荒川青(若葉竜也)は古着屋の店長をしているが,最近,恋人の川瀬雪(穂志もえか)から別れを切り出された。

 雪が浮気をしていることが分かったが,その相手と付き合いたいので別れて欲しいというのだ。

 

 

 青が別れることを拒否をしても雪は考えを変えなかったが,その相手が誰かについては,絶対に教えようとはしなかった。

 

 青が店番をしていると大学で映画の勉強をしているという高橋町子(萩原みのり)が来て,自分の卒業制作の映画に出て欲しいと頼まれる。

 

 

 青は経験もないし無理だと断ったが,悪い気はしなかったし,熱心に頼まれたので承諾する。

 

 青は,行きつけの古本屋の店員田辺冬子(古川琴音)に自分の演技シーンを撮影してもらって練習をする。

 

 

 演技といってもただ自分の好きな本を読むだけのシーンでセリフもないのだが,撮影されていると思うとそれすら自然にはできない。

 

 青の行きつけのバーでは,マスターから,雪が「青が別れてくれなくて困っている」というグチを言っていたと聞く。

 青は,そこで小説家だと思っていた顔見知りの常連客が舞台のオーディションを受けていると聞いて驚く。

 前よりずいぶん太ったと思ったら役作りだと言う。

 

 青は撮影現場に行き,控え室に通されるが,そこに朝ドラにも出ている俳優の間宮武(成田凌)が来たのに驚く。

 「学生の卒業制作にも出るんですね」という青に間宮は,「本を読んで面白いと思えば出ます」と答える。

 青は,「元カノがあなたの大ファンだったんです,会ったって教えたら驚くだろうな」と言うが,間宮から「元カノ?」と確認されて,「連絡すると迷惑がられているから,やっぱり言わない方が良いかな」と言い,間宮もそれにうなずく。

 その後,青はスタッフから,間宮みたいな有名人でも彼女とは上手く行っていないらしいという話を聞く。

 

 撮影が始まり,間宮は無言で本を読むシーンを難なくこなして帰って行く。

 

 

 青の番になるが,どうしても自然にできず20テイクを超えたところで,スタッフの中から代役を立てて撮影する。

 高橋からは,カットになる可能性が高いですと言われ,青は気にしないで下さいと答える。

 

 その後,打ち上げがあると言われてついて行くが,その席で高橋が映画のスタッフと青の起用をめぐって口論になる。

 青が気まずい表情で座っていると衣装を担当していた城定イハ(中田青渚)が隣に座り,あの二人は以前,付き合っていて,何度もくっついたり別れたりを繰り返していると教えてくれる。

 

 イハと青は二次会には行かず,ふたりでイハの部屋で飲み直すことにする。

 

 

 イハの部屋は撮影の控え室に使われていた場所だった。

 何となく気が合ったふたりは,ざっくばらんに互いの恋愛のことも打ち明け合う。

 だが,ふたりは互いに恋愛関係にはなりそうにないと感じてそれを口に出す。

 

 青は雪とのことを話し,イハは最後に別れた彼氏がなかなか別れを承諾してくれず,今でもときどき部屋に来ると言う。

 青は,「じゃあ,ここにいて彼が来たらまずいんじゃないか」と言うが,イハは「突然来ることはないから大丈夫」と言う。

 

 その頃,雪は間宮に別れて欲しいと頼んでいた。

 雪は憧れていた間宮と偶然に付き合うことになったが,いざ付き合ってみると常に緊張してしまい対等の関係ではいられないことを感じていた。

 雪は間宮に,別れた彼との関係がとても居心地が良かったことに気づいたと話す。

 

 雪はその後,青の行きつけのバーに行き,マスターに悩みを打ち明け,朝まで飲み続ける。

 

 一方,青とイハも夜明けまで飲み続けるが,そこに連絡もなしにイハの元カレがやってくる。

 青を見て早合点した元カレにイハは,「そういうことだからもうあきらめて」と言い,青もイハのために,付き合っていないという説明をしなかった。

 

 元カレが帰り,自分も帰るという青をイハがコンビニに行くからと途中まで送っていくと,向こうからマスターと雪が歩いてくる。

 青は雪の浮気相手がマスターだったと思い込み,マスターにくってかかるが,雪は青に「やり直したいと言っていたのにその人と付き合っているの?」と聞く。

 青は,この人とはそういう関係じゃないと言い,イハもそうだというが,そこに自転車でイハの元カレが通りかかる。

 元カレが青とイハに「ふたりでお幸せに」と言ったせいで,その場は大揉めになる。

 

 大騒ぎに耐えられず,雪はイハの元カレの自転車を奪って走り去る。

 

 映画の試写会の日,上映後,田辺は高橋になぜ青のシーンを全部カットしたのかと詰め寄る。

 青はどうせカットになると思って観に来なかったが,一緒に練習した田辺は期待して観に来ていたのだ。

 高橋が変なクレームに困ってると,イハが出てくる。

 高橋がイハに,変な人にからまれて困っていると言うと,イハは田辺にあっさりと「下手だったからカットしました」と告げる。

 そして,田辺に青は雪さんと上手く行っていますか?とたずねる。

 高橋も田辺もイハが青の知り合いだと知って驚くが,イハは親友ですからと答える。

 

 青のアパートに雪が,誰かを連れてやってくる。

 雪は,例の相手がどうしてもあなたに会いたいと言うから,と言って間宮を玄関口に通す。

 間宮と青は互いの顔を見て驚くが,間宮は何も言わずに帰っていく。

 青は雪に,本当に別れちゃっていいのか?と聞く。

 

 青がいつものバーで飲んでいると,ガタイの良い男が役者志望の常連客に会いに来る。

 今日は来ていないというと,役を取ってしまったので謝ろうと思って来たという。

 元相撲取りというその男の体格は,常連客が役作りで太ってもとてもかないそうにはなかった。

 

 

今泉力哉監督作品

 

 「愛がなんだ」の若葉竜也(というか野ブタのシッタカ)と,「少女邂逅」の穂志もえか,「もみの家」の中田青渚に,本当に朝ドラの成田凌と古川琴音というなかなかエモいキャスティング。

 

 話としては,今泉力哉監督の初期の作品に多く見られた登場人物間に意外な関係があって,それが話の中で出てきたり出てこなかったりするパターンのドラマ。

 この映画の中では,5人が鉢合わせになるシーンや間宮が青のアパートを訪ねるシーンが,まさに今泉作品という感じである。

 

 そして,テーマとしては,これまた今泉作品で問いかけられ続けている「ちゃんと好き」ってどういうこと?という問いかけである。

 特に青とイハの話の内容やふたりの関係に象徴されているが,青と雪,雪と間宮,田辺と青の関係それぞれが,この問いに対する答えの一部になっている。

 

 要らないんじゃないかというシーンや設定もないではないが,この作品も面白かった。

 とくに中田青渚は良いな。

 もっとドラマとかにも出て欲しい。