芝浜高校に入学した浅草みどり(齋藤飛鳥)は,設定命のアニメオタクだが人見知りで一人では行動できない小心者である。
金森さやか(梅澤美波)はそんな彼女を使って将来的に金儲けができると考え,ふたりでアニメ研の見学に行くが,そこで水崎ツバメ(山下美月)と遭遇する。
両親が有名俳優であり,自らも人気読者モデルである彼女はキャラクター命のアニメオタクだったが,アニメの道は親から反対されている。
彼女を巻き込めば良いアニメが作れるが,両親の反対の手前,アニメ研への入部はできない。
そこで金森が,教師にハッタリをかましてまるめこみ,「映像研」を立ち上げ,バラックの部室も確保する。
こうして爆誕した映像研であるが,道頓堀透(小西桜子)を会長とする大生徒会の部活動統合令の前に危機に面していた。
生徒の自主性を重んじるという建前から,数百もの似たような部活動,同好会が乱立し,予算配分や部室の割当に収拾が付かなくなっていたのだ。
例えば,野球部は内野部と外野部に分裂していた時期もあった。
そこで大生徒会は,ものまね部,形態模写部,身代わり研究会などの統合など,かなり強引な部活動の統合を指示してきた。
そして,映像研にはアニメ研との統合が指示されるが,もちろんこれは水崎との関係で受け入れることはできない。
金森は先手を打ってロボット研究会との合同活動をでっち上げ,顧問の藤本先生(髙嶋政宏)にも印鑑を押させていた。
ロボ研は,なんと100年以上の歴史を有する部活であり,代々引き継がれ,徐々に改良を重ねた巨大ロボを保有していた。
金森は,この巨大(とは言っても3メートル程度だが)を題材にしたアニメを制作し,その円盤を外部のイベントで販売し金を稼ごうと考えていた。
こうして大生徒会からの干渉をはねのけた映像研だったが,アニメ制作の最初の障害はロボ研との意見の不一致だった。
設定命の浅草がディテールを詰めれば詰めるほど,それはロボ研の理想に対するディスりになり,対立が深まっていった。
そもそも巨大二足歩行ロボットという存在自体が矛盾の塊であり,どこからも突っ込まれないような設定は不可能だった。
金森は理屈を無視したロボ研メンバーの主張にあきれるが,トイレに入っているときにコクピットのシミュレーションをしているという話から金森以外の全員の心がひとつになる。
次の障害は,教師からの横やりだった。
外部のイベントで販売活動を行うことは許さないと言われ,金森はやむなくアニメ上映を文化祭で行うことにする。
しかし,そのせいで制作時間は大幅に不足することになり,浅草と水崎はノイローゼ状態になる。
コンピューターや液晶タブレットがあれば,作業は大幅に進捗するが,到底そんな費用はない。
そこで,映像研は大生徒会の業務を下請けして報酬を得ようとする。
その業務とは,百目鬼(桜田ひより)がひとりでやっている音響研の部室からの立退き執行であった。
だが部室に向かった浅草と水崎は,無い音は無いというほどの豊富な音源ストックに魅了され,音響研を映像研のバラックの地下に引き取る。
さまざまな障害を乗り越えて,前日に徹夜すれば間に合うところまでできあがるが,大生徒会から徹夜禁止令が出される。
大生徒会が徹夜で監視するという矛盾がありつつも,効果はてきめんで文化祭前夜,校内は火が消えたような静けさに包まれる。
しかし,映像研のバラックにノコノコとメンバー3人が現れ,大生徒会の警備部に拘束される。
しかし,それは身代わり研究会,形態模写部らの部員だった。
大生徒会のメンバーたちは血眼になって映像研の3人を探すが見つからない。
なんと,彼女たちは大生徒会の監視室でそこのパソコンを使用して作業をしていたのだった。
こうして,アニメは完成し文化祭で上映することになったが,海外ロケで来られないはずの水崎の両親が来てしまっていた。
気象研究会の晴子(浜辺美波)の自作台風ピュー子がロケ地を襲い,飛行機が飛ばなくなってしまったのだ。
浅草はやむなく,資料用に撮影したカメの映像を流そうとするが,水崎は腹をくくって自分たちのアニメを上映する。
水崎の両親もそのできばえに驚き,娘のアニメ活動を許す。
だが,既に映像研のメンバーたちには,今回の反省点と次に作るアニメのアイディアしか頭になかった。
テレビドラマシリーズの続きであり,序盤はテレビドラマ部分のダイジェスト的な内容になっている。
NHKのアニメシリーズもあり,実写版はテレビドラマと映画を合わせて,アニメシリーズと同じ範囲になっている。
アニメ版で浅草の声優をやった伊藤沙莉があまりにもはまり役だったため,齋藤飛鳥で大丈夫かと心配したが,ドラマ版も映画版も自分自身の解釈で説得力のある演技をしていた。
しかし,この設定命というキャラは,まさに庵野秀明そのもののように感じられる。
実写版では音響研のパートが映画に来たわけだが,映画館のしっかりした音響を使うことによって,極めて効果的になっている。
やはり音は大事だということがよく分かる。
話としては,前半の身代わり研究会や形態模写部などのエピソードがラストの伏線として上手く生きていて感心した。
元々,映像研自体が話としてとても好きだし,素晴らしい映像化ですごく楽しめた。
浜辺美波の出演はご愛敬というところ。
それにしても46メンバーたちはみんな演技も上手いけど,48に比べて女優デビューのチャンスが豊富だなぁ。