自己破産をすすめたケース | 資金繰り 事業再生 M&Aアーク司法書士法人@代表社員 李 永鍋(リ ヨンファ)のブログ

1億円の債務超過


「会社が破綻状態、負債が1億円 資産はほぼ0円 収入も月50万円にも満たない」

という復帰見込みなしの会社や社長でも、自己破産だけが解決方法の全てではありません


それも、法律手続きに頼らない方法があります


 一例をあげれば

「不良債権化後100万円以下に値切って一括弁済和解する」とか、あるいは逆に「1万円づつ一生かけて返す」とか


どの方法も長所短所がありますが、ひとつ言えるのは

「選ぶのは自分」ということです

今回は逆に

「負債が少ないのに自己破産をした」というケースです

次のような相談者の方がいました

だいぶ前から相談を受けている方です

(注:プライバシー保護のため、属性を多少変更して書きます)

・独身女性。広島で小さな会社を5年ほど経営している

(その前はOLだった)


・年商2,000万円前後、従業員2名


・負債総額1,000万円強 金融機関700万+消費者金融200万円+リース100万 


・資産は事務所の備品類と、200万足らずの売掛金や現預金のみ


・仕事には定評があるので、努力次第ではまだまだ増収増益が図れるだろうし、業務効率も改善できるだろうが、その前に精神的に参ってしまい、心療内科に通うようになってしまった


・そこでひとまず 金融機関にリスケジュールをお願いし、しばらく仕事を休むことにした。従業員は独立。事務所は解約。固定費を限りなくゼロに

・数ヶ月間自宅で休んでるうちに、精神状態も健康状態も良くなった、冷静に自己分析できるようになった


・数ヶ月後も、金融機関には返済している(リスケで決められた金額を)このままでは無一文になるのは時間の問題


・最近、パートの仕事を始めた 会社から「正社員になってくれないか?」と誘われた。事情を正直に説明し、保留に


・結論として会社は清算してパート先企業に転職したい


・負債総額が少ないので、身内が資金援助(肩代わり)を申し出てくれている


※反対しました借金返すのに借金しない


(1)まず会社の債務と個人の債務に分けて 会社としては資産200万-負債1000万=700万円の実質債務超過です

個人としては会社の連帯保証債務のみ


(2)負債総額としては非常に少ない経営再建の道もあるが、精神的問題があり方法論や技術論よりも、ご自身が「どうしたいのか?」が大切です 

(3)会社を清算して地元企業に転職するほうがストレスが少なくやりがいを見出せるのならば、そちらのほうがいいです


その場合、清算方法は

①法人も個人も自己破産する 

②法人を解散登記のみし、個人は自己破産

費用が安くすむ


(4)

③会社を休眠にし、債権者と話し合って月1万円前後の長期分割払いで長年かけて自分の給料から返すという方法


④返さず放置して、取立てに耐えながら代位弁済や法的手続きや債権譲渡に至るのを待ち、最終段階に入ったところで超~減額交渉


⑤消滅時効援用


いずれの方法も、長引くし、不安要素が長く残るし、それなりにストレスがかかるので、この方には適していませんでした


⑥M&A的手法もあるが、事業規模やかかる費用と手間等を考えるとあまり適さないでしょう

(5)結論としては、潔く清算するのも勇気ある選択です


正攻法で清算してしまったほうがいいと思います。よって①か②の方法をおすすめしました



「資金ショート、赤字、債務超過の3拍子揃っても道はまだまだある!ガンバレ!」

というふうに自己破産をあまり勧めませんが、


このように、状況によってはキチンとした方法を勧める場合もあります


 どちらにしても、考えられる選択肢を思いつく限り全てお伝えしたうえで、ご自身にじっくり考えてもらっています


「最短距離で合理的に片付けること」がイコール「最良の方法」とは限らないので、あえて遠回りや不合理な方法を比較検討してもらう場合もあります。


 最終的に自己破産になっても、「何も考えないまますぐに自己破産してしまう」のと、「破産しない努力を精一杯して悩み抜いた末に自己破産する」のでは雲泥の差があります


前者は何も得るものがありませんが、後者は学ぶことが沢山あります。

結果より過程のほうが大事なこともある



アーク司法書士法人

代表社員 李 永鍋(リ ヨンファ)