19世紀初頭のドイツ、地下室に閉じ込められていた奇妙な若者が見つかる。カスパー・ハウザーと名付けられたその青年は思うように動けず、言葉もろくにしゃべれない。篤志家によって引き取られたカスパーはやがて言葉を覚え、普通の人と同じような生活を送るようになるのだが……。
こちらは1974年制作の 西ドイツ映画 になります
「フイツカラルド」「小人の饗宴」のヴェルナー・ヘルツォーク監督の作品でありま
す この3作が、発掘良品シリーズで入荷した為、観れる最後の、ヘルツォーク作品
なのですが、今後も、色々と面白い作品が入荷してくれる事を祈るばかりであります
お話は、産まれてから16歳まで地下室に閉じ込められていた カスパー が、ある日突
然そこから外の世界に放り出されます 言葉も知らず、他者の存在も、歩く事もまま
ならない状態で、ある街に置き去りにされます 興味を持った街の住人と役所に保護
されますが、街のお金で養うのも限界だと、見世物小屋に出されるのですが、(エレ
ファントマンのようですな)それをたまたま見かけた、高名な貴族に引き取られる事
になります そこで言葉や、生活を憶えて行くのですが、やはり、なかなか外の世界
になじめない生活が続いていくのですが、、、
この作品を観終わって、作品の検索をしてみたのですが、なんと私は無知だったの
か!と気付かされました このお話、「実話」だったのであります!!エンディング
を観終えて、彼をこのようにした人物を、最後まで明かさなかった事や、様々な事に
謎が多い映画だったな~と思ってはいたのですが、、、その謎が解けました 以前ご
紹介した 「小人の饗宴」 に通じるテーマを感じて、映画化したのでしょうか?しか
し 「小人」 の時とは違い、この カスパー は全くの無垢という立場で描かれておりま
す 「善」 でも 「悪」 でもないという意味での 「無垢」 です
言葉や、物の名前を憶えていくごとに、礼儀や、作法を憶えていくごとに、彼は逆に
窮屈な世界に閉じ込められていくようです 無理やり 「信仰」 を憶えさせられる事に
ガスパーは疑問とそれ以上に、嫌悪感すら抱きます まるで、カスパーを通して人間
社会という物の、息苦しさや、不確かさを、あらわにしているかのようです 劇中カ
スパーが、家政婦に向かって、「何故女性は何にもしないのか?」と、問いかけるシ
ーンがあります、つまり女性の社会進出が出来ない事への、純粋な疑問を、不思議に
思っての質問だったのですがね
「善人の村と、嘘つきの村」というクイズが、あるシーンで出題されるのですが、こ
の教授が出す答えが、私も納得できませんでした、カスパーの出した答えの方が納得
出来たのですが、ご覧になった方おられれば解説してほしい位です 映画の中ではあ
まり描かれませんが、実際のカスパーは当初、様々な五感が人並み以上に優れていた
そうです 暗闇でも文字が読めたり、触った物が、鉄か、真鍮か分かったり等々 そ
れも言葉を憶えたり、あらゆる物を食べられるようになってから、徐々に鈍感になっ
ていったらしいですが、、、(@ ̄ρ ̄@)zzzz
画面や、衣装はとても素晴らしいです、時には 「バリーリンドン」のようでもありま
すが、何よりこの映画は主役を演じる ブルーノ S という無名の素人俳優さんです
彼自身、精神を患っていた過去があり、カスパー同様、隔離された生活を長い事送っ
ていたそうですがなんとも魅力的で、彼なしではこの映画、成立していなかった事で
しょう
ラスト、カスパーが亡くなって、彼の遺体を解剖して、脳を分析するシーンがありま
す、そこで彼の脳には、通常とは違う箇所が見つかるのですが、それがある事によっ
て、学者は安心するのです、型にはまらないカスパーはこれが原因だったんだ!と、
果してそうでしょうか? 自分達の理解出来ないものが、不安でしょうがなかったの
を、脳の異常という医学的な型にはめ込んで安心したかっただけではないのでしょう
か? と、皮肉っぽく見てしまいました 地下室に閉じ込められていた生活と、外の
世界へ出た生活と、いったいどちらが彼にとって幸せだったのか?
それは本人にしか分かりませんが、果して今の私達の常識は正しいのでしょうか?
100年後、200年後 (人間が存在していればですが、、)のカスパーの目線を気
にかけながら、周りに惑わされない「心」を持っていたいものだと思う私なのでした
なんとも不思議な実話でありますが、興味ある方はご覧になってみてくださいませ
~!です
では、また次回ですよ~!