大学生の鈴川恒夫(中川大志)は,ある日,坂道を猛スピードで下ってくる車椅子を見て,座っていた女性(清原果耶)を助ける。

 

 

 彼女の祖母チヅ(松寺千恵美)が言うには,坂の上で,嫌がらせで誰かに車椅子を押されてしまったのだという。

 

 恒夫はチヅに強引に誘われ,彼女たちの家で食事をすることになる。

 恒夫はその料理が,質素ではあるがとてもおいしいことに驚く。

 

 車椅子の女性は,生まれつき体が不自由で歩けないということだったが,本名のくみ子と呼ばれることを嫌い,恒夫に,サガンの小説の主人公であるジョゼと呼ぶことを命じた。

 

 恒夫がダイビングショップでアルバイトしていることを話すと,チヅはもっと割の良いアルバイトとしてジョゼのお守り役を提案する。

 将来の留学費用が必要だった恒夫はその話に乗り,チヅがパチンコに行っている間,ジョゼの相手をすることになる。

 

 チヅの出した条件は,ジョゼを外に出さないということだったが,ジョゼからチヅが自分の存在を恥じて人目につかないようにしていると聞き,彼女の外出を手伝うようになる。

 

 

 ふたりで出歩くようになり,互いのことを知るようになる。

 

 

 ジョゼは幼く見えるが,実は恒夫よりも2歳年上であること,恒夫はダイビングが趣味であり,海洋生物の研究をしたいと思っていること。

 

 

 また,ふたりで図書館に行った時,ジョゼは司書の岸本花菜(Lynn)と仲良くなり,はじめて友だちができる。

 

 チヅはジョゼが言いつけに反して出歩いていることに気づいていたが,気づかないふりを続ける。

 

 ダイビングショップのバイト仲間二ノ宮舞(宮本侑芽)は,恒夫のことが好きであり,彼がジョゼにかかりきりになっていることが気に入らない。

 

 

 ジョゼは恒夫のアルバイトに興味を持ち,彼にダイビングショップに連れて行ってもらうが,ジョゼと舞はひとめで反目し,ジョゼはひとりで帰ってしまうが,鈍感な恒夫はふたりの気持ちが分からない。

 

 

 一方,ジョゼは花菜との付き合いによって,あきらめていた絵の道に挑戦しようという気持ちが芽生える。

 

 その頃,恒夫には夢だったメキシコ留学が実現する予定が立つ。

 

 

 しかし,恒夫とジョゼの関係はチヅの死によって大きく変わろうとする。

 

 恒夫にバイト代を支払ってジョゼの世話をしてもらうことができなくなっただけではなく,生活保護世帯であった彼女の家は,自立が困難として役所から対応を求められる。

 ジョゼは絵を描くこともあきらめ,うつろな日々を過ごす。

 しかも彼女は舞から,恒夫があなたに付き合っていたのは同情からだと言われ,恒夫も避けるようになる。

 

 しかし,恒夫はジョゼを捜し回り,かつてふたりで行った海岸で彼女を見つける。

 

 

 ジョゼはもう関係ないとひとりで帰ろうとするが,雨が降り出し,彼女の車椅子は道路を渡りきる前に転倒しジョゼは投げ出される。

 そこに車が走ってくるが,恒夫は飛び出してジョゼを守る。

 ジョゼは軽傷で済んだが,恒夫は足を複雑骨折し,治ってもダイビングはできない可能性が出てくる。

 そして,メキシコ留学の話もなくなる。

 

 今度は恒夫が夢を失い無気力な日々を過ごすが,舞は,夢を追わずに自分の近くにいて欲しいと望む。

 

 花菜はジョゼに恒夫を勇気づけるためにもう一度,絵を画くことを勧める。

 そして,ジョゼの画いた絵本の読み聞かせに恒夫を招く。

 それは人魚姫を題材にした物語で,人魚姫が自分を守るために翼を失った恋人を命がけで励ます内容だった。

 

 恒夫はリハビリを頑張り,やがて留学の夢を叶える。

 夏休みに日本に戻った恒夫は,ジョゼと再会を喜ぶ。

 

 

 

 かつて,妻夫木聡と池脇千鶴の実写版に感動したので,アニメ版とは言えジョゼを清原果耶ちゃんがやるとなれば観ないわけにはいかない。

 

 ところが,実写版とストーリーが全く違うので,原作はいったいどうなっているのかと思って読んでみた。

 

 すると,原作はかなり簡単なあらすじ語りに近い内容だったが,実写版は登場人物のキャラ付けやエピソードの面でとても巧みにふくらませてあり,脚本の素晴らしさに改めて驚かされた。

 

 アニメ版は設定だけを借用して,夢を追う若者の青春ストーリーに仕立てたもので,いかにも今風であるが,実写版に比べると深みに欠ける。

 ジョゼと恒夫の複雑に屈折したリアルなキャラは,原作というよりも実写版オリジナルの部分が大きいので仕方がないのかもしれないが。

 

 しかし,原作には出てこない司書の花菜さんのキャラがなかなか良くて,ジョゼに心を許せる女友達ができるという展開は悪くないと思った。

 

 清原果耶ちゃんは大阪弁ネイティブなのだが,アニメ版のキャラ付けもあって,少し物足りないのが残念。