マイ・レフトフット
第62回アカデミー賞で作品賞 、 監督賞 、脚色賞にノミネートされ、ダニエル・デイ=ルイスが主演男優賞、ブレンダ・フリッカーが助演女優賞を受賞したジム・シェリダン監督のデビュー作です。
- MY LEFT FOOT - 監督 ジム・シェリダン 原作 クリスティ・ブラウン
出演 ダニエル・デイ=ルイス、ブレンダ・フリッカー、 レイ・マカナリー 他
の合作映画です(103分)
1932年のアイルランド ダブリン。 22人兄弟の10番目に生まれたクリスティ・ブラウンは生まれつき小児麻痺で立つことも話すこともできず唯一左足のみ、かろうじて動かすことができる状態でした。 少年期のクリスティは街の人々からは厄介者扱いされ、冷たい視線を受けていました。 しかし心優しい母・ブリジットは多くの子供を抱える貧困生活でありながらクリスティを見捨てずに支え続け、他の兄弟姉妹達もクリスティと対等に接しました。 家族で唯一、レンガ職人の父・パディは息子の障害を受け入れることができず、クリスティを罵倒していました。 ところがある日、クリスティは父に「言葉もわからないし字も扱えない」と侮蔑された悔しさから左足にチョークを持つと、必死に這いずり回りながら床に初めての字「MOTHER」を書いて見せたのでした、、。
実在の 画家であり、執筆家の クリスティ・ ブラウン の自伝小説を映画化した作品です。生まれながらに小児麻痺で産まれたクリスティ。 映画は嫌々ながらチャリティ・コンサートのレセプションに出席した彼と、その間、面倒を看る事になった看護師が、屋敷の個室でクリスティが出版した自伝の本 「マイ・レフトフット」 を看護師が読み始める所からストーリーが始まっていきます ![]()
少年期の彼の家は、子だくさんの貧しい家庭で、父親は 星一徹 のような、無骨で頑固な酒飲みオヤジ、母親は、そんな父親を支え、家族を大きく包み込むような存在でした。クリスティは夫婦の10番目になる子供で、彼の下にもまだ2人の兄弟が居る大家族。その当時の彼はろくに話す事も出来ず、意思表示は首を振る程度。 兄弟は仲が良いのですが、父親は彼に教育をさせず、家で兄弟が勉強をしているのを、横で見ているだけような状態でした。
そんなある日、クリスティは家族が見守る中、唯一自由に動く左足でチョークを握り、床に 「MOTHER」 と書いてみせます。 それを見とめる家族の様子が素敵でした。初めて文字を書く事で自分の尊厳を父親に示す強い意志表示の場面でもあり、彼のアイデンティティを家族に宣言している場面でもあります。そんな彼の姿を見た父親はクリスティを担いでパブに連れて行き、息子は天才だ!と自慢します。 それまでの自分を恥じているようでもあり、クリスティの強さに気付いた感動と戸惑いが伝わる場面です。(この少年期を演じている少年も素晴らしいのです)
思春期に入ると異性に恋をし、気持ちを伝える為、自筆の絵でラブレターを書くのですが、撃沈! ここである意味、初めて彼は他の人との違和感、と自我についての嫌悪感に打ちのめされる決定的な瞬間を味わいます。 しかし、この時期の周囲の友達は、彼を、サッカーのゲームに普通に参加させてゴールキーパーをやらせたりと、全くクリスティの事を特別扱いしていない所が何とも素敵でした。
そしてある日、女性の小児麻痺の専門医師との出会いによるリハビリで、少しずつ言葉も喋れるようになり、左足で描き溜めていた絵も、その医師によって世に紹介される事になります。 しかし、絵よりクリスティ が最も興味があったのは、その女性小児麻痺の医師本人でした。 彼女に告白しますが、すでに彼女は婚約者がいました。 リサーチ不足のクリスティですが、ここまで理解してくれていると思っていた人に裏切られたような気持になった クリスティ は自殺まで考えますが死にきれません。 そんな気持ちを吐き出すように、自伝を書き始めるクリスティ。 人の運命って不思議なものです。
今作は障害を持った人間の、闘病物の感動ドラマではありますが、ねちっこさや、ほら、ここ感動するでしょ?という描き方はしていません。 それは主人公 クリスティ 自身がシニカルである事もあるでしょうが、彼を取り囲む周りの環境や、人物、親兄弟が、クリスティを変に特別扱いしていない事がかなり大きい要因になっています。 貧しくて彼に車椅子を買ってあげられない為、箱車に乗せて近所を引っ張り廻して皆で遊んだりというのが日常の風景だったりします。 (私の小さい頃や、中学生の頃も、特殊学級が同じ校舎の中で、普通に接して、暮らしていた日常だったのですが、最近は逆に 「やさしさ」 という厄介な差別でそれが分断されてしまっているのでは?とも思ってしまうのですが)
この映画は クリスティ を中心とした 「家族」 を描いた作品です。 特にこの作品における 母親 という存在無くしてこの物語は語れません。 母親という、偉大な愛の存在の重要性を同時に描いています。 そういう意味では父親って情けない存在かもです。実際、映画の中でクリスティ が絵を描くシーンや、描いた絵の景写や、最後彼は看護師と結婚するのですが、そういった描写を省く感じに描かれています。それは監督の意図で、 クリスティ という人物を伝記として描きたかったのでは無く、彼と、その家族を描く事に興味を抱いたのだからではないでしょうか?
この作品で、この年の アカデミー主演男優賞を ダニエル デイ ルイス が受賞し、助演女優賞に、母親役を演じた ブレンダ フリッカー が受賞しています。 父親役の レイ・マカナリーも素晴らしかったです。そんな訳で、ダニエル デイ ルイス のなりきり演技と、母親の愛の素晴らしさを感じさせてくれる映画になっておりますので、興味が湧きましたらご覧になってみて下さいませね
では、また次回ですよ~! ![]()












