小説家の美倉洋介(稲垣吾郎)は人気作家であるが,創作に行き詰まっていた。

 そんなとき,地下道で寝ている汚い女が意外な知性を持っていることに気づき,彼女を家に連れて帰る。

 

 

 彼女はばるぼら(二階堂ふみ)と名乗り,美倉の小説をつまらないと貶して,彼の家で好き放題に振る舞う。

 

 

 一度は彼女を持て余し,追い出した美倉だったが彼女と過ごすことで創作意欲が湧いてくる気がして付き合い続ける。

 

 

 担当編集者の甲斐加奈子(石橋静河)や作家の友人四谷弘行(渋川清彦)は,美倉の生活がすさんでいくのを心配するが,彼は相手にしない。

 

 

 ただ,美倉は洋服店のマネキンが自分を誘惑する幻想にとらわれるが,その幻想から彼を救ったのは,ばるぼらだった。

 

 

 一方,有力な政治家里見権八郎(大谷亮介)は娘の志賀子(美波)と美倉を結婚させ,彼の知名度を利用しようとするが,美倉にはその気が全くなかった。

 

 

 しかも美倉は,志賀子の飼い犬が彼女になって自分を誘惑する幻想にとらわれるが,ここでもばるぼらが彼の幻想を覚ます。

 

 美倉はついにばるぼらとの結婚を決意し,彼女の母親ムネーモシュネー(渡辺えり)と会うが,彼女たちは得体の知れない組織に属しているようだった。

 

 

 怪しげな儀式でふたりの結婚式は始まり,美倉も大麻らしきものを吸わされたが,警察が踏み込み参加者は散り散りになる。

 警察沙汰になったことで美倉は一気に地位を失い,ばるぼらを探してさまよう日々が始まる。

 

 ある日,彼が見つけた女は,自分はばるぼらではないと言い張ったが,結局,ばるぼらであることを認める。

 

 

 彼女は儀式を台無しにしたことで,ムネーモシュネーから復讐されることを恐れており,それは美倉についても同じだと言う。

 それを聞いた美倉は,ふたりで逃げようと言いクルマで人気のない山奥まで逃げる。

 

 

 だが,途中でふざけている時に頭を強く打ったばるぼらは,逃げ込んだ山荘の中で急に死んでしまう。

 ばるぼらの死体と過ごした美倉は,それを食べようとするが,猛烈な創作意欲に駆り立てられる。

 

 

 手塚治虫の成人向けマンガの映画化で,息子の手塚眞が監督をしている。

 

 原作と映画の関係を書いたものを読むと,映画の内容として,そんなシーンあったっけ?と思うようなことがいろいろと書かれている。

 原作を読んだ人が観ると,断片的な描写からでも,原作のあの部分だなと思い当たるのかも知れないが,読んでいないとどうにもよく分からない部分が多い。

 

 マネキンや犬とセックスを始めようとするシーンは,原作では美倉が元々持っていた性癖らしいが,映画ではばるぼらと出会って後のこととして描かれているので,彼女の影響でマネキンや犬が人間の女に見えるようになったのか,と思ってしまった。

 映画の中でもその幻覚から引き戻してくれたのがばるぼらなので,ちぐはぐな感じはしていたのだが。

 

 ラストシーンも結局,どうなったのかが描かれておらずモヤモヤする。

 

 原作を読んでいる人向けの映画というのは,いかがなものかという気がする。