高校生の町田一(細田佳央太)は,生物学者の父あゆた(北村有起哉)がいつも海外出張で家にいないため臨月の母百香(松嶋菜々子)と3人の妹,弟たちと暮らしている。

 母が臨月のため,家事の大半は町田の役割である。

 彼は勉強も運動も苦手だが,善意の塊のような人であり,どこかで困っている人がいれば呆れるような鈍足で駆けつける。

 

 ある日町田は美術の授業で指を怪我して保健室に行く。

 そこには,保健の先生はおらず,いつも授業をサボっている猪原奈々(関水渚)がいた。

 猪原は手から血を流しながら何もできない町田を見て,仕方なく包帯を巻いてやろうとするが,包帯がなく自分のハンカチを巻いてやる。

 町田は猪原が人が嫌いだと言って,誰とも話そうとしないのを見て心を痛める。

 

 彼女の母親はニュースキャスターだったが,数年前に不倫スキャンダルで世間から叩かれていた。

 

 町田は,猪原と幼なじみのクラスメート栄りら(前田敦子)に彼女がどんな子どもだったのかを聞いてみるが,やはり子どもの頃から同じような感じだったという。

 

 町田は猪原から借りたハンカチが洗濯してもきれいにならなかったので,同じようなものを買って返したが,彼女がハンカチを開いてみると変なキャラクターが着いていた。

 

 しかし,猪原はいつも話しかけてくる町田のことが何となく気になっていく。

 特に夜の街で彼女がナンパに付いて行こうとするのを町田が止めたことから,猪原の気持ちが動き始める。

 

 

 そんなとき,町田の靴箱にラブレターが入っていた。

 呼び出された場所は,何と校庭のど真ん中だったが,待っていたのは同級生の西野亮太(大賀)だった。

 戸惑いながらも嬉しいと言う町田に,西野は靴箱を間違えた,本当は猪原の靴箱に入れるつもりが,最近,いつも町田が猪原とよく話しているから,うっかり町田の靴箱に入れてしまったと言う。

 

 結局,町田と西野と猪原の3人でボーリングに行くことになる。

 町田と西野は下手くそで,特に町田はピンを1本も倒すことなくゲームは進んで行くが,そこで西野は以前同じクラスだった連中に絡まれる。

 彼はイジメに近い扱いを受けていたのだ。

 町田は,彼は僕の大切な人だと言って彼を守る。

 最後のゲームで町田が1本だけピンを倒したとき,西野は大喜びして,告白の相手は町田君でも良かったと言う。

 

 

 その後,猪原は西野に交際を断るが,彼は自分に初めて真剣に向き合ってくれたと言って感謝する。

 

 猪原は,町田に惹かれていくが,町田は相変わらず誰にでも優しい。

 

 クラスメートの氷室雄(岩田剛典)は,後輩の高嶋さくら(高畑充希)に別れ話を切り出す。

 氷室はモデルもやっており,学校でも女子に絶大な人気があったが,さくらでは地味で,自分には相応しくない気がしていたのだ。

 

 落ち込んでいるさくらを見かけた町田は,彼女を優しく慰める。

 慰められたさくらは町田を好きになり,彼に積極的にアタックを始める。

 一部始終を見ていた猪原は気にしていないと言いながら,誰が見ても分かるいらつき方をしていた。

 

 

 しかし,さくらも町田が誰にでも同じように優しいことに気づき,彼をあきらめ,氷室の元に戻ろうとする。

 

 

 学校では絶大な人気の氷室だったが,モデルとしてはパッとせず,他のモデルたちからも相手にされていなかった。

 その苛立ちを町田にぶつけようとするが,彼に同情されてしまう。

 

 一方,町田は猪原から告白されるが,好きという気持ちを上手く理解することができず悩んでいた。

 町田は猪原に,子どものときに一度,井戸に落ちて死にかけたときから,こんな風になったと告白する。

 

 町田は,さくらからのプレゼントを捨てようとする氷室にそれはダメだと言うが,結局,ふたりとも自分自身のことが良く分からないということを確かめ合う。

 

 

 学校になじめない猪原はイギリス留学を考えており,町田に気持ちが通じないことから,それを実行に移そうとする。

 

 町田は,さくらとよりを戻した氷室や,町田のことをずっと見ていた週刊誌の記者吉高洋平(池松壮亮)に励まされて,さくらの元に走る。

 

 

 しかし,その途中で風船が木に引っかかって泣いている子どもを見つけてしまう。

 風船に飛びついた彼は,そのまま風船とともに風に流され,途中で猪原を抱きしめたまま空を飛び続ける。

 

 

 風船が割れて彼らが落ちたのは,自分たちの学校のプールだった。

 

 

 主役に新人ふたりを抜擢して,周囲をベテランで固めるという手法が話題になった作品だが,猪原奈々を演じた関水渚は,抜群の存在感で素晴らしかった。

 本気でぶつかってくる感じが,嘘がなくて良い。

 

 町田君の細田佳央太も悪くない。

 

 前田敦子は,子どもを産んでも高校生かよ,と思ったけど,ガンちゃんも高畑充希も大賀も同じようなものか。

 そこも面白いところかも知れないし,更にちょい役で戸田恵梨香や佐藤浩市まで出ているという超豪華キャスト。

 

 それと,ガンちゃんと高畑充希は「植物図鑑」だし,高畑充希,前田敦子,池松壮亮は懐かしの「Q10」メンバー,更に富田望生と前田航基の「ソロモンの偽証」コンビが町田君を助けるために並んで走ってくるのも面白い。

 

 町田君の妹役で駒井蓮が出ていたのも嬉しい。

 

 キャラとしては,大賀がとても良い味を出していて,町田君がどういう人間かと言うことが,彼の存在で浮かび上がる仕組みになっている。

 

 前田敦子も「もらとりあむタマ子」を思い出すようなキャラが面白かった。

 

 話としては,町田君が超然としたキャラではなく,他の登場人物たちと一緒に色々な悩みに苦しむところが良い。

 

 ラストのファンタジーっぽいところは,「夜は短し歩けよ乙女」を思わせるようなところもあって,ギリギリOKかなと思う。