大学生のトオル(村上虹郞)は,ある雨の日,死体の傍に落ちていた拳銃を拾う。

 

 最初の内は,拳銃を持っているということ自体に興奮し,綺麗な箱に入れ,わざわざそのために買った布で毎日,磨いていた。

 

 

 彼はケイスケ(岡山天音)という友人たちと遊び,合コンで知り合った女(日南響子)と体だけの関係を続ける気楽な大学生だった。

 

 

 しかし,両親に捨てられ施設で育った後に今の両親の養子になった彼には虚無的なところがあり,何ごとも本気ではない一面があった。

 

 

 

 新歓コンパで話をしたことがあるというユウコ(広瀬アリス)に突然話しかけられ,彼女と親しくなった後も彼女の気持ちを操作することに興味を持つ。

 

 

 また,死期の迫った実の父親(日向丈)が会いたいと言ってきたとき,病室の彼におもしろ半分で適当な受け答えをして混乱させたりもする。

 

 ある夜,警官(後藤淳平)に職務質問を受けたトオルは,おもしろ半分で対応するが,今,自分が拳銃を持っていたらもっとドキドキするはすだと思い,翌日から拳銃を持ち歩き始める。

 

 

 その頃には,拳銃を撃ちたくなる自分を想像していた。

 

 

 そして,ある夜,死にかけの野良猫を撃ち殺す。

 

 

 

 しばらくしてトオルのアパートに刑事(リリー・フランキー)が訪ねてくる。

 彼はトオルが拳銃を持っていると決めつけ,どこかに捨てるか,バラバラに分解してゴミと一緒に出してしまいなさいと忠告する。

 

 

 次は必ず人を撃ちたくなるからと。

 

 しかし,その話を聞いて逆にトオルは人を撃つことが頭から離れなくなる。

 

 彼の頭の中に浮かんだのは子どもを虐待している隣の部屋のシングルマザー(新垣里沙)だった。

 

 

 アパートの部屋の薄い壁を通して,毎晩,子どもを虐待している音や声が聞こえてくる。

 トオルは彼女の生活パターンを研究し,待ち伏せて射殺することを計画した。

 

 

 しかし,直前に自分を捨てた実の母親(片山萌美)の映像が頭に浮かび,撃てなくなる。

 

 ユウコとの関係も合コンで知り合った女との関係も破綻したトオルは,弾丸を一発だけ残して銃をどこかの池に捨てることを考え,電車で田舎の方へ向かう。

 

 

 だが,途中で乗ってきたやくざ風の男が隣に座って傍若無人に振る舞うのを見たトオルは彼に銃を向ける。

 おもちゃだと思って銃口を口に咥えてみせた男にトオルは引き金を引く。

 

 電車内に大量の血が飛び散り,血だまりができるのを見たトオルは,こんなはずではなかったと思い,自分のこめかみに銃を向けるが,弾はもうなかった。

 ポケットにさっき抜いた1発があったはずだと思って取り出して,装填しようとするが,手が震え血ですべって何度やっても上手く行かない。

 

 その様子をあの刑事は,絶望の表情で見ている。

 

 

 

 村上虹郞はあまり好きではないのだが,広瀬アリスが出ているので鑑賞。

 

 銃を拾ったことで変わっていく自分というストーリーは,完全に乾いたタッチで淡々と悲劇的な結末に向かうか,内面の変化にこだわってそこを深く描くかの二択のような気がする。

 この映画は,それでは単純だと考えたのか両方を織り交ぜたような内容になっているが,あまり上手く行っているようには思えない。

 

 モノクロの映像や序盤の感じは,乾いたタッチと梶井基次郎のレモンを想起させるような独白で期待が高まるが,トオルの人間性がどうにも分かりにくい。

 感情を封じ込めたように生きたいのか,そこから抜け出したいのかというあたりが分からないし,そこに葛藤があるとしてもやっぱり分かりにくい。

 

 そして,手に入れた銃を撃ってみたいという願望の表現が野良猫を撃ち殺すというのもそこまでのハードボイルドタッチからは,あれあれ?という感じだし,それで刑事にばれてしまうというのもがっかりな成り行きである。

 

 しかも,人を撃ってみたいという願望の対象がシングルマザーになっちゃうところも変な感じだし,トオルの実の母親に対する想いというのが,よく分からないので,なぜ撃てなかったのかも理解しづらい。

 

 そもそも,人を撃ってみたいという気持ちになったのは,刑事の忠告が逆効果だった感じだし,あれほど鋭い推理でトオルが銃を持ってることを見抜いた刑事が,シングルマザーの襲撃計画を完全にスルーで,最後に同じ車両にいながら本当に撃っちゃうまで何もできなかったというところもちぐはぐな感じがする。

 銃を捨てようとする前に,弾を一発だけ抜いた理由もよく分からない。

 

 せっかく広瀬アリスが出てるのに残念。

 

 元モー娘。の新垣里沙がシングルマザー役とは驚き。

 エンドロールまで分からなかった。

 モー娘。時代から好きで,女優として期待していたのに目立った活躍がなくて残念に思っていたが,こういう役でも女優を続けていてくれたのは嬉しい。

 本当はもうちょっと違う役で観たいけど。