですが、それを感じた マーサは自殺未遂を起こして気を引き、レイモンドを彼女から逃れられない状態にした上で、マーサ自身も 詐欺行為に加担するようになって行きます。この時点で既に レイモンドもマーサが居なくてはならない運命共存体のような関係性になってしまっていました。 但し、一時も離れていられない マーサは、姉と偽り レイモンドの仕事場 (独り者の女性宅)にまで同席するようになり、目の前でレイモンド と 被害女性が親しくする事に 口出ししたり、激しく嫉妬をしたりと、仕事が上手く行かなくなるどころか、その独占欲から殺人まで起こしてしまう事になります。 

 

 

 

 

最初は睡眠薬を使ったりという手口だったのが金づちや絞殺、終いには子持ちの女性と、子供にまで手にかける事になってしまいます。 それも全ては、二人で幸せに暮らす家を手にしたいがためなのですが、、、家 映画では、4人の殺人が描かれ、自ら警察に電話をかけての逮捕という形になっています。 それは マーサが レイモンドに対して仕事とはいえ、他の女性と仲良くしている事すら見ていられない程の 嫉妬 と 独占欲 ゆえの行動で、他の女と居るくらいなら、刑務所に入った方がましだという、純粋な偏愛からうまれる動機からでした。エンディングでは法廷に初めて出向く マーサに、同じく投獄されている レイモンドから手紙が渡され、マーサがそれを読むシーンで幕を閉じます。 

 

 

 

 

「親愛なるマーサ 君への愛を世界に知らせたい いずれ2人とも死ぬ やっと2人になれる  俺達がどうなろうとこれだけは言っておく 俺が本当に愛した女はお前だけだったこの先愛する女もお前だけ 墓の向こうで会おう レイより」 メール この手紙を一人で読む マーサ の静かな引きの画で映画は終ります。1951年3月8日 二人は電気椅子で処刑されました。この作品はスキャンダラスでありながら、マーサ と レイモンド という二人の男女の出会いから、二人の幸せな家を持ちたいというささやかな願望の為ゆえに、暴走し、歪んでいった歯止めの効かなくなった ラブストーリーのような側面が強調されたものになっています。

 

 

 

 

実際の事件はもっと人数も多く、凄惨な物だったのでしょうが、何故かこの映画を観終わって、なんともやるせない感情が私の中に湧いてしまうのでした。それは、この主人公二人を演じた役者さんの演技からくる所が大きく、特にマーサ役のシャーリー・ ストーラー はこの作品がデビュー作と思えない程の存在感があり、コンプレックスから生まれる悲しみを見事に演じていました。 レイモンド 役のトニー・ ロビアンコ も、どこか憎めない詐欺師を巧みに演じていて素敵でした。ショッキングな殺人鬼カップルの物語ですが、ちょっと同情してしまうような所もあったりして、どちらかが少しだけでも冷静な心を持っていたらと、切なくなります。かなり歪んだラブストーリーですが、機会があれば一度ご覧になってみて下さい。

 

では、また次回ですよ~! パー