榛原華子(門脇麦)は開業医の3女であり良家の子女として育ってきたが,27歳になっており,同級生のほとんどは既に結婚している。

 独身でいるのは,バイオリニストの相良逸子(石橋静河)くらいである。

 

 

 華子にも付き合っていた人はいたが,仕事を辞めるまでして結婚を迫ったことに恐れをなしたのか逃げられてしまった。

 

 彼女の一族は元旦にホテルで夕食会を開いていたが,遅れてきた華子は連れてくるはずだった婚約者がいないことを後ろめたく思った。

 

 祖母は医師との見合いを勧め,華子は承諾したが,長女は絶対にろくな男ではないと予言した。

 長女は皮膚科医をしているが,夫と離婚して息子を育てている。

 診療科が違うため実家を継ぐことはできないが,華子には自由に生きれば良いといつも言っている。

 

 見合い相手の医師は,長女の予言通りコミュ障の変な男で,華子は逃げ出してくる。

 

 

 その長女が勧めてくれた相手は,世慣れてはいるが上から目線の俺様系であり,華子はお姉さんの再婚相手なら分かるけどと言う。

 今度は友人が勧めてくれた男と会うことにするが,気さくと言うよりはがさつな男で,ごみごみした居酒屋に連れて行かれ,華子はトイレの汚さに驚いて店から飛び出してしまう。

 

 次女の夫は会社勤めをしてるが,華子が子どもの頃から知っており,一番気さくに話せる相手である。

 彼が勧めてくれた青木幸一郎(高良健吾)という弁護士と会ってみる。

 するとルックスも良く紳士的で,華子はその出会いを奇跡だと思って舞い上がってしまう。

 

 逸子にのろけてみせると,彼女は意外なことを知らせてくれる。

 華子や逸子は,いわゆる上流階級に属する人間だが,幸一郎は更に上の階級の人間だというのだ。

 実家は財閥といえるほどの資産を有し,一族には代議士もいる。

 

 しかし,幸一郎は傲慢に振る舞うこともなく,華子に真摯に向き合い,ついに求婚する。

 

 

 だが,そこからはやはり一族の権威を見せつけられることになる。

 育ちの良い華子は,親族との対面もそつなくこなすが,そこで身元調査をされていたことを聞き驚く。

 

 

 だが,幸一郎は「普通のことでしょ」と意にも介さない。

 

 ふたりは結婚に向けて進んでいくが,ある日,華子は幸一郎の電話に美紀という女性から親しげな内容の着信があることに気づく。

 

 一方,逸子は演奏者として招かれたパーティーで時岡美紀(水原希子)という女性と知り合うが,彼女は幸一郎と親しげに振る舞っていた。

 

 

 逸子は意を決して,美紀と華子を対面させる。

 

 

 美紀は富山の田舎から必死に勉強して慶応大学に入学するが,一緒に上京した平田里英(山下リオ)とふたりで驚くことばかりの日々を過ごす。

 

 

 幼稚舎(小学校)からの内部進学者に誘われてホテルにお茶をしに行ったら,ひとり5000円もかかって詐欺か?と思ったりもした。

 

 そんな彼女のノートを授業をサボって借りパクしたのが,幸一郎だった。

 もちろん彼も内部進学者であり,何の面識もない美紀に声をかけてノートを持って行ったまま返さなかったのだ。

 

 その後,美紀の実家は仕事が上手くいかなくなり,彼女はアルバイトで学費を稼ごうとするが,水商売をやっても慶応の学費はどうにもならなかった。

 そのため,彼女は大学を中退してホステスになるが,ある日,客としてやって来た幸一郎にノートの話を持ち出す。

 それがふたりが付き合うようになったきっかけだった。

 

 美紀は幸一郎の世話でホステスを辞め就職するが,パーティーのときには接待要員として良いように使われている。

 

 美紀は逸子のさばけた人柄や,華子の純真さに好意を持ち,幸一郎とは別れると決める。

 

 美紀は幸一郎をいつもの街中華の店に呼び出して別れを告げる。

 

 

 幸一郎が素の自分でいられるのは,実は美紀といるときだけだったが,美紀は彼に私がどこで生まれたかも知らないでしょうと言う。

 

 美紀は実家に帰ったとき,高校の同窓会で里英と再会していた。

 

 

 ふたりは東京で目の当たりにした上流階級の人たちと,地元の連中の行動パターンが似ていることを話す。

 同じレベルの人間とだけ付き合って,同じように振る舞い,何も考えず父親のコピーになる。

 それが金持ちの家業か,田舎の自動車修理工場かという違いでしかない。

 

 里英は東京で起業しようと頑張っているという。

 東京で再会したふたりは,一緒にやっていくことにする。

 

 一方,華子は幸一郎が議員秘書から代議士への道を進もうとしていることに驚く。

 

 

 だが,それは彼の一族としては当然の成り行きであり,華子は育ちは良くても上流階級の裏事情には全く疎かったのだ。

 

 次第に疎外感を感じるようになった華子はある日,車の窓から,街を颯爽と自転車で走る美紀を見かけ呼び止める。

 美紀のアパートに招かれた華子は,彼女が,自分が生きたいように生きていることに感銘を受け,幸一郎に離婚してくれるように頼む。

 

 数年後,華子は逸子のマネージャーとして彼女の演奏活動を支えていた。

 

 

 

 金持ちの家に生まれ,苦労知らずで世間知らずだが,純真な女性を門脇麦が好演している。

 石橋静河,水原希子,山下リオもそれぞれにいいキャラを出している。

 山下リオは,若い頃のイメージとは大分,違う感じになったけど,これもありかな。

 

 それぞれの登場人物の生い立ちについて,それほど深掘りはされていないが,現実には誰もが何かのトラウマ的なものを抱えているというわけではないので,自然な感じで良いと思う。

 華子と逸子から,自分たちは苦労知らずだという後ろめたさを微かに感じるところも上手い。

 

 大学から慶応という人と,幼稚舎からという人はどちらも知っているが,どちらの人生が上手く行っているかというと,かなり微妙な気もする。

 

 華子と逸子,美紀と里英というふた組の女性同士の友情が最後に残るという結末は,明るい気持ちにさせてくれる。