ちひろは未熟児として生まれ,病弱で全身に湿疹が絶えない赤ん坊だった。

 母(原田知世)は育児ノイローゼになりかけていたが,父(永瀬正敏)が会社の同僚から勧められた金星パワーの水を使ってみると症状が治まっていった。

 

 ちひろ(芦田愛菜)が中学生になる頃には,その宗教に入信したせいで家はすっかり貧乏になっていたが,両親は信じ込み何の不安も持たずに宗教活動に専念していた。

 

 ちひろ(粟野咲莉)が小学生の時,姉のまーちゃん(蒔田彩珠)は母の兄雄三おじさん(大友康平)と協力して両親の目を覚まさせようとしたことがあった。

 

 

 両親が雄三おじさんに熱心に勧めてその効果を力説する宇宙パワーの水は,2週間前にまーちゃんが協力して公園の水道の水と入れ替えたものだった。

 それに何も気づかなかったことで,自分たちの思い込みに気づくはずだと考えたのだが,そのときいちばん怒ったのはちひろだった。

 バドミントンのラケットで雄三おじさんを叩き,出て行けと叫び続けた。

 そして雄三おじさんに協力したまーちゃんまでハサミを持ちだして雄三おじさんに出て行けと言ったのだ。

 

 まーちゃんはあとで,ちひろに「自分でも訳が分からなく時がある」と言ったが,結局,まーちゃんは宗教のことで両親とケンカをして家から出て行き,戻ることはなかった。

 

 

 小学生の時,ちひろは外国の有名俳優を見てから,周囲の人たちがほとんどみんな不細工に見えるようになった。

 父は目がおかしくなったと思い,例によって宇宙パワーの宿っためがねをかけさせるが効果はなかった。

 友だちのなべちゃんは,それはただの面食いだよと教えてくれた。

 

 中学に入ってもちひろの面食いは変わらなかったが,3年の時に数学の南先生(岡田将生)が転勤してくる。

 

 

 そのイケメンぶりにちひろは一目で南先生を好きになる。

 

 

 授業中はずっと,南先生の似顔絵を描いていた。

 

 ちひろが面食いだと教えてくれたなべちゃん(新音)は,今でも友人であり同じクラスだった。

 

 文集委員のなべちゃんをちひろが手伝い,下校時間を過ぎてしまったとき,南先生が注意に来る。

 早く帰れという南先生に,なべちゃんの彼氏は先生の車で送ってくれとせがむ。

 

 

 しかたなく南先生は3人を自分の車で送るが,ちひろの家の近くで不審者がいると言って,彼女が車から降りるのを止める。

 

 

 それは例の水を頭にかける儀式をしているちひろの両親だった。

 

 

 不審者が2匹もいるという南先生の言葉にショックを受けたちひろは,家に帰っても食欲が出なかったが,元気がないと思った両親にまた水をかけられ,泣き崩れる。

 

 翌日,ちひろは,その水を飲んでいればひくはずのない風邪をひき,保健室で休む。

 

 

 その翌日,ちひろは両親には学校に行くと言って,雄三おじさんから案内が届いた親族の法要に出席する。

 

 

 その後,雄三おじさんから,高校に入学したら,おじさんの家から通わないかと勧められる。

 ちひろの家は,すでに経済的にも限界に来ており,修学旅行の費用さえ,雄三おじさんが出してくれていた。

 ちひろは,おじさんの心配もすべて理解した上で今の家にいると答える。

 

 ちひろのクラスの担任がインフルエンザで休み,ホームルームに南先生が来る。

 インフルエンザの予防法について説明をするが,私語がおさまらない生徒たちに南先生は怒りを爆発させるが,その矛先は無言で南先生の似顔絵を描いていたちひろに向けられた。

 授業を聞かずにずっと俺の似顔絵を描いている,水でインフルエンザが予防できるのなら誰も苦労しない,両親にも言っておけと言って南先生は出て行った。

 

 

 すっかり消沈してしまったちひろをなべちゃんは「アイツ性格悪い」と言って慰めてくれる。

 そして,後から来たなべちゃんの彼氏もちひろが泣いているのを見て心配してくれる。

 

 ちひろは,両親とともに教団の施設に泊まりに行く。

 教団は大きな宿泊施設を保有しており,多数の信者が集まり,こぞって教団の行事に参加していた。

 ちひろと同年代の子どもたちも多く,何の疑問も持たないで参加している。

 

 だが,信者の代理で来たという参加者は,胡散臭そうな表情で行事を見て,世間の悪い噂も口にする。

 

 教祖的な立場の海路さん(高良健吾)や彼に近いと思われている昇子さん(黒木華)は,いつも冷静に振る舞い,自分たちが真実を見ているという態度を崩さない。

 

 

 行事の間中,両親と会わなかったちひろは不安になるが,夜になって両親に星を見に行こうと誘われる。

 

 

 お風呂の時間を心配するちひろにかまわず,星がきれいに見える場所に上った両親は3人で一緒に流れ星を見ようと星空を見続ける。

 

 

 

 芦田愛菜主演の話題作であり,誰かを信じるということは,自分の期待の投影でないかというようなことを彼女が舞台挨拶で言ったことも話題になった。

 

 いきなり金星パワーというような,あからさまに怪しいワードが出てくるので観ている人は,ちひろの両親が騙されているという前提で話に入っていくが,入信のきっかけはリアリティがあるし,ストーリーの中でも教団についての黒い噂はときどき出るものの,教祖たちが私利を貪っているようなシーンはない。

 

 実際のところ,この家族のような人たちは日本中,世界中にいっぱいいるだろうし,ちひろのような立場の子どももたくさんいると思う。

 それを単純に善悪で論じることの難しさを感じさせる。

 

 自分はこんな変な宗教には騙されないと思っていても,不安から何かに頼るときには似たような状況になっているかもしれないし,教祖も信徒も含めて,人間なんて所詮,こんなふうなものだという気もする。

 

 親友のなべちゃんが,ちひろの立場を理解した上で,批判も共感もせず,普通に付き合っているところが,登場人物の中でいちばん大人に感じられ,彼女に比べると南先生がとても子どもっぽく見える。

 なべちゃん役の新音は「まく子」で主演していたけど,演技が上手くて感心した。

 

 蒔田彩珠も最近はどんどん出て来ていて注目株。

 

 芦田愛菜は,子役の時の印象が強いので,ひとりだけで見ると大きくなったという印象だったが,同年代と並ぶとかなり小さいことに驚いた。

 安達祐実路線にはならないで欲しいけど。