14歳の大石つばめ(清原果耶)は,隣に住む幼なじみのお兄さん浅倉亨(伊藤健太郎)のことが好きだが,彼の誕生日の前日,夜ののりでちょっと恥ずかしい内容のバースデーカードを書いて郵便受けに入れてしまった。
翌朝,後悔して取り戻しに行ったが失敗し,家に戻る。
彼女は書道教室に通っているが,教室の後,こっそりとそのビルの屋上で時間を過ごすのが好きだった。
明かり取りの天窓があり,そこから室内の光が外に漏れてくる。
昨日もそこで,なんどもバースデーカードを書き直していた。
今日も屋上に上がったつばめは,キックボードが置いてあるの気づき,少し乗ってみる。
すると,見たことのない老婆(桃井かおり)に,人の物を勝手に使うなと叱られる。
つばめが謝ると,彼女は乗り方を教えろと言う。
つばめが乗り方を教えると,老婆はご機嫌で走り回るが,つばめがふと水たまりを見ると,老婆が星空をキックボードで飛んでいるのが写っていた。
驚いていると,老婆の声がして彼女は転んでいた。
止まり方をちゃんと教えろと文句を言う老婆につばめは,今,空を飛んでいたと言う。
すると,その老婆は年をとれば大抵のことはできるようになると自慢する。
つばめが,星空を飛んでいたから星ばあと呼ぶと,彼女はちゃんと星野ともと言う名前があると怒る。
名前を聞いても,やっぱり星ばあじゃないのと言うつばめに何でも略すなと怒るが,つばめは星ばあと呼び続ける。
年をとれば何でもできるようになるという星ばあに,つばめは亨が読む前にバースデーカードを取り戻せないかと相談する。
星ばあは,食べ物と引き換えにそれを引き受ける。
だが,書道教室の牛山先生(山中崇)に聞いても,このビルにはそんなお婆さんは住んでいないという。
つばめは両親とともに暮らしており,母(坂井真紀)は出産を控えていた。
父(吉岡秀隆)は,ベビーベッドをDIYしたり張り切っていたが,つばめは年の離れた弟妹の誕生に複雑な思いがあった。
また,学校の裏サイトでは,くそビッチ呼ばわれしていた。
笹川誠(醍醐虎汰朗)という同級生と1ヶ月だけ付き合って別れたことがあり,そのことを男をもてあそんだ,と書かれていた。
つばめは,そんなことは気にしていないように振る舞っていたが,平穏な日々を過ごしているという感じではなかった。
翌日,つばめが屋上に行くと,一体どうやったのか,星ばあがバースデーカードを取り戻してくれていた。
星ばあは,バースデーカードの文章をさんざん笑ってから,つばめに大事なことは自分の口で言え,後悔はやってからしろと言う。
つばめが家に帰ると,向かいの亨の家の前に彼の姉がおり,彼氏のことで亨と揉めていた。
亨は姉に絶対に騙されているから,あんな男はやめろと言っていたが,姉は聞く耳を持っていないようだった。
姉が男の車に乗って去って行ったあと,つばめは気まずい思いで亨と挨拶を交わしたが,勇気を出してお誕生日おめでとうと言えた。
亨が素直にうれしそうな顔をしてくれて,つばめは星ばあの言うとおりにして良かったと感じる。
星ばあは,家は屋根が大事だと言う。
その家の屋根を見れば,どんな家族がどんな風に暮らしているのか分かると言う。
つばめが,外装関係のお仕事だったんですか?と聞くと,空を飛んで上から見れば分かると馬鹿にしたように答える。
星ばあは,つばめに水族館に連れて行ってくれと頼む。
バースデーカードのこともあって承諾すると星ばあは,約束の時間よりもずっと早くからバス停でワクワクしながら待っていた。
早く来てもバスは時間にならないと来ないと言うつばめに不敵に微笑んだ星ばあが手を上げるとなぜか時間前にバスが来る。
星ばあはバスの中でも大はしゃぎで,つばめと砂浜で遊んだあと水族館に行く。
ふたりはいろいろな魚を見たあとクラゲの水槽に見入る。
星ばあは,昔,今は行方も分からない娘と孫を連れてここに来たことがあると言う。
誠という孫を見たとき,自分はこんなにかわいいものを手放してしまったのかと,人生で一度だけの後悔をしたと言う。
つばめは,その後,家の前で亨がまた姉と揉めているのを見て星ばあに相談する。
星ばあは,なんでもできるわけじゃないけど気をつけてみると言う。
一方,つばめは牛山先生に水墨画を始めてみないかと勧められ,偶然,本屋で出会った時に山上ひばり(水野美紀)の画集をプレゼントされる。
彼女は牛山先生の師匠だったが,牛山先生はつばめが彼女の作品を気にしているのを知っていた。
そして東京で山上ひばりの個展があるので,家族と観に行ったらどうかと勧めてくれる。
星ばあは,つばめにほおずきの実を見せ,亨の姉が彼と住んでる部屋のベランダになっていた,これが上手く育つような関係が続けば良いんだけどと言う。
つばめはひとりで山上ひばりの個展に行く。
つばめの目を惹いたのは親子3羽のつばめが仲睦まじく止まっている水墨画だった。
彼女がその画に見入っていると山上ひばりが,10年くらい前に描いた画だと言い,その画のポストカードをくれる。
つばめが話そうとすると山上ひばりは小さな子どもにお母さんと呼びかけられ夫も現れる。
その幸せそうな雰囲気を見てつばめは何も言わずに帰る。
山上ひばりは,そんな彼女を見て何かに気づく。
夕立でずぶ濡れになって帰って来たつばめは,両親に本当のお母さんに会って来た,私とお父さんのことなんかすっかり忘れて幸せになっていた。お母さんにも本当の子どもが生まれるから家族3人で仲良く暮らせば良いと言ってしまう。
手を上げた父に叩かれると思って首をすくめたつばめだったが,その手はつばめの頭を優しく撫でていた。
一方,夕立の中,亨はバイクで姉と付き合っている男の車を追っていた。
姉は顔にアザを作っており,ベランダのほおずきは黒く枯れていた。
だが,亨は道を渡ろうとしていた笹川を避けて転倒し病院に運ばれた。
病院にかけつけたつばめに亨は,転んで良かったかもしれない,追いついていたらあの男を殺していたかもしれないと言う。
しかし,彼がずっと打ち込んできたバンジョーはもう弾けないかもしれないと聞きつばめも涙を流す。
つばめが星ばあにこれまでのことを話すと,星ばあは血のつながりがそんなに大事かねぇと言う。
もっとしたたかに生きなきゃ,男は弱っているときが狙い目だから,亨のリハビリを助けてやりなと焚きつける。
つばめが勇気を出して病院に行くと亨は素直に喜んでくれる。
また,父親から,山上ひばりがお前を引き取りたいって言って来たときにお母さんが頑として応じなかったという話を聞かされる。
亨のリハビリは進み,ふたりはとても親しくなる。
つばめは何か星ばあにお礼をしたいと思い,孫の誠を探そうとする。
亨にその話をすると,リハビリがてら捜すのを手伝うという。
この街のどこかオレンジ色の瓦屋根の家に住む誠探しが始まる。
松葉杖の亨とふたりでそれらしい家を訪ね歩いて話を聞くがなかなか見つからない。
ある日,住宅街で停学中の笹川に会い,亨が事情を説明する。
敵意をむき出しにする笹川を見て,亨はつばめに君の彼氏になるにはライバルが多そうだと冗談を言うが,つばめは嬉しくなる。
だが,数日後,つばめは笹川から,俺も誠だし家の屋根はオレンジ色の瓦だと言われる。
つばめはまさかと思いながらも星ばあを連れて行くが,誠は全然知らないと言う。
しかし,星ばあの様子は明らかに自分の孫に再会したものだった。
それから星ばあは現れなくなった。
星ばあが本当にいたのかもよく分からなくなった頃,つばめは笹川に強引にファミレスに連れて行かれる。
笹川は母親が新しい男と暮らすことになったから転校すると告げ,裏サイトへの書き込みは俺じゃなくて俺に何度も告って来た女子だったと言う。
そして,笹川が見せてくれた写真を見てつばめは驚く。
入院中の星ばあと笹川が一緒に写っていた。
星ばあは入院中に何度も病院を抜け出していたと言う。
笹川はすっかり忘れていたが,子どもの頃によく遊んでもらった本当のおばあちゃんで,あの日から亡くなるまで病院で何度も会うことができたと言う。
つばめの家には妹が生まれる。
15年後,水墨画家になったつばめの個展が開かれ,そこにはあの屋上で星ばあと街の屋根を観るつばめの画もあった。
NHKの秘蔵っ子,清原果耶初主演作。
横浜流星とやった愛唄も主役と言っても良いくらいの感じだったけど,形式的にはこれが初主演ということになるらしい。
思春期の心の揺れがファンタジックに描かれていて,清原果耶の主演作にふさわしい良作になっている。
星ばあの不思議な力が,本当なのか偶然やただのかんちがいなのかが,あいまいなままというところが良い。
共演が伊藤健太郎と聞いて,まさか中学生をやるのか?と思ったが違っていて良かった。
この映画では,つばめが星ばあに結構きつい突っ込みをする場面もあるのだが,清原果耶がせっかく持っている大阪仕込みのユーモアセンスがいまいち生きておらず残念。
大ベテラン相手に多少緊張したのだろうが,もう少しリラックスして演技ができれば良かったと思う。