神崎昭夫(大泉洋)は大手企業の人事部長である。

 幼なじみで大学の同級生である木部富幸(宮藤官九郎)から,同窓会を貸切屋形船でやりたいと言われ,久々に隅田川沿いの実家に帰る。

 

 

 彼は,足袋職人だった父親と大げんかをして実家を飛び出して以来,ほとんど実家に帰っていなかったが,母福江(吉永小百合)ならば屋形船の貸切にツテが有るのではないかと思ったのだった。

 

 母は久しぶりに帰ってきた息子を大喜びで迎えるが,実家はホームレス救援ボランティアの集会場になっており,近所の主婦たちが賑やかに出入りしていた。

 

 実家に顔を出した夜,神崎に妻から娘の舞(永野芽郁)が来ていないかという電話があった。

 

 

 彼は妻と別居し,離婚寸前だった。

 舞が家から出ていって,連絡もつかない,行く当てとしては神崎のところか,義母の所くらいしか思い当たらないと言う。

 

 翌日,神崎が実家に行ってみると案の定,舞が料理の手伝いをしていた。

 

 

 舞は母親が自分のことを理解してくれないと不満をこぼす。

 

 舞は,祖母がボランティアの指導をしている荻生牧師(寺尾聰)に恋しているらしいと神崎に教える。

 

 

 神崎はそんなことは許せないと言うが,舞は何が悪いのか分からないという。

 

 ある日,木部が神崎の実家にまで押しかけてくる。

 彼は自分がリストラの退職勧告の対象になっていたのに,親友の神崎が教えてくれなかったことを恨んでおり,実家の二階で木部と取っ組み合いのケンカをする。

 

 

 興奮のあまり,片方,神崎の靴を履いて出ていった木部を舞が追いかける。

 靴を履き直しながら木部は舞に謝る。

 

 木部は退職勧告に応じず,閑職に回される。

 

 神崎が実家を訪れた荻生になぜ牧師になったのかを尋ねると,彼は元大学の教授だったが,学問とは無関係な派閥争いに嫌気がさして教授を辞職し,牧師になったと言う。

 神崎は,荻生や母たちが救援ボランティアをしているホームレスたちを逃げた人たちと感じ,見下すようなことを言ってしまう。

 

 母たちが救援しようとしているホームレスの中にイノさん(田中泯)と呼ばれる老人がいる。

 アルミ缶集めで暮らしているようだが,どれだけ説得しても生活保護を受けようとせず,路上暮らしを続けている。

 

 

 彼は荻生牧師を敵視しているが,その理由は神崎の母への恋心だった。

 

 ある日,神崎は木部が社内で傷害事件を起こしたと聞き,現場に向かう。

 木部は自分が関わっていたプロジェクトの会議にむりやり参加しようとして,彼を部屋から出そうとした役員の腕をドアで挟んでしまったのだった。

 

 役員会で木部は懲戒解雇に決まったが,神崎は独断で希望退職の手続きを採り再就職先まで世話をする。

 そのため神崎は会社を辞めることになる。

 

 収入のなくなった神崎は実家に住むことにするが,母福江は嬉しそうでもある。

 

 

 又,荻生牧師は北海道の教会に転勤になり,福江は思わず,連れて行って欲しいと言ってしまうが,結局,冗談として紛れてしまう。

 

 

 

 

 

 

 山田洋次監督の映画であり,ところどころ寅さんを思い起こすようなシーンやカットがある。

 

 基本,老人映画であり,老いらくの恋の三角関係や,老人の若い頃のロマンスがストーリーの中心。

 

 中年男たちを描いた部分は,会社の話が空疎で非現実的であるし,神崎が親友を救うために退職して自分を取り戻すというのも安直。

 妻と別居というものの理由は描かれず,妻も足元しか出てこないという意味不明の演出。

 

 娘の舞の母親に対する不満の内容もしっくりこないし,常におなかが出ている服を着ているところが,今風の若い娘を表現しているとすると情けない。

 永野芽郁は「キネマの神様」にも出ていたから山田洋次監督のお気に入りなのかもしれないが。

 

 田中泯が誰彼かまわず,関東大震災の悲惨な状況を語るという設定も関東大震災100周年の今としては有意義なのかもしれないが,イノさんは一体何歳なのか?

 

 

 申し訳ないが山田洋次には現代を舞台にした映画は無理なんじゃないかな