いとこの竹中温子(武田梨奈)の結婚式に出席した内藤宏伸(高杉真宙)は,彼女の結婚のきっかけになった出来事を思い出していた。
高校生の時,宏伸は写真部の幽霊部員だったが,部長の三好奈々恵(松本穂香)に頼まれた活動場所の確保に失敗し,部員たちの前で強く責められた。
奈々恵は,学級委員でもあり部活の場所取りには出られなかったのだ。
彼女は毎回,部活の写真品評会で高く評価され,美大進学を目指していた。
一方,宏伸はやりたいこともなく,進路のあてもないまま,憧れの安藤(黒崎レイナ)が陸上部で活躍しているのを眺める日々だった。
ある日,宏伸は祖父竹中芳郎(小松政夫)のリサイクルショップで温子から古いカメラを渡される。
マミヤ製のそのカメラは使い方も分からず,温子と近くの写真屋に見てもらいに行く。
写真屋の宮本賢一(吉沢悠)は,このカメラは自動でパノラマ写真が撮れるように改造されたものだと言う。
三脚に立てると,自動的に360度回転しながらシャッターを切り続ける仕組みになっているらしい。
試しに展望台の上で撮影してみると,360度のパノラマ写真が撮れたが,自分たちも変な形で映り込んでしまっていた。
しかし,その面白さに惹かれた宏伸は,このカメラで撮影するのに相応しい場所を探し回るが,自然豊かな知多半島の中でも360度,余計なものが何もないという景色はなかなか見つからなかった。
すると温子は,高校時代の知り合いのひまわり畑を勧めてくれる。
そこはパノラマ写真にうってつけであり,美しい写真が撮れる。
宏伸は,写真部の品評会にその写真を持って駆け付けるが,遅れてしまったせいで品評会は終わっており,やり直す必要もないという奈々恵に部費の伝票整理を命じられる。
宏伸が伝票整理をしながらその写真を見ていると,そこに奈々恵を探して安藤がやって来る。
彼女は,宏伸の写真を見て凄いと褒めてくれる。
そして文化祭の行事として,みんなで輪になってこのカメラで写真を撮ったらどうかと提案する。
奈々恵もその案に賛成するが,宏伸は彼女たちにそれを任せて自分はやらないとい言う。
写真は奈々恵の方が上手いし,自分は幽霊部員だからと言うのだ。
奈々恵は実は,宏伸が安藤に褒められて浮かれているのを見て不愉快になるくらい彼のことが好きだったが,その消極的な生き方にイライラしていた。
それは宏伸の友だちも同じで,これは絶対に宏伸がやらなければダメだという。
そんなとき,行方をくらましていた祖父の芳郎が現れ,あのカメラは知り合いから預かった大切なものだと言い出す。
その知り合いというのは,パノラマ写真の第一人者で,世界一長いパノラマ写真のギネス記録を持っているという。
宏伸が使っていたカメラは1号機で1周360度しか回転しないが,ギネス記録を取った4号機は何と13周も回るという。
その写真も宏伸たちの計画と同じで,景色ではなく人を撮ったもので13周する間にポーズや表情を変えていき,それを撮したものだという。
そして,その写真家は宏伸たちのために4号機を貸してくれるという。
こうして彼らの計画が始まるが,生徒たちの説得やテストなど,写真部部員,安藤,温子,そして現像を担当する宮本たちの共同作業が続き,宏伸は人が変わったように活き活きと日々を過ごす。
やがて当日が来て撮影が始まったとき,奈々恵は撮影を担当する宏伸が写真に写らないことに気づき,1周目の撮影が終わると部室へ走る。
最後の13周目が始まる直前,奈々恵は部室から持ってきた鏡を宏伸に向け,彼の姿を写真に残す。
カメラが回り続けている間に,温子と宮本は結婚の約束を交わしており,それもしっかり写っていた。
ふたりの結婚式のカメラマンは奈々恵だった。
親に芸大進学を認めてもらえなかったが,彼女は写真を続けていた。
そして,それは宏伸も同じだった。
結婚式の最後に参列者全員でパノラマカメラを囲んであの日のように撮影をした。
これも気になっていたが見逃していた作品をネトフリで鑑賞。
青春ストーリーにパノラマカメラというちょっとひねった組み合わせ。
思っていたよりも薄味の青春だが,リアルと言えばリアルかもしれない。
憧れの安藤さんは他の男子とくっついてしまうし。
安藤を演じた黒崎レイナはハイポジで気になっていた女優だけど,これに出ていたのか。
あと演劇部部員のメガネ女子を演じていたのが,全裸監督の森田望智という意外さもあった。
薄味だけど爽やかな青春ストーリーということで,良いんじゃないだろうか。