沖縄の小さな島でおじい(金城実)とふたりで暮らす小学生の花島うみ(伊東蒼)は異常なほど耳が良く,音程のわずかな違いでも気持ちが悪くなってしまう。
そのせいで学校の吹奏楽部の音が耐えられないだけでなく,自分自身の歌や三線の演奏にも耐えられない。
海に浮かんで空を眺めるとき以外は,母からもらった耳当てをしてすごし,友だちもいない。
おじいは三線と島唄の名人で,生まれたときからその音を聴いていたためかもしれない。
しかし,うみの母であるさんご(山田真歩)は,音を聴き分けることも踊りを踊ることもできず,いたたまれなくなって那覇市で独りで住んでいる。
せめて踊りを踊ることができるようになれば,おじいの子になれるし,うみの母にもなれると思い,踊りを習っているが,生活は乱れており,酒に酔ったまま教室に行ってしまう。
そんなとき,うみの通う学校の校長が,東京から音楽の臨時講師にバイオリニストの北川祐子(安藤サクラ)を招いて音楽会の開催を企画する。
祐子はおじいの音楽の素晴らしさを知り,うみにも理解を示す。
うみも祐子に懐き,うみは学校のみんなと吹奏楽をやりたいという気持ちを明かす。
吹奏楽部の部員たちは,すぐに音程の違いを言ううみの入部を認めなかったが,彼女の真剣な気持ちを知り,やがて部員として受け入れる。
バイオリニストの祐子は管楽器についての知識が足りないため,かつて那覇でバンドマンをしていたという漁師の真栄田(渋川清彦)に指導を頼む。
そして,演奏会の曲としておじいがいつも演奏している島々清しゃ(しまじまかいしゃ)という,島の美しさを唄った曲を選び,おじいと一緒に演奏することを計画する。
フルートを選んだうみは,なかなか思うように音を出せず苦しむが,おじいの励ましもあり,毎日,練習を続ける。
こうして,ようやく曲が形になってきたとき,おじいは眠るように息を引き取る。
演奏会は中止になり,おじいから見せたいものがあると言われ島に帰ってきたさんごも腑抜けた様子でうみと暮らす。
何もできなかったと思った祐子は,子どもたちに黙って島を出ようとするが,楽器を持って港に集まった子どもたちは,最後に島々清しゃを演奏する。
演奏前,うみは港に様子を見に来たさんごに耳当てを返し,「みんなの音をよく聴かなければ音を合わせることはできない,私はもう,それはいらない」という。
祐子自身も東京で無責任な男の子どもを妊娠し,逃げるように島に来たのだった。
子どもたちの演奏とうみの言葉に勇気をもらった祐子は,新たな気持ちで東京に帰っていく。
安藤サクラと「湯を沸かすほどの熱い愛」で末っ子を好演した伊東蒼の共演となれば観ないわけにはいかない。
期待に違わずふたりの演技は素晴らしい。
抑えた演技のできる子役は珍しいと思う。
三線と島唄の演奏の関係で,金城実の出演は不可欠なのだろうが,さすがに素人に演技をさせる危なっかしさは拭えず,棒読みのセリフは,ちょっと観ていて落ち着かない。
渋川清彦は,ようやくキャリアを生かした役が回ってきたという感じで良かった。
西洋音楽と五音階と沖縄音階の違いなど多少マニアックな部分や,ピアノの調律に無頓着な校長への無言の非難とか音楽的にも面白いところもあった。
ただ,厳密すぎる音感を持つ少女が,心を開いていって,音程の外れた音も聴くようになるという話しは,ちょっとしっくり来ない感じもあるが,その点は,伊東蒼の演技に救われたという気がする。




