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 遺品整理業者「クーパーズ」に勤めることになった永島杏平(岡田将生)は,高校時代の事件が原因で高校を中退しただけでなく,心を病んでいた。
 「クーパーズ」の2年先輩の久保田ゆき(榮倉奈々)は,上司の佐相(原田泰造)に言われて,杏平の面倒を見る。ゆきは,明るく振る舞っているが,やはり心に傷を抱えており,手首にはリストカットの跡がある。

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 彼らの仕事は,孤独死の現場を片付けるだけではなく,廃棄する物と遺品として遺族に引渡す物,故人の気持ちが込められているため供養する物をより分けることも含まれている。しかし彼らが心を込めてより分けた遺品の受け取りを遺族から冷たく拒絶されることもしばしばである。
 杏平は,孤独死の跡が残る現場も嫌がることなく作業をするが,突然,高校時代の出来事が脳裏によみがえり,立ちすくんでしまうことが何度かあった。
 同級生の松井新太郎(松坂桃李)からいじめを受けていた親友の山木信夫(染谷将太)は,教室で松井を刺し殺そうとする。しかし杏平が「やめろ」と叫んだのに気を取られた瞬間,教師たちに取り押さえられる。山木は杏平に「おまえだけは身方だと思っていたのに」と言い残して,杏平の目の前で飛び降り自殺をする。

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 一方,それまでどんな現場もこなしてきたゆきは,母親にネグレクトされた幼い子どもが亡くなった部屋で,泣き崩れ,仕事を辞めてしまう。
 彼女は高校時代に同級生にレイプされたのだが,相手の母親に「あんたの方が誘ったんだろう」と言われた上,母親から「なぜあんな男についていった」と言われて救いを無くした。そして妊娠が分かったのだが,その子どもを流産した。ゆきは,その子の命と引換えに得た自分の人生の持つ意味が分からなくなっていた。
 杏平は,ゆきの新しい勤め先である老人介護施設を訪ねていき,ゆきに自分のことを話そうとするが,拒絶される。そんなとき,認知症を患い家族に迷惑をかけたくないと自ら入所してきて亡くなった女性の夫(柄本明)が,何も要らないと言っているのを耳にする。杏平は自分に片付けさせて欲しいと申し出て,遺品のより分けを始める。彼がより分けたペアのマグカップと,女性が家から持ってきていた留守番電話の録音を聞いた井上は妻の気持ちを知り泣き崩れる。
 介護施設近くの海岸で,杏平は自分のことをすべてゆきに話す。
 山木の死後,高校は何事もなかったかのようになり,松井のいじめの対象が杏平になった。山岳部だった杏平と松井は,ふたりだけで蟻の門渡りという難所を通ることになるが,転落しかけた松井を見て,杏平には殺意が芽生える。しかし結局,杏平は松井を助け,偶然その現場を撮影した写真が公表されたことから松井は面子を失い,カッターナイフで杏平に切りつける。杏平は逆に松井の腕を取ってカッターナイフを松井の首筋に押し当てて,松井を殺すと叫ぶ。しかし,校内の誰も杏平を止めようともせず,何も言わない。ただ,回りで見守るだけだった。
 杏平の真っ直ぐな心は,松井のいじめではなく,自分が当事者にならなければ関係が無いといって何もしようとしない者たち,そして,かつて自分もそのひとりであったこと,そのせいで親友の山木が死んだこと,それでも何も変わらないことに耐えきれなくなり,壊れた。杏平は松井を放置して,自分が松井を助けている写真に何度も何度もカッターナイフを突き刺すのだった。
 話を聞いたゆきは,杏平に言う。
 杏平は,あのとき私のために死んだ赤ちゃんの命が今の私につながっていると言ったけど,杏平にあったいろんなことも今の杏平につながっている。
 それを聞いて杏平は,ふと思いついたように,アントキノイノチって,繰り返して言ってみて,とゆきに言う。
 アントキノイノチ,アントキノイノチ,アントキノイノチ・・・
 なんか,プロレスの人みたいにならない?
 かつて,杏平とゆきは一緒に観覧車に乗って,街には無数の人たちが,それぞれの楽しみや悲しみや怒りを持って暮らしているのを見た。そのとき,杏平はみんなに何かを言いたかったが,言葉が思いつかず,観覧車から,ただ「ウォー,ウォー」と叫んだだけだった。
 杏平は,やっとみんなに言う言葉が思いついたと言った。
 「元気ですかーっ」
 海に向かって杏平とゆきは叫んだ。

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 しかし,物語は悲しい結末を迎える。
 その後も老人介護施設で生き甲斐を感じて働いていたゆきが,車にはねられそうになった子どもを助けて,代わりに亡くなってしまったのだ。
 ゆきの部屋の片付けを担当したのは,杏平と佐相だった。
 いつものように淡々と荷物をより分けていく杏平。
 しかし,ゆきがいつも持ち歩いていたデジカメを見つけて彼の手が止まる。
そして部屋に置かれたミニアルバムには,そのデジカメで撮影した杏平の写真が・・
 初めての仕事に戸惑う杏平,佐相から金を渡されてとまどいながらゆきと一緒に飲みに行ったときの杏平,観覧車の中から叫ぶ杏平,海岸でいっしょに「元気ですかーっ」と叫んだときの杏平。

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 杏平は生きていることの意味を実感し,こみ上げてくるものを押さえきれなかった。

 榮倉奈々は,元々あまり細かい表情の変化で演技をするタイプではなく,そのせいで以前は伝わりにくい感じがあったが,東京公園あたりから,そういう演技のやり方での見せ方を習得してきた気がする。
 こういう演技は伝わりにくいけど,上手く行けば,嘘くささがなくて心にしっかり届く気がする。
 この映画でも,ゆきの不器用な生き方とうまくはまって,とてもしっかりと心に残った。