蘇畑佳純(三浦透子)は,音楽大学でチェロを専攻し音楽家を目指したが挫折し,地元に帰ってコールセンターで苦情対応の仕事をしている。
30歳になった彼女は,飲み会などでは周囲の恋バナに適当に合わせているが,誰にも恋愛感情を抱くことはなかった。
妹,篠原睦美(伊藤万理華)は既に結婚して現在は妊娠しており,佳純は焦った母(田島令子)から無断で見合いをセッティングされてしまう。
断るつもりで行った見合いの相手小暮翔(伊島空)は,佳純がたまに行くラーメン屋の若い主人だった。
小暮は佳純に,自分は結婚するつもりはないのに親に無理矢理連れてこられたと言う。
佳純も同じだということを伝えるが,互いに恋愛感情ではなく人として魅力を感じたふたりは友だちづきあいを始める。
2人は趣味や好みが合い,佳純は良い友だちができたと喜ぶが,やがて小暮は佳純に恋愛感情を持つようになったと伝える。
佳純は失望して彼と別れる。
佳純は友人の八代(前原滉)の紹介で彼が働く保育園に転職する。
そんな頃,彼女は中学生時代の同級生,世永真帆(前田敦子)と再会する。
学生時代,特に仲が良かったわけではないが,なぜか真帆は佳純を気に入り,一緒に行動するようになる。
佳純は知らなかったが,真帆は有名なAV女優になっており,街で声を掛けられても気軽に返事をしていた。
保育園で佳純は,シンデレラのデジタル紙芝居を任されパソコンで作っていくが,王子様に見初められることがハッピーエンドだという内容に納得がいかず,真帆と相談して自分の考えを入れた内容にする。
だが保護者や政治家を招いて行われた発表会では,その内容に不穏な空気になり,途中で中止になってしまう。
その日の帰り道,八代は佳純に自分がゲイであることを打ち明け,彼女のシンデレラが良かったと言う。
佳純と真帆は,街で立候補の演説をしている政治家を見かける。
それは,佳純のシンデレラを中止させた政治家だったが,真帆はその政治家に猛然と食ってかかる。
彼は真帆の父親だった。
佳純は実家に居づらくなり,真帆と2人で住む家を探し始める。
だが,理想の物件が見つかり,契約というときに真帆から,結婚するから一緒には住めないと告げられる。
佳純の家の中では,妊娠中の妹の夫に浮気疑惑が持ち上がり,家族が自分の思いをぶちまける中,ようやく佳純も自分の気持ちを話す。
佳純の音楽活動を応援してきてくれた父(三宅弘城)は,彼女の気持ちを尊重しようとする。
佳純は真帆の結婚式でチェロを弾き,これで音楽への未練を断ち切ることにする。
保育園での仕事を続ける佳純だったが,新人の天藤光(北村匠海)の周囲に合わそうとしない態度が気になった。
だが彼は,周囲に流されないだけで,自分が興味のあることには消極的ではなかった。
佳純は彼と話す内,彼も自分と同じタイプの人間だと気づき,恋愛感情を持たない人間が,自分だけではないと知る。
異性にも同性にも恋愛感情を持たない人を主人公にした作品だが,その理解されづらさは,妹にレズビアンと決めつけられるところに端的に表れている。
恋愛感情は相手がいなければ持ちようがないので,今は恋愛感情を持つ人がいないということと,ずっと誰にも恋愛感情を持たないということの区別はなかなか難しい。
佳純が同類と思った小暮の結婚の意思のなさは,単に「今は」ということだったところにもよく現れている。
基本的には,家族を含めて他人の幸せのあり方を勝手に決めないというところに尽きるのではないかと思う。
三浦透子は流石の演技力だが,前田敦子も最近はクセのある役が板に付いてきた。
いつもは個性的な役を演じることの多い伊藤万理華が,凡人中の凡人を演じていたのが意外だった。
それにしても主人公の名前から取ったダジャレのタイトルはいかがなものか。