佐都子(永作博美)は,会社の上司だった栗原清和(井浦新)と結婚し,幸せに暮らしていたが,なかなか子どもができなかった。

 

 

 検査したところ,清和の精子の数が少ないと言うことが分かり,不妊治療を始める。

 有名な医師がいるということで北海道まで通うことになったが,不妊治療は,夫婦とも精神的にも肉体的にも辛かった。

 

 ある日,雪のために北海道行きの飛行機が欠航になり,ふたりは息抜きのために温泉に行く。

 旅館の部屋でテレビを観ていると,生みの親が育てることが出来ない子どもを特別養子縁組させるベビーバトンという団体の特集をやっていた。

 ふたりは不妊治療を辞め,養子を考えるようになる。

 

 

 中学生の片倉ひかり(蒔田彩珠)は,両親が姉の美咲(駒井蓮)にだけ期待をしているように感じ,家庭で疎外感を味わっていた。

 そんなとき,自分が好きだった巧(田中偉登)も自分のことを好きだと知り,交際を始める。

 ふたりの気持ちは純粋だったが,ひかりの妊娠が分かってもどうすることも出来なかった。

 ひかりの両親は,生まれてくる子どもをベビーバトンを通じて特別養子縁組に出すことを決める。

 初めは自分で育てると言い張っていたひかりも,それが無理なことを理解する。

 

 ひかりは,中学を辞め,浅見静恵(浅田美代子)が運営するベビーバトンの施設で出産までの生活を始める。

 瀬戸内海の島にあるその施設には,ひかりと同じように育てられない子どもを産もうとしている若い女性がいた。

 

 

 さまざまな事情を抱えた彼女たちとの共同生活は,ひかりに居場所を与えてくれた。

 

 

 ひかりが生んだ男の子は朝斗と名付けられ,栗原夫婦の養子となる。

 

 

 通常は生みの親と養親は会わないが,双方の希望で一度だけ面会をする。

 

 

 ひかりは自分の気持ちを綴った子どもへの手紙を栗原夫婦に託す。

 

 朝斗は栗原夫婦の元で順調に育っていくが,幼稚園で友だちをジャングルジムから突き落としたという疑いをかけられる。

 

 

 佐都子は朝斗を信じながらも相手の子ども母親から謝罪がないと責められ,不安な日々を過ごす。

 そんな様子を見た朝斗から,自分が押したと言って謝ったた方が良い?と聞かれ,佐都子は息子の優しさを再確認し,自分がしっかりしなければと思う。

 

 

 その騒ぎは,結局,相手の子どもが自分で飛び降りて足を捻挫したが,ジャングルジムから飛び降りることは禁止されており,怒られるのが怖くて朝斗のせいにしたと分かり解決する。

 佐都子は胸のつかえがおりるが,その頃,自宅に何度か無言電話がかかっていた。

 

 朝斗を生んだひかりは,高校に進学するが,周囲とも家族ともなじめず,結局,家を出てしまう。

 彼女が頼ったのはベビーバトンだった。

 島に渡って静恵に手伝いをさせて欲しいと頼み込む。

 静恵はそれを受け入れ,ひかりは居場所を得るが,ベビーバトンはそのときにいた妊婦が最後のひとりであり,彼女の出産が終われば解散することになっていた。

 

 つかの間の居場所を失ったひかりは,新聞販売店に住み込みで新聞配達を始める。

 ひかりは,そこで地道に働いていた。

 ある日,高校に通う巧を見かけるが,ひかりは声をかけることも出来なかった。

 そんなとき,新しく入ってきた子にメイクを教えてもらったりして仲良くなる。

 だが,彼女は自分の借金をひかりに押しつけていなくなってしまった。

 借金取りたち(青木崇高,若葉竜也)に追われて困っているひかりを見た店主(利重剛)は,彼女にお金を貸してくれる。

 大丈夫と答えたひかりに店主は,昔,自分の彼女が大丈夫と答えた後に自殺したことを話し,力になってくれたのだ。

 借金取りに金を返したひかりは,なぜ私だけがと叫ぶが,借金取りは,お前がばかだからだろうと答える。

 

 ひかりはベビーバトンで手伝いをしていたときに資料から見つけた栗原夫婦の家に電話をする。

 何度か途中で切ってしまったが,ついに自分が生んだ子どもを返して欲しいと言う。

 

 

 栗原夫婦の家に行ったひかりは,自分が朝斗の母親なので,子どもを返して欲しい,無理ならお金を払って欲しい,断ったら,周りの人に朝斗が養子だということをバラすと言う。

 しかし清和は,あなたはひかりさんではないでしょうと言う。

 自分たちは彼女に会ったことがあるが,あなたではなかった。

 それにベビーバトンでは,子どもに養子であることを告げることを義務づけていて,朝斗は自分が養子だと知っているし,近所の人も幼稚園の人もみんな知っていることだから,それは脅迫にはならないと言う。

 

 朝斗はひかりさんのことを広島のお母さんと呼んで,会うのを楽しみにしていたと言う。

 部屋の壁には,朝斗が画いた想像の母親の絵が,広島のお母さんという題とともに貼られていた。

 そして,ひかりが託した朝斗への手紙を見せる。

 ひかりは,床に頭をこすりつけて謝り,帰って行く。

 

 清和は,あれはいったい誰だったのだろうか,と訝る。

 しばらくして,栗原夫婦の家に警察が訪ねてくる。

 新聞販売店の店主から捜索願が出ている片倉ひかりという女性が訪ねて来ていないかと言うのだ。

 警察官が示した写真は,さっき訪ねて来た女性だった。

 

 夜明けまで橋の上で川を眺めていたひかりに佐都子が声をかける。

 彼女は朝斗を連れていた。

 

 

 

 少し前から注目している蒔田彩珠主演?の作品。

 

 ミステリーと銘打たれ,「あなたは誰ですか」というフレーズが謎のように使われているが,ミステリー的要素はない。

 

 二組の人生が,どちらも丁寧に描かれている。

 ひかりの純粋さと幼さが切ないが,静恵や新聞販売店の店主,そして佐都子が,それを理解して支えようとする心情に救われる。

 

 調子外れの赤い風船を歌っていた浅田美代子が,何十年後かに,こういう役をやるようになるとは思わなかったな。

 

 蒔田彩珠は,少しずついろいろなところに出て来ているが,姉をやった駒井蓮も,もう少しドラマや映画で観られるようになるとうれしいな。