三重県津市に住む浅田家の次男政志(二宮和也)は子供の頃の誕生日に父章(平田満)からカメラを送られたことをきっかけとしてカメラマンの道を志すことにし,高校卒業後,大阪の専門学校に進む。
しかし,授業に真面目に出ていなかった政志は,特に優れた作品を提出しなければ卒業ができない状況になる。
講師から出された課題は,人生であと1回しかシャッターを切れないとしたら撮りたい写真だった。
実家に帰ってきた政志は腕から背中にかけて派手な入れ墨をしていたが,家族はほとんど非難もせず,看護師の母順子(風吹ジュン)は感染症に気をつけなさいと言うだけだった。
政志が家族に協力してもらって撮ろうとしていた写真は,自分たちが子供の頃のある日の出来事だった。
専業主夫の章は,ある日台所で包丁を足の上に落としてケガをしたが,それを見た政志は慌てて転び,またそれを見た兄幸宏は階段から落ちて3人で順子の病院へ行くことになった。
3人で包帯を巻いて並び,看護師の順子にあきれられるというその場面は,もっとも浅田家らしい場面だった。
家族全員でそのときの状況を再現した写真は,学長賞を取り政志は無事に卒業する。
家族は彼がそのまま写真家の道を歩むと思っていたが,それから3年間,実家でパチスロ三昧の日々を送った。
幼なじみの川上若奈(黒木華)は,子供の頃に彼に撮ってもらった写真がお気に入りであり,宝物にしていたが,今の政志にはがっかりしたと言って,夢だったアパレル関係の仕事に就くため東京へ出て行く。
政志は自分が撮りたかった写真は一体何か?ともう一度自問してみるが,そのとき専業主夫の父が本当は消防士になりたかったという話しを聞き,兄に消防車を借りてもらうように頼む。
普通に就職していた幸宏は,消防士の同級生に頼み込み,家族全員で消防士に扮して写真を撮る。
母順子はなりたかった看護師になったので,そういうものはないと思ったら,映画で見た極妻に憧れたと言い出す。
そこで,組事務所っぽい門構えの家の人に頼んで,家族全員でヤクザの扮装で写真を撮る。
兄幸宏はレーサーになりたかったというので,サーキットを借りてレーシングチームの写真を撮る。
レーシングカーには政志が乗り,幸宏はなぜかメカニックだったが。
その後も,さまざまなコスプレで家族写真を撮り続けた政志は,その写真を持って東京に乗り込む。
若奈のアパートに転がり込んだ政志は,カメラマンのアシスタントをしながら出版社を回るが,どこも相手にしてくれず,すっかり腐ってしまう。
だが,若奈が自費で個展を準備してくれる。
観に来てくれた人たちは,皆,楽しそうだったが,ひときわ大笑いしていたのが姫野希美(池谷のぶえ)という小さな出版社の社長だった。
彼女はとまどう政志を横目にどんどん話を進めて写真集を出版してしまう。
政志や若奈,そして家族は大喜びするが,その写真集はほとんど売れなかった。
政志はそのことに不安を感じていたが,姫野社長は全く気にしている様子はなく,良いものは良いと笑っていた。
そして,政志の写真集が写真界の最高峰と評される賞を受賞する。
こうしてカメラマンとしての地位を確立した政志は家族写真専門のカメラマンになる。
撮影を希望する家族がいれば日本中どこへでも出張し,その家族の話をじっくりと聞いて,もっともふさわしい家族写真を撮るのだった。
その中には楽しい家族もあれば,闘病中の子どもを励ますための家族写真を撮る家族もいた。
こうして様々な家族写真を撮る中,東北で震災が起こる。
政志が最初に家族写真を撮ったのは,岩手県の海沿いに住む家族だった。
政志は心配になり,その家に行くが瓦礫しか残っておらず家族の安否は不明だった。
その家族を訪ね歩く内,政志は津波で損傷した写真を修復している小野陽介(菅田将暉)と出会う。
彼も友人の安否を尋ねてきたが,分からない内,汚れた写真を放っておけず,修復を始めたという。
政志も彼を手伝い,更に外川美智子(渡辺真起子)という女性も手伝い始める。
陽介の友人は遺体が発見されたが,そのまま彼はそのボランティア活動を続ける。
被災者は自分の家族の写真を見つけると陽介たちに感謝してその写真を持ち帰った。
内海莉子(後藤由依良)という小学生の女の子は,陽介から政志が写真家だということを聞き,図書館で彼の写真集を探してくる。
政志の家族写真を大笑いしながら観ていた彼女は,政志に自分たちの家族写真を撮って欲しいと頼む。
だが,彼女の父親は津波で行方不明になっており,家族全員での写真は不可能だった。
そんな中,父の誕生日に政志は実家に帰るが,誕生会のさなか,父は脳梗塞で倒れる。
幸い命に別状はなかったが半身麻痺が残る可能性があった。
母と昔の写真を観ていた政志はあることに気づき,莉子の家族写真を撮ることができると考える。
また,東京から帰っていた若奈に結婚を迫られ承諾する。
東北に戻った政志は,莉子の妹と母親の3人を連れて思い出の海岸に行く。
莉子の父親の写真がなかったのは,政志の家も同じで,父親が写真を撮るからだった。
莉子がいつも付けていた父親の腕時計を借りた政志は,その手で写真を撮る。
政志の腕に付けられた父親の腕時計を見た家族は,父親が自分たちの写真を撮ってくれたときのことを思い出す。
こうして莉子の家族写真を撮った政志は東北を後にするが,そのとき,最初に家族写真をとった家族の無事を知る。
陽介は東北で小学校の先生になり,外川と写真の返却を続けている。
父の葬儀の家族写真は,故人役の章の「もう飽きた」の一声でお開きになる。
実話に基づいたストーリだが,若奈役の黒木華が良い味を出していて面白い。
東北で家族を失った人たちと過ごした政志が実家に帰り,誰ひとり欠けることのない家族に迎えられるシーンは,家族の大切さを切実に感じさせる。
政志よりも家族の方が実際は破天荒なんじゃないかという気がする。
エンドロールの最後には,最初の家族写真の本物が映り,この破天荒な家族が実在するということが示される。