僕と妻の1778の物語

 ストーリーは今さら言うまでもないかもしれないが、妻(竹内結子)がガンに冒された作家が、妻を笑わせて免疫力を上げようと毎日1編ずつの小説を書く話。

 予告編を観ると、草なぎ剛は無名の純文学系作家のように見えるが、実は有名なSF作家、眉村卓の実話。

 しかし、眉村卓が実際に1778の物語を書き始めたのは63歳の時で、映画での32歳という設定はフィクション、また、かなり夢見がちな男として描かれているが、これも眉村卓のイメージとは違う気がする。

 なぜ、こういうことを言うかというと、どうせこういうフィクションを交えるのなら、もう少し徹底しても良かったのではないかと思うからである。

 この映画の中では、実際に書かれた1778の物語の内、いくつかが映像化されると共に、主人公が夢見がちな男であることを示すために彼の妄想も映像化されるが、どれもかなりいい感じに仕上がっている。

 どうせなら、夫婦の物語をこの映像世界の中にはめ込むように描いて欲しかったと思う。
 そして、その合間に病状の変化などの現実を挟み込んでいった方が、感動的になったような気がする。

 実話であることに、少しこだわり過ぎたところが残念に思った。
 映像化された知識屋の話のノスタルジックな世界、集金人の話、留守電にメッセージを残す話、どれも本当に良かっただけにそう思う。