小さなストレスが積もらない
家のつくり方。
心理面・建築設計
暮らしの実感から読み解く
住まいの設計論。

※視線の抜ける大開口と眩しさを抑えた間接照明。
リビングに小さなストレスが
溜まりにくい「仕組み」を整えた
和モダン×ホテルライクの
ストレスレスなLDK提案のカタチ。
現在住んでいる家が
なんだか落ち着かない。
理由は分からないけれど、
家にいると疲れる・・・・・。
家づくりの相談中に、
こうした言葉を
耳にすることがあります。
けれど多くの場合、
その原因は
間取りが致命的に悪いからでも、
設備が足りないからでもありません。
暮らしのストレスの正体は、
ごく小さな違和感が、
毎日くり返されること。
心理学では、
人は一度だけの強い不快よりも、
弱い不快が何度も続く状態に
より大きなストレスを
感じるとされています。
つまり、
・少し遠い
・少し暗い
・少し面倒
・少し気になる
その「少し」が、
暮らしの質を
静かに下げていくという事です。
家づくりとは、
この小さな違和感を
住み始める前に、
空間の側から消していく行為。
それが、
やまぐち建築設計室が考える
設計の出発点です。
ストレスは「性格」だけではなく
「環境」の状態が生みだす。
「自分は片付けが苦手だから」
「面倒くさがりな性格で」
そうやって自分を
責めてしまう方は少なくありません。
けれど心理学の視点では、
人の行動の多くは
性格よりも環境によって
左右されると考えられています。
例えば、
収納が少し奥まった場所にあるだけで、
人は「あとでやろう」と思います。
動線が少しだけ遠回りなだけで、
無意識に「面倒だ」と感じます。
このとき頭の中や心の中では、
「行くか・行かないか」
「今やるか・後でやるか」
という小さな判断が
発生しています。
この判断の積み重ねが、
いわゆる決断疲れと呼ばれる
ディシジョン・ファティーグです。
家の中に
・迷う動線
・選ばされる収納
・考えさせられる配置
が多いほど、
人は知らないうちに
疲れていきます。
ストレスの原因は、
暮らし方ではなく
暮らしを受け止める側の
状態にあることが多いものです。
行動と間取りの
「わずかなズレ」が疲れを生む。
小さなストレスの多くは、
人の行動の流れと、
間取りの構成が
ズレていることから生まれます。
玄関を例に考えてみてください。
帰宅時、人は無意識に
・靴を脱ぐ
・荷物を置く
・上着を脱ぐ
・室内へ進む
という一連の流れを
想定しています。
しかし、
・荷物を置く場所がない
・コート掛けが遠い
・動線が交錯している
こうしたズレがあると、
動作が分断され、
「帰る=休まる」ではなく
「帰る=処理する」という
感覚に変わってしまいます。
洗濯動線も同じです。
洗う・干す・取り込む・しまう。
この流れがつながらないと、
毎日の家事に
見えない重さが
積み重なっていきます。
心理学的には、
人は流れが途切れる瞬間に
ストレスを感じやすい。
だからこそ、
間取りは部屋単体ではなく、
行動の連続として動線を意識して
設計する必要があります。
動線の単純化が心を軽くする理由
小さなストレスが
積もらない家に共通するのが、
間取りの中での行動が
複雑ではない動線です。
・振り返らなくていい
・戻らなくていい
・探さなくていい
これだけでも、
人の脳は驚くほど楽になります。
心理学では、
人は次の行動が予測できる状態に
安心感を覚えると
言われています。
・視線の先に目的地がある
・進行方向に収納が並ぶ
・自然に体が前へ進む
こうした間取りは、
単に便利なのではなく、
安心感を空間として
設計している状態です。
動線が乱れる家は、
気持ちも乱れやすい。
動線が整う家は、
暮らしのリズムが自然と整う。
この違いは、
住んでからこそ、
はっきりと実感されます。
「戻す」より「置く」を肯定する家
人は本能的に、
「元に戻す」より
「とりあえず置く」方を選びます。
これは怠けではなく、
脳がエネルギー消費を
抑えようとする自然な反応です。
だから、
片付かない原因を
意識や性格に求めるのは、
少し酷かもしれません。
設計では、
こう考えます。
「きれいに戻させる」より
置いても乱れない構造をつくる。
・玄関の一時置き
・リビングの浅い収納
・キッチン横の作業棚
・デスク周りの小さな受け皿
「ここに置いていい」という
場所があるだけで、
散らかり方は驚くほど変わります。
片付けの問題は、
暮らし方の問題ではなく、
受け止め方の問題なのです。
光・風・温熱は
「無意識」に心へ作用する。
人は、
光・風・温度・湿度を
意識せずとも
感じ取っています。
・強い光は交感神経を刺激し
・風のない空間は閉塞感を生み
・温度差は身体を緊張させる
これらはすべて、
気分の揺れや
疲労感に直結します。
だから、
・光を照らすのではなく
「包む」照明計画
・風が抜けるルートをつくる
間取り計画
・温度差を生まない断熱と配置
こうした工夫は、
快適さ以上に
心を安定させる設計なのです。
家は、
身体を休める場所
であると同時に、
感情を整える環境でもあります。
家づくりは「足すこと」
ではなく「引くこと」を考える。
多くの家づくりは、
・設備を足す
・広さを足す
・機能を足す
という方向へ進みがちです。
けれど本当に暮らしを
軽くするのは、
不要な負担を引いていくこと。
・考えなくていい
・迷わなくていい
・我慢しなくていい
そうした状態をつくることが、
設計の役割だと
やまぐち建築設計室では
考えています。
派手ではないけれど、
住むほどに心が整っていく家。
そういった状態は、
小さなストレスが積もらない
住まいとなります。
やまぐち建築設計室 は、
人の行動や心理、
日々の何気ない癖を
丁寧に読み解きながら、
暮らしを静かに支える
やさしい仕組みのある住まいを
ご提案させていただいています。
「言葉にできない違和感」を
住まいに感じているなら、
それは設計で解消できる
サインかもしれません。
家は人生の時間を
受け止める大切な空間。
だからこそ、
小さなストレスに、
丁寧に向き合う考え方を
大事にしています。
このブログが、
家づくりを考えるうえでの
ひとつのヒントになれば幸いです。
○関連blog
回遊動線は正解か? 家事効率と空間の美しさを両立する質が良く、暮らしやすい住宅の間取りという考え方。
https://www.y-kenchiku.jp/blog_detail678.html
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奈良県橿原市縄手町387-4(1階)
建築家 山口哲央
https://www.y-kenchiku.jp/
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