刑事の成瀬司(阿部寛)は,多発する老人を狙ったアポ電強盗事件を捜査していた。

 

 彼は3年前に自分が取り逃がした男が首謀者だと確信しており,上司の指示を無視して強硬な捜査を続ける。

 成瀬は古いタイプの刑事であり,捜査会議を嫌い,足で稼ぐ捜査を重視し,関係者を威迫したり,ときには暴行までして情報を得ようとする。

 

 部下の坂本祥太(磯村勇斗)は,仕方なく成瀬について回っているが,かなり迷惑そうである。

 

 

 成瀬はチンピラの西田優吾(高橋侃)が,絡んでいるとにらみ,彼に脅迫まがいのやり方で自白を迫る。

 

 

 ところが,成瀬は広報課に移動になり,捜査から外され,音楽隊への加入を命じられる。

 

 成瀬は署長の五十嵐(光石研)に,捜査方針に従わないことへの嫌がらせかと詰め寄るが,パワハラの内部告発があったと告げられる。

 

 

 音楽隊は,外部委嘱の指揮者沢田(酒向芳)以外は,全員警察官だったが,演奏技術は低く,やる気のなさは成瀬と変わらない者がほとんどだった。

 

 

 またカラーガード隊もいたが,やる気のなさと技術の低さは音楽隊と変わらず,柏木(モトーラ世理奈)は,しょっちゅうフラッグを落としている。

 隊員は交通課や生活安全課との兼務であり,本業だけでも忙しく練習時間や練習場所が取れないことも原因だった。

 

 

 トランペットの来島春子(清野菜名)は,音大出身で音楽隊に入るために警察に入ったが,警察の仕事が忙しい上,時間も予算もなくまともな演奏ができない音楽隊には失望していた。

 

 

 成瀬は捜査に熱中して家庭を顧みず,妻と離婚していたが,娘の法子(見上愛)は,成瀬と同居する祖母幸子(倍賞美津子)のことを心配してときどき家を訪ねてくる。

 幸子は認知症で成瀬が離婚したことも理解していなかった。

 

 

 成瀬は法子から,文化祭でバンド演奏をするから聞きに来て欲しいと頼まれるが,それを忘れてしまい絶縁される。

 

 音楽隊の演奏会は,グズグズで出席した県知事は署長と音楽隊廃止の話をする。

 ただ,いつも聞きに来るという老婦人だけは,勇気をもらったと褒めてくれる。

 

 成瀬は中途半端な気持ちで音楽隊の活動をしており,捜査会議に乗り込んで主犯の目星を伝えようとするが,相手にされず気力を失う。

 

 だが,子どもの頃,幸子に勧められて和太鼓の練習に励んでいた頃のことを思い出し,担当のドラムの練習に打ち込む。

 貸しスタジオで練習していた成瀬は偶然,法子のバンドメンバーと会い,メンバーに勧められてセッションをする。

 それは意外に楽しく,成瀬は法子との関係を修復する。

 

 成瀬が中心になって音楽隊は熱心に練習するようになり,防犯キャンペーンの街頭での演奏はかつてないほど上手く行き,例の老婦人も喜んでくれる。

 

 

 成瀬は自分のこれまでのやり方を反省し,部下だった坂本にも謝る。

 

 

 だが,その間にアポ電強盗事件で被害者が死亡するという事件が起きる。

 その被害者は,いつも音楽隊の演奏を聴きに来てくれていた老婦人だった。

 

 真夏のミュージックフェスタという催しに音楽隊も参加することになっていたが,坂本はその場所で西田がアポ電強盗事件の首謀者と接触することをつかみ,首謀者を逮捕する計画を立てる。

 

 西田に接触した男にピエロに扮した音楽隊のメンバーが迫り,彼を逮捕しようとするが,老人に見えたその男の意外な抵抗に遭い,刑事たちも取り逃がしそうになる。

 だが,人混みに紛れて逃走寸前の男を成瀬が見つけ,最後は音楽隊のメンバーが協力して何とか取り押さえる。

 

 その後,廃止の決まっていた音楽隊は最後の定期演奏会に臨み,成瀬や春子たちは存分に演奏を楽しむ。

 

 

 その頃,音楽隊がアポ電強盗事件の犯人を取り押さえる様子が,動画で拡散されており,署長は音楽隊の解散を強行できなくなっていた。

 

 

 刑事が音楽隊に移動になってのドタバタを描く作品かと思ったら,事件についても同時進行で話が進むし,音楽隊は廃止の危機にあるという状況で,ちょっと予想と違う展開だった。

 

 成瀬の捜査方法は,さすがに無理があると感じるし,全体的にちょっとどうかなと思うシーンもあったけど,全体としてのストーリー展開は良くできている。

 

 フラッグをぽろぽろと落とすカラーガード隊は,ある意味リアルで面白かったし,こういう普通の役をやるモトーラ世理奈も珍しい。

 

 見上愛は,これまで認識していなかったけどギターも上手いし演技も悪くない。

 どっちもできるせいで,あまりメジャーになれなかったのかもしれないけど。

 これからは注目してみたい。

 

 主犯役は,ずいぶん強いジジイだなと思ったら,小沢仁志だった。