相談者の妹が家を購入し、実際は住んでない相談者である姉に対し、名義を姉にしてくれないかと妹が | 資金繰り 事業再生 M&Aアーク司法書士法人@代表社員 李 永鍋(リ ヨンファ)のブログ

——————–【相談内容】——————–

相談者の妹が家を購入し、実際は住んでない

相談者である姉に対し、名義を姉にしてくれないかと妹が言い出しました。

どうしたらいいでしょうか。


状況は以下の通りです。

①家の所有・住宅ローンの債務者ともに妹。

②実際は姉が払ってる。

③家の相場は1,400万円、住宅ローン残高は2,000万円。

④負担付贈与とした場合、妹は売却益が発生しないので所得税負担はない。私もローン贈与税負担はない。

⑤住宅ローンの債権者(以下銀行)は、私への名義変更と債務引き受けを認めるかどうか心配。

⑥認められない場合、私は家を売り、差額の600万円を負担することも考えなけければならない。


対策として4つの方法

対策①:次のような主旨の負担付贈与契約書(案)を作成し、姉妹で合意する。


第1条(本契約の目的)

本契約は、妹が第2条に規定する負担付きで本件建物を贈与することを約し、姉が引き受けることを目的として締結される。


第2条(残債務の重畳的債務引受とその支払い)

姉は、妹の次に示す債務を重畳的に引き受け、本日以降、契約に定められた支払をなすものとする。


債 権 者        ○○銀行○○支店

契   約        令和○○年○月○日付金銭消費貸借契約

当初借入額        金○○○○円

残 債 務 額        令和○○年○月○日現在 金○○○○円


 


対策②:免責的債務引受を交渉する。


債務引受者(姉)の所得証明や健康保険証等の個人情報を銀行に提供して審査を受けます。


債務引受には、重畳的債務引受(民法470条)と免責的債務引受(472条)があります。

銀行への交渉は残債務の重畳的債務引受ではなく免責的債務引き受けの線で交渉します。

重畳的債務引受だと妹さんの立場は連帯債務者としてで残ったままだからです。


銀行から見ると、債務者を変更することには慎重なので、ほとんどの場合が重畳的債務引受になっています。


銀行が承諾したら、所有権移転と、債務者変更(または追加)を行います。


重畳的債務引受の問題点としては、姉の支払が滞った場合、妹さんに対し請求がされるという事です。



対策③:銀行が認めない場合、妹の代わりに払い続けることの問題。


銀行の了解がなくても名義変更することは現所有者と新所有者の合意があれば可能です。

ただし、無断で名義変更すると銀行との契約違反になり、一括返済を求められてしまいます。


銀行に住宅の名義変更を承諾してもらえないような場合、どうするか。

ローン完済まで妹名義のままで、姉が代わりにローンを支払い、ローンを完済したら姉に名義変更するという方法があります。


しかし将来に不安はあります。妹の死亡や、破産、差押など名義変更に障害が生じることも考えられます。

解決方法として、銀行の承諾が無いまま、負担付贈与契約による名義変更するのもひとつの方法です。


決しておすすめすることではありませんが、ひとつの方法ではあります。


この場合妹名義の住宅ローン返済用口座の預金通帳を姉が管理すると良いでしょう。

税務署に対しては、ローン名義の変更が出来ていなくても、ローンの返済を実際に姉が行っているという証拠を残しておく方が良いでしょう(事情を説明し確認しておいてください)。


 


対策④:任意売却 リースバック。


姉が別の銀行から融資を受けて、妹の家を購入することは可能です。

そうすることで住み続けることができます。


思い切って家を売却して出て行くということも考えて良いでしょう。

売却代金からローン支払いに不足する分の資金を銀行から無担保ローンで調達するという方法です。当然妹がそのローンを負担しなければならないと思います。


差額を負担できない場合、妹さんの信用情報に傷がつくのを覚悟で、思い切って任意売却するという方法もあります。

この場合、市場価格より安くなりますので、姉がローンを組んで家を購入することも考えて良いでしょう。