江戸時代後期,越後の小藩・丹生山(にぶやま)藩は古くから地元の名産品・塩引き鮭で栄えてきた藩であり,藩の鮭役人,間垣作兵衛(小日向文世)の息子として育った小四郎(神木隆之介)は鮭売りをしていた。

 実は小四郎は作兵衛の実子ではなく,丹生山藩12代目藩主・一狐斎(佐藤浩市)の子だった。

 

 一狐斎の長男は落馬で早世し,次男・新次郎(松山ケンイチ)はうつけ者,三男・喜三郎(桜田通)は病弱であり,家督を継がせるには心もとない者ばかりだったが,一狐斎は,かつて奉公をしていた間垣なつ(宮崎あおい)に産ませた妾腹の四男・小四郎を作兵衛に預けていたことを思い出し,次期藩主として急遽白羽の矢を立てた。

 

 

 江戸の藩屋敷に連れてこられた小四郎は一狐斎から家督を譲り,自分は隠居すると告げられる。

 

 

 こうして松平小四郎は,庶民から一国の殿様になったが,早速幕府から呼び出され,藩から幕府への献上金が支払われていないと叱責される。

 

 

 小四郎が藩の帳簿を確認したところ,石高3万石の丹生山藩は,25万両(現代の金額で100憶円)ものの莫大な借金を抱えているという事実を知る。

 

 

 小四郎は一狐斎に問い質したが,風流人として優雅な隠居暮らしを送る一狐斎は「策はある」とだけ告げる。

 

 

 この策とは計画倒産であり,藩のお取り潰しと引き換えに借金を踏み倒すというものだった。

 その場合,藩主は全ての責任を取って切腹をすることになっており,一狐斎は全ての責任を小四郎に擦り付けるために家督を譲ったのだった。

 

 

 切腹を回避するには,借金を完済するしかないことを知った小四郎は,何とかして借金を完済しようとする。

 

 小四郎は,たまたま江戸に商売に来ていた幼馴染の町娘・さよ(浜辺美波)の協力で家臣たちの不満を押し切って大胆な倹約策に打って出た。

 

 

 藩の蔵を整理して使わない武具や家財を売却し,藩屋敷を手放して新次郎と喜三郎の住む離れ屋敷を間借りすることにした。

 新次郎は持ち前の庭師の技術を活かして小四郎を手助けし,喜三郎も快く受け入れてくれる。

 

 

 参勤交代は宿を取らず野宿でしのぎ,金になるものはなりふり構わず売っていった。

 

 

 小四郎の奮闘を見て藩士たちの心はひとつにまとまろうとしていたが,実は一狐斎は老中首座・仁科摂津守(石橋蓮司)と藩の借金の大半を貸し付けている大坂の両替商「天元屋」の女主人タツ(キムラ緑子)と結託していた。

 

 

 小四郎は,藩の金の流れに疑念を感じ,片っ端から帳簿を調べ上げていったが,一狐斎は小四郎の教育係である磯貝平八郎(浅野忠信)に小四郎の監視を命ずるとともに,口封じのため勘定方の橋爪左平次(小手伸也)を抹殺するよう命じる。

 橋爪は自らの命が狙われていることを悟り,家族に影響が及ばないよう自ら死を選ぼうと考えていたが,小四郎は決して命を粗末にするなと橋爪を説得し思い留まらせる。

 

 

 小四郎の懸命ぶりに心を動かされていた磯貝も橋爪の暗殺を思い留まる。

 

 

 橋爪は天元屋が中抜きをしていた事実を記した帳簿を作っており,小四郎とさよたちは藩の帳簿と照合を始める。

 

 

 借金の件が幕府にバレ,小四郎は幕府から呼び出しを受け,単身で仁科と老中・板倉周防守(勝村政信)と対面し,天元屋が中抜きをしていた件を告発した。

 天元屋の蔵から丹生山藩の印が刻まれた大量の小判が発見され,さらに仁科も天元屋と同様に他藩からの献上金を横領していたことが判明する。

 

 その場に一狐斎が現れ,仁科のこれまでの悪事を洗いざらい暴露し,他藩の藩主から集めた署名を突き付ける。

 一狐斎は小四郎たちの動きを見て,自分が不利にならないように天元屋と仁科を裏切ったのだ。

 

 小四郎は着服金に加え,残りの借金は一狐斎から回収すると宣言し,借金完済の目途をつけ,しかも特産品の塩引き鮭を使って藩の財政を立て直したのだった。

 

 

 

神木隆之介と杉咲花という朝ドラ主演コンビの時代劇。

 

 面白いし,まとまってはいるけど,「引越大名」「超高速!参勤交代」「決算!忠臣蔵」とか似たような映画は山のようにあり,それらと比べてどうかというと,後から出てきた分,不利だなと思う。

 その辺りの路線を狙って脚本家がつぎはぎで作った話かと思っていたから,浅田次郎原作とあって驚いた。

 

 悪くはないんだけど,釈然としない。