前島りょうこ(吉岡里帆)は,結婚して東京で暮らしていたが夫と離婚し,実家に戻っていた。

 まだ片付かない段ボール箱に埋もれて寝ていたが,目覚ましに起こされ,おならをすると段ボール箱の中から羽織るものを探して,朝食を食べに居間に出て行く。

 

 

 両親は外出中で,縁側の椅子に座った祖父(石坂浩二)から,お前には何か秘密があるかと訊ねられる。

 

 

 両親が離婚の原因について詮索しようとしているのかと思ったらそうではなく,祖父は,人は守るべき秘密がなくなったときに死ぬのかなと言い出す。

 秘密は大事だよという祖父におじいちゃんはいくつ秘密があるの?と聞くと230と答えられ,りょうこは思わず口に含んだ牛乳を吹き出す。

 

 

 アパートに住む藤村(松田龍平)は,いつものように玄関のドアを乱暴に閉めて隣の部屋の伊藤(鈴木福)を驚かせる。

 伊藤が文句を言うと,藤村はあてどのない旅に出ることにしたから,もう戻らないかも知れないと言い,ママチャリのような自転車にホームセンターで買った安い寝袋だけを積んで出発する。

 

 

 近所をふらふらと走っていると空き地にエロ本が落ちているのを見つけ,それを前のカゴに入れて走り続ける。

 広い道に出て走り続けていると,ロードバイクに乗った若者(満島真之介)がさっそうと追い抜いていく。

 意地になった藤村は必死になってペダルをこぎ,何度か若者を追い越すがよそ見をしたときに駐まっていた車にぶつかり転倒する。

 若者に助けられて近くの自販機のそばで話をする。

 

 

 若者は,寝袋とエロ本だけ持って旅に出るなんてすごいですね,と言う。

 エロ本に載っていた引退したAV女優(川上奈々美)が好きだったという話が一致し,若者は途中まで一緒に行きませんかと言う。

 藤村は,あてどのない旅なので,自分探しみたいなダサいのとは違うんですよと言う。

 若者は,ごめんなさい僕のは自分探しの旅です,と言いそこで別れる。

 

 その夜,藤村は安物の寝袋に後悔しながら野宿をするが,学生時代の夢を見る。

 気になってた松原京子(南沙良)と偶然,少し話ができて仲良くなりかけたとき,彼女が入院する。

 

 

 友だちは屁が止まらない病気だと言い,藤村も調子に乗って彼女の屁はきっとすごく臭いと言ってしまう。

 京子が退院してきたとき,藤村が彼女のおならが臭いと言いふらしていたという噂が流れ,さらに尾ひれがついてもっと酷いことを言っていたという話になる。

 廊下ですれ違ったとき,藤村は退院おめでとうと言い,京子はありがとうと答えるが,その直後に藤村は京子から,強烈な右フックを食らい倒れたところで顔面を蹴られる。

 これが藤村の初恋だった。

 

 翌日,漁港を通りかかるとヤスさん(國村隼)という漁師に話しかけられる。

 彼も若い頃は全国を放浪し,知り合った外人の女の子たちとやりまくったという話をする。

 だが,藤村がどこから来たかを聞くと,あきれて隣の町じゃないかと言う。

 まだ,出発したばかりなのでというと一緒に飯を食おうと言って漁協の建物に連れて行ってくれる。

 そこでは,他の漁師たちがヤスさんの誕生祝いをサプライズで企画していた。

 

 

 宴会が盛り上がる中,刑務所から出所してきたという定男(ピエール瀧)がやってくる。

 妻子に逃げられた定男にヤスさんは居場所が分かっているなら謝りに行けと言う。

 定男から聞いた妻子の住所は,藤村の住む町だった。

 ヤスさんは藤村に,旅から帰ってからで良いから,定男のことを伝えてやってくれと頼む。

 

 

 

 高校生の牧田(森優作)はいじめられっ子で友だちがいなかった。

 ある日,伴(九条ジョー)という生徒と二人で,教室の窓ガラスを割ったという疑いをかけられて教師に呼び出された。

 伴は学校一の変人でいつも大声で独り言を言っており,しょっちゅう,死にたいと叫ぶ男だった。

 窓ガラスの件は,伴が,自分がやった,ガラスの破片で喉をかき切って死ぬつもりだったと明らかな嘘をついているときに教師が校内放送で呼び出されてうやむやになる。

 やはり友だちがひとりもいない伴だったが,牧田と意外に話が合い,友だちになる。

 

 

 ある日,伴は,牧田の姉ちゃんって美人なんやて,芸能人で言うと誰に似てる?と聞いてきた。

 牧田は松浦亜弥をブスにした感じかな,と答える。

 それから伴は,牧田の姉のことに異常に興味を持ち初め,しょっちゅう話を聞きたがるようになった。

 会いたいと言うが,岡山の大学に行っているから家にはいないというと,とても残念そうだったが,ある日,思いつめたようにお前の姉ちゃんのパンティーを売ってくれと言い出した。

 牧田に姉はいなかった。

 

 伴は,誰かが冗談で「牧田の姉ちゃんって美人らしい」と適当に言ったのを聞きつけて真に受けたのだ。

 牧田はコンビニで女性用のパンティーを買おうとするが,たまたま目が合ったあてどのない旅の途中の藤村に見つめられ,恥ずかしくなって逃げ出す。

 牧田はゲームセンターのカプセルクレーンにパンティーがあったのを思い出し,苦労してそれを取り,なんども洗ったり自分ではいたりして使用感を出して伴に渡した。

 

 

 伴は大喜びでそれを受け取ったが,架空の姉への執着はさらにエスカレートする。

 

 

 牧田の姉に会いたいという気持ちが募って,飯も食わずにさまよい,牧田につきまといだした。

 

 

 牧田は意を決して伴に,姉ちゃんは1週間前に交通事故で死んだと嘘をつく。

 仏壇には中学のとき好きだった本田さん(木竜麻生)の写真を飾った。

 それを見て伴は泣き崩れる。

 

 

 高校卒業後,牧田は大学に進学し,伴は地元で就職したが,付き合いは続いていた。

 ある日,伴は牧田の姉ちゃんに会ったと言う。

 姉ちゃんは死んだというと,それは分かっているけどそっくりなんやと伴は言う。

 牧田は,すべてを察する。

 伴は,飲食店でアルバイト中の本田さんに会ったのだ。

 

 伴は何度も本田さんに告白して振られ続けていた。

 牧田はそりゃそうだろうと思いながら伴の話を聞いていたが,ある日、本田さんとデートしたと言って写真を見せてきた。

 満面の笑みを浮かべた伴と一緒に嫌そうな顔で写っていたのは,紛れもなく牧田が好きだった本田さんだった。

 

 しばらくして伴はとんでもないことを言い出した。

 本田さんに告られたけど断ってやったと言うのだ。

 

 

 牧田は伴を怒鳴りつけ,すぐにOKしてこいと言った。

 伴は目が覚めたようになり夜の街に飛び出すと大声で叫びながら駆けて行った。

 

 その後,伴と本田さんは結婚することになり,結婚式には牧田も招待される。

 ウエディングドレス姿の本田さんはやっぱり可愛く,牧田はなんとも言えない気持ちになる。

 

 

 本田さんは牧田を見て,伴くんから恩人だって何度も聞いた牧田くんって同級生の牧田くんだったとは,と言う。

 伴くんから,全部牧田くんのおかげだって聞いたけどどう言うこと?

 そう聞かれた牧田は,さぁ?と言ってあいまいな表情でとぼけるしかなかった。

 

 伴は幸せに暮らし,2人目の子どももできたらしい。

 

 

 牧田が,こんどは俺がパンツを貰おうかなと冗談を言うと,伴は,いくら親友でも言うてええことと悪いことがあるぞと本気で怒った。

 牧田はあきれて言葉を失う。

 

 伴は今でも,姉ちゃんの命日には仏壇にお参りに来る。

 写真は中学時代に2番目に好きだった前島さんのものに変えてあるが,伴は気づかない。

 牧田は,駅前で前島が通りかかったのを見て思わず声をかける。

 前島は,中学以来会ってないのによく気づいたねぇと言い牧田と少し話をする。

 前島は,私はいろいろあったよと言い,牧田くんには何か秘密はある?と尋ねる。

 牧田はこの世の中は,誰かが守っている秘密で成り立っているのかも知れないと思う。

 

 

 小学生の頃,マサルの父(竹原ピストル)は働いておらず,マサルをどこにも連れて行ってはくれなかった。

 ある日,押し入れの奥を探って何かを見つけた父は,マサルを連れて夜中に車で出かける。

 

 

 着いたのは父が昔,通っていた高校で,2人で校門を乗り越えて中に入る。

 父が押し入れで見つけたのは部室の鍵で,マサルに見張らせて高校時代にたむろしていた部室に入り込むとサンドバッグを見つけてそれを叩きだす。

 するとマサルが,オバケがいたと言って部室の前に来て,おしっこを漏らしたズボンを見せる。

 父はサンドバッグを持ち出し,校庭の水道でマサルのパンツを洗い出す。

 

 その時,4階の教室の窓が割れガラスの破片が落ちて来る。

 牧田と伴が疑われた窓ガラスを割っていたのは真っ白なマネキン人形(松井玲奈)のようなものだった。

 父とマサルが窓を見上げるとマネキン人形がこちらを見て窓から落ちて来る。

 そのマネキンは四つん這いで着地すると立ち上がり2人のほうに近づいて来る。

 そしてマネキンが2人に当たり前のように季節の挨拶をすると,父はおしっこを漏らしてマサルを置いて逃げ出す。

 マネキンはマサルを無視するように隣を通り,出しっぱなしになっていた水道を止める。

 マサルが,ありがとうと言うとマネキンは,え?と言ってマサルを見る。

そのとき台車にサンドバッグを乗せた父が叫びながら走ってきて,マサルの手を引いて逃げ出す。

 車に戻って走り出した父にマサルは,あの幽霊は良いもんかな,悪もんかな?と聞く。

 父は良いもんやろ,と言う。

 

 窓から飛び降り自殺をした女学生の幽霊だったのか・・・

 

 

 父が部室から持ち出したのはサンドバッグと例の引退したAV女優のDVDだった。

 途中の自販機で父は缶コーヒーを買って飲む。

 マサルにも何か飲むか?と聞くとマサルも缶コーヒーと言う。

 だが,やはり苦くて飲めない。

 飲めると思ったんだけどなぁ,ココアにすれば良かったというマサルに父は,人生はそんなことの繰り返しだと分かったようなことを言う。

 

 父は庭の物干しにそのサンドバッグを吊して叩いていたが,1週間くらいで女(倖田來未)を作って家から出て行った。

 

 

 母はその後,亡くなったがマサルが大人になったある日,父が吊したサンドバッグが落ちる。

 

 

 するとしばらくして父が帰ってきた。

 

 伊藤はレンタルビデオ屋でアルバイトをしている。

 帰り際に「おはよう」と書いたメモをカウンターの上に置いて帰るが,翌朝,それを見るのも彼自身だった。

 返却されたAVの例の女優が気になった伊藤は「おまんこ」と書いたメモを置いて帰る。

 翌朝,出勤するとなぜかメモの位置が変わっていた。

 

 

 伊藤が妙にわくわくしていると,例のAV女優がベビーカーを押して店に入ってきた。

 

 

 

 彼らの住む町には妙な空手道場があり変な師範代(安藤政信)が,みんなの動きを見守っている。

 

 

 

 

 

 大橋裕之の初期短編集の実写化

 ゾッキというのは,古本屋用語で寄せ集めという意味らしい。

 

 実際には,全く独立した話を結構,無理に関連付けている。

 例えば吉岡里帆が演じた前島りょうこは,前島とりょうこという全く別の話の別の登場人物をくっつけているし,ストーリーごとのつながりも原作にはない。

 

 それはともかくとして,やはり伴くんの話が圧巻である。

 ありそうでなさそうで,やっぱりあるかもしれないようなストーリーが生き生きと描かれている。

 伴くんを演じた九条ジョーはお笑いコンビの片割れだが,存在感がすごい。

 牧田が,今度はパンツをもらう番と言ったときに伴が真剣に怒って牧田が黙るシーンは,原作では,牧田は「心の中で真剣に殴ってやろうかと思った」とあって,そっちのほうが納得できた。

 

 松田龍平の使い方も贅沢だし,南沙良もドラゴン桜に出るのでこれからも楽しみ。

 

 吉岡里帆のおならにも驚いたけど,松井玲奈もよくあんな役をやるなぁと感心する。

 

 なかなか面白くて,結局,原作漫画を買ってしまった。