秋本香住(清原果耶)は18歳の女子高生であり,受験に備えて予備校の個人講習に通っている。

 数学の担当は大野康臣(成田凌)というルックスは良いが,女心はもちろん世間の常識にも疎い勉強一筋に歩んできた男である。

 

 香住は大野の前では恋愛マスターぶってマシンガンのような毒舌で彼をやり込めているが,実際にはたいした恋愛経験があるわけではない。

 また普段は調子を合わせている自分の同級生たちが,悪口と噂話しかしないことにも内心うんざりしている。

 

 香住の憧れは宮本功(小泉孝太郎)という青年実業家であり,教育や知育玩具を取り扱う会社を経営するとともに,自らの教育論の本を出版し講演会も行っている。

 香住は彼の講演会会場の喫煙所で待ち伏せをして思いの丈を彼にぶつける。

 しかし,そこに現れた戸川美奈子(泉里香)という女性が彼の婚約者であることを知り,ある策略を練る。

 

 香住は大野に女性との付き合い方を練習させるという名目で,美奈子と知り合わせて彼女と宮本の仲を裂こうと考えたのだ。

 

 

 そのための第一歩として,まずは大野を美奈子の友人と知り合わせ,共通の知人を持つ者として出会わせることを計画する。

 香住は美奈子の友人が経営する陶磁器店に連れて行き,知り合いの引越祝いという名目で商品を選ばせる。

 

 

 香住は大野の妹の振りをして同行するが,彼は教えた台詞の順番を間違えたり,非常識なことを言ったりして全く上手く行かない。

 香住は怒って計画を投げ出して帰ろうとするが,大野も香住の態度に腹を立てて言い合いになる。

 

 しかし大野は,このままでは孤独死が待っているという香住の言葉に不安をつのらせ,もう一度計画を立ててくれるよう,彼女に頼み込む。

 その真剣な態度を見た香住は,自分が少し大野に惹かれていることを感じる。

 

 

 香住の友人たちは,他校のイケメン柳(倉悠貴)が自分たちの高校の君島彩夏(山谷花純)と付き合っていることが気に入らず,いつも彩夏の悪口を言っているが,ある日,彼女がガールズバーでアルバイトをしているらしいという噂話をする。

 香住が話の出所を聞いても,友人たちはあいまいな話で悪口を続ける。

 すると香住は,近くにいた柳と彩夏のところに行き,直接,彼女に事実か確かめる。

 見ず知らずの香住にいきなり話しかけられて柳と彩夏は戸惑うが,彩夏はそれは自分の実家のスナックを手伝っているという話だと思うと答える。

 彩夏がうちはバーだと言い,柳がどうみてもスナックでしょうというやり取りをしているのを見た香住は,人を好きになるというのはどういうこと?と聞いてみる。

 ふたりは,ところであんた誰?と言いながらも,同じ人がある日,違って見えることがある,それが好きになることだと思うと答えてくれる。

 ふたりが付き合うようになったきっかけは,柳が初めて店を手伝った日に同じカウンターの中で見た彼女が,ただの幼なじみとは違って見えたからと言う。

 香住は,大野が今までと違って見えた瞬間のことを思い出す。

 

 だが大野は香住の気持ちには全く気付かず,美奈子との接触方法を考えてくれるよう香住に頼み続ける。

 香住は腹立ち紛れにずさんな策を与えて,大野が失敗するところを見てやろうとする。

 だが大野が無策で美奈子に接してみると,意外に良い感じになってしまいスマホでモニタリングしていた香住はモヤモヤする。

 そして,彩夏の実家のスナックでエナジードリンクを10杯飲んでくだを巻く。

 

 

 そんなとき,香住のスマホに宮本から電話があり,結局,香住はホテルに連れ込まれる。

 最初は拒否していた香住だったが,大野から美奈子が自分とのことを真剣に考えくれているという連絡を聞き,宮本に身を任せようとする。

 だが,宮本は香住を大学生だと思っており,彼女が高校生だと知るとさすがにそれはできないと言う。

 

 ホテルから先に出された香住は,大野に美奈子を連れてホテルの前の道を通るように指示を出し,宮本が出て来たところで彼と腕を組み,美奈子に宮本のやっていたことを暴露してみせる。

 

 

 美奈子は大野の腕を引き,そのホテルに入っていく。

 ホテルの部屋で美奈子は大野に宮本と別れると告げるが,いつまで待っても大野のところには美奈子から連絡はなかった。

 大野と美奈子の結婚には親の仕事が絡んでおり,そのことは香住も大野も知っていた。

 

 すっかり落胆した大野に香住は,それが世間の普通というものだよと慰めるが,大野はそれでいいのか?と問う。

 香住と大野は宮本の講演会に乗り込み,大野は関係者のいる場所から美奈子を呼び出し真意を確かめる。

 やはりこの結婚は断れないという美奈子を大野は責めなかった。

 

 一方,香住は講演後の質問で宮本が指名した女性のマイクを奪い,何のためにこんな講演をやっているのかと質問する。

 焦りながらも平静を装って,世の中を変えたいと答える宮本に,香住は身近な人の幸せを守れないで世の中を変えられるのかと問う。

 宮本はそれが一番難しく,つい身近な人の存在を当たり前と思ってないがしろにしてしまうが,自分もそれに気をつけて生きていきたいと答える。

 香住は,宮本さんと結婚される方は幸せですねと言って会場を後にする。

 美奈子は舞台の袖でそのやり取りを聞いていた。

 

 香住は大野が美奈子に言っていた自然の音が聞こえる場所に連れて行って欲しいと頼む。

 

 

 そこで,香住は大野に好きだと伝え,大野も香住が好きだと答える。

 

 

 

 清原果耶待望の主演作であり,とても面白かった。

 マシンガンのように毒舌を吐いたり,悪巧みをしたり,エナジードリンクでくだを巻くところがとても可愛く,やっと見たかった清原果耶ちゃんが見れた気がした。

 

 演技はみんな素晴らしく,特に小泉孝太郎の細心の演技が光っていた。

 彼が善悪の微妙なラインを踏み外さないことによって,この映画全体の雰囲気が単純化されることなく保たれていた。

 

 柳と彩夏のカップルもとても好感が持てる設定で,香住ともっと親しくなるシーンも見たかった。

 

 成田凌は,一見,大根イケメン風だけど,やらせてみれば結構どんな役でも上手く演じて感心する。

 この役も十分,感情移入できる演技で良かった。

 

 好きな映画の一本になった。