読めば一度は精神に異常をきたすと言われている1935年に刊行された夢野久作の

カルト的人気のある小説「ドグラ マグラ」の映画化

 

 

 

 

 

 

                - ドグラ マグラ - 監督 松本俊夫  原作 夢野久作

 

 出演 桂枝雀、松田洋治、室田日出男、三沢恵里、江波杏子、小林かおり 他

 

こちらは1988年制作の 日本映画 になります 日本

 

 


 

 

  「ブーン、ブーン」という柱時計の音で目を覚ました青年は、自分が独房のような部屋に監禁され、記憶を失っていることに気付きます。 自分を「お兄様ぁ」と呼び続ける謎の少女の声。 やがて、心理学者で若林博士と名乗る男が事情を説明し始めます。若林博士の説明によれば、青年の名は呉一郎といい、ある理由から同居していた叔母と従姉妹を殺害しており、自分が呉一郎であることと、記憶をなくした原因を思い出せば回復し、ここから出られると言います。 研究室に連れて来られた一郎は、正木博士と名乗る坊主頭の怪人物から意外な真相を知らされる事に、、。

 

 

 


小説家 夢野久作 が 1935年に刊行した、同名小説の映画化作品で、刊行当初から

かなり物議を醸した作品です。 複雑な内容と入り組んだ構成、脳科学や、記憶喪失、妄想、などが入り混じり、かなり個人個人で解釈が異なるような作品です。 1935年 (昭和10年) という時代には早過ぎた小説だったのかも知れません。本作の監督は 「薔薇の葬列」 等の 松本俊夫 出演は、青年に 松田洋治 (もののけ姫のアシタカでしたね) 正木博士 を 桂枝雀 、若林博士 を 室田日出夫 がそれぞれ演じています。

 

 

 

 

当初、監督はこの作品を ATG で撮ろうと思ったらしいのですが、当時のATGはかなり厳しく難解で、集客が望めない今作を一旦棚上げしたそうです (ATG向けの作品なのに、、、) 数年後、他の製作でやっと映画化になった今作 「ドグラ・マグラ」。 この不思議なタイトルですが長崎地方の方言とされたり、「戸惑う、面食らう」や「堂廻り、目くらみ」がなまったものとも説明されていますが、詳しくは明らかになってはいない とタイトルすら、謎なのでした。 そんな内容ですので、いつもの如く小説自体を未読の私は、あくまで映画作品を観ただけの感想になります  それですら要約するのは困難なのですが

 

 

 

 

本  「 胎児よ 胎児よ 何故躍る 母親の心がわかって おそろしいのか 」 という文字が画面に表示されて始まります (これは小説の書き出しと同じのようです、もうここからある種の気合いが必要だと認識させられるのであります)  

時計………ブウウ――――――ンン――――――ンンン………………。という時計の音らしい音色で目覚める青年。 周りを見渡すと監禁部屋のような所に居ます 何故ここに居るのか、ガラスに映った自分の顔すら見覚えがありません。隣の部屋からは 「助けて下さい」 という女性の声が聞こえてきます。 そこへ 若林という法医学教授が現われ、ここは精神科病棟で、前任の主任教授だった正木が自殺したため兼任していると青年に告げます。 青年は 呉一郎 という男が起こした、恐ろしい事件のショックの為、記憶を失っていて その記憶は自分で呼び戻す他は無いと告げられます。 青年は若林に隣の部屋に連れられて行かれます。 

 

 

 

 

そこには 呉モヨ子という美しい女性が居ました。 彼女が目を覚まし青年を見た途端、「お兄様!」 と叫びますが、青年には覚えがありません、、、というのがこのお話の始まりでありまして、青年の記憶を呼び覚ます為に、若林は青年に過去の書物や、スライドを見せる事になるのですが、その中に 自殺した正木の書物があり、青年がそれを読んでいると、正木が現われ自殺は若林の嘘で、青年を実験材料にしているのだと言われます。 正木は過去に、様々な精神病の実験をしていて、その主だった理論は過去の記憶は脳にだけでなく、全ての情報が胎児がお腹の中にいる時から前世の記憶も全て受け継がれているのだという理論を持っている人物でした。 しかし、正木は確かに自殺して死んでいるのです。 

 

 

 

 

現れる正木は青年の幻覚なのですが、すでに実在の人間と、幻覚の人間も、青年にとってはどうでもいい事でした。 そして徐々に明らかになって行く過去、驚く事にそれは千年以上も前の出来事にまで結びついているのでした。 そして正木と若林の計画していた実験の秘密こそが、この青年を狂わせていたのでありました。 そしてある決定的な謎を垣間見た青年は確信し、その施設から逃亡します。 ここで青年はトンネルを抜けて行くのですが、意図的なライティングによってトンネルの中は真っ赤になっています これは明らかに 産道 を意味しているのでしょう。 そこを抜けると真っ赤な夕日が広がり、何体かの死体が転がった広い土地に出ますが、そこに白装束をまとい返り血を浴びたような、自分そっくりの青年がこちらを見つめているのでした。そしてふと気が付くと、

時計………ブウウ―――――ンンン―――――ンン……………。という時計の音らしい音色で 、、、 というお話ですが、書いている私自身ちゃんと理解できてないので、これを読んでる方には余計難解でしょうね。 すみません。

 

 

 

 

一応、この物語のポイントとなっているのは、この青年とは誰なのか?呉一郎という男なのか?という事件としての犯人探しと、そもそもこのお話は誰が語っているのか?人間の記憶等はどこまでが遺伝するのか?等々 これに医学的な話や、オカルト的な要素 精神病、幻想、過去の出来事などが入り混じり、これが正解という答えは出されてはいません。 多分小説の方がより物語へのトリップ感が味わえるはずです。ただ映画としての私なりの解釈では、これは 呉モヨ子 の胎児が見ている夢のような気がします。 何度も胎児のインサートがありますし、この病棟自体が大きな子宮の中といううがった見方も出来ます。 

 

 

 

 

そして輪廻しても DNA のように今までの記憶も引き継いで行くという根幹の発想が秀逸で、人間の記憶と脳、そしてDNAに迫った著者 夢野久作 の先見の明の異次元世界に自分の脳がゆさゆさと揺さぶられるような感覚に陥っていきます。映画としての見所はやはり、桂枝雀 の演技と話術でありまして、途中に出て来る 「スカラカ、チャカポコ、チャカポコ…」 のラップシーンは見事で笑えます。 但し映画全体はややチープな作りが目立つ所が多々あって、演者にしてもラップシーンのエキストラ等の細かな動きにまで目が行き届いていない感があるのが、やや残念です。

 

 

 

 

それと 松田洋治 の舞台風のオーバーアクトと、見た目がちょっときになりましたが、室田さんが渋かったのでとりあえずOKとした私でした。映画版はあえて難しく考えず、怪奇推理小説映画として楽しむのが正解かも知れませんカフカ の 「変身」 も本人はコメディ的な作品として書いたとも言われいますしね。枝雀さんのはっちゃけ演技を見るだけでも楽しいかも知れません。 

 

 

 

 

小説に手を出す前に、この映画の 「ドグラマグラ」 という作品を観ておいて、大まかなダイジェストとしてご覧になるにはお薦めだと思いますので、この機会にでもご覧になってみてはいかがでしょうか、です。ポスターヴィジュアルが秀逸過ぎて、本編を越えてしまっている感はありますが、、、叫び

 

では、また次回ですよ~! パー