ブカツ道
この映画は,武士道シックスティーンのスピンオフムービーで,短編が5話収録されている。
1,3,5話が成海璃子主演,2,4話が北乃きい主演である。
ふたりの再共演がないのは残念。
第1話は,成海璃子が孤高の演劇部員を演じる話で,武士道シックスティーンの雰囲気を残している。
第2話は,北乃きいが同性の先輩に,憧れを超えた感情を抱く茶道部員を演じる。北乃きいちゃんが,こういう役を演じるのは珍しく,興味深かった。きいちゃんに振り回される同級生を濱田岳が演じていて、よくはまっている。
第3話は,まっすぐベースボールという架空のスポーツ(三角ベースから、さらにひとつ減らした感じ)のコーチを成海璃子が演じるが「罪とか罰とか」に通じるドタバタ不条理ギャグで,武士道シックスティーンの雰囲気は,かけらもない。
第4話は後回しにして,第5話は,成海璃子ちゃん演じる告白できない内気な弓道部員に,弓道の神様が,相手に当たれば誰でも好きになってくれる矢を授けてくれるというラブコメディ。
日没までが有効期限なので,一生懸命狙うが,毎回邪魔が入るというお決まりパターン。親友役の朝倉あきがすごく良い演技をしている。今まで見た朝倉あきの中でいちばん気に入りました。これ,監督が沢村一樹という特別企画だが,とても面白かった。
後回しにした第4話
北乃きいちゃん演じる女子高生美鈴は,数学者の父親と,母親の3人暮らし。
母親は,毎日心づくしの料理を作り,お弁当を作ってくれるが,父親は食卓に専門書をひろげ,食事中にも研究を続けている。
母と仲が良い美鈴は,そんな父が母をないがしろにしていると,思っている。
その後,母が病気で亡くなると,美鈴は食事にゆでたスパゲッティにケチャップをかけただけのものを出す。
彼女は,私は家庭科部で料理は得意だけど,お母さんはお父さんに見捨てられて死んだから,わざとこんなものを出しているの,と言い,父の弁当箱にも同じものを詰める。
そんなある日,美鈴が学校から帰ると,父が台所で大量の卵焼きを焼いている。
お母さんの卵焼きを再現したいという父に,美鈴は,お父さんにそんなことができるはずがないし,協力もしないと突き放す。
しかし,一生懸命協力を頼み,努力を続ける父を見かねた美鈴は,協力を始め,ふたりで母の卵焼きの再現に挑む。
そのなかで,美鈴は,父が決して母をないがしろにしていたわけではないこと,母も寂しい思いをしていたわけではないことを徐々に理解していく。
そして,父がずっと見てきた母の動きを美鈴が再現する事で,母の卵焼きの秘密にたどり着く。
最後に北乃きいちゃんが見事な手際でおいしそうな卵焼きを焼き、父親とふたりでうれしそうに食べるところでこの映画は終わる。
北乃きいちゃんには、母親がいなかったということだが、この映画の中では、母親をとても愛していた娘をすごくリアルに演じていて、その演技力には驚嘆する。
そのことを思いながらこの映画を観ていたら、最初から最後まで涙が止まりませんでした。