不動産売却と詐害行為 | 資金繰り 事業再生 M&Aアーク司法書士法人@代表社員 李 永鍋(リ ヨンファ)のブログ

先日の相談

リスケ中に不動産の売却は詐害行為にあたるか?

あたる場合もあればあたらない場合もあります

今回はあたりませんでした


相談概要

主債務者   会社

連帯保証人  代表者

不動産所有者 代表者

会社は債権者に対して5年くらい前からリスケ


連帯保証人である代表者が最近癌になり治療費や引越代が必要で不動産を売却したいが詐害行為になると言われて悩んでる


買取は地場の不動産屋で相場価格(相場と言っても緊急買取で少し低い価格でしょう)


自己破産する意志はない


今回は詐害行為にあたらないので売却して治療費と引越代の捻出をしても良いと回答しました


売買代金の現金を隠匿したらだめです

正当理由があれば問題ありません

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相当価格処分行為

424条の2は、詐害行為取消権の相当価格処分行為について規定してます。


例、債務超過状態になっている人が所有する不動産を相当な価格(時価)で売却した場合に、詐害行為取消権の対象になるかという問題です。


判例の考え方

改正前の判例は、不動産を売却する行為について、相当な価格(時価)であっても、原則として詐害行為取消権の対象になり得るものとしていました。

不動産が金銭に換わることによって、費消・隠匿しやすくなるからです。


ただし、抵当権を消滅させるための弁済資金の調達を目的とした不動産の売却は詐害行為にならないとした最高裁判決昭和41年5月27日のように、不動産売却の目的・動機が正当なものである場合に例外的に詐害行為に該当しないものとしていました。


判例のルールを変更する改正

民法424条の2は、このような判例のルールを実質的に変更するものです。


不動産等を時価で処分する相当価格処分行為については、原則として詐害行為にならないとし、例外的な要件を満たす場合にはじめて詐害行為になるものとしました。


破産法上の否認権については、経済的危機の状態にある者と取引相手が否認権行使を過度におそれて取引が困難になることにならないように、否認権行使の要件を明確にし、相当価格処分行為については否認権行使が限定的に認められていました。


424条の2は、破産法上の否認権の規定(破産法161条1項)に合わせることになり、ほぼ同内容の規定になっています。

破産法の否認権は、不動産の処分のみ問題となり、動産の処分は対象にならないとされています。


424条の2の具体的内容

424条の2は、以下の要件の全てを満たす場合に詐害行為取消請求ができるものとしました。


①債務者が隠匿、無償の供与等をして債権者を害する処分をするおそれを現に生じさせること

②債務者が行為当時、隠匿、無償の供与等の債権者を害する処分をする意思を有していたこと

③受益者(取引相手)が行為当時、債務者が隠匿、無償の供与等の債権者を害する処分をする意思があることを知っていたこと


取引相手が債務者の親族等であった場合

破産法上の否認権については、相当価格処分行為の取引相手が債務者の親族等であった場合について、上記③の意思が推定される旨を規定しています(破産法161条2項)。